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研究者同士の交流が生みだすイノベーションのために―「経営学の質問箱」の開催にあたって―|経営学の質問箱:今さら聞けない経営学についてのあれこれ【第3回・終】

2023年10月28日から29日にかけて、関西大学千里山キャンパスにて「2024年度組織学会年次大会」が開催されました。
本記事は、10月28日の8時50分〜9時40分に行われたモーニング・ミーティング「経営学の質問箱:今さら聞けない経営学についてのあれこれ」について取り上げます。この企画は、大学院生やアーリーキャリアの研究者から寄せられた「今さら聞けない」質問について、ベテラン研究者をお招きして応答していただくというものです。
モーニング・ミーティングは、2つのテーマごとにセクションが設けられました。

応答セッション1「能力・技術系の質問」
応答セッション2「キャリア・研究環境系の質問」

みなさまのご厚意により、当日の様子を書き起こし、中央経済社Digitalにて記事として連載させていただきました。
2回にわたるレポートの最後に、本セッションの企画と当日の司会・運営をされた3名の先生よりメッセージを頂いています。
第1回第2回の記事とあわせて、ぜひご覧ください!

はじめに、今回のモーニング・ミーティングに質問を下さったみなさま、そしてお忙しい中回答を引き受けてくださった4人の先生方に、改めて御礼を申し上げます。そして、開催初日、土曜日の朝一番という枠にもかかわらず、多くの方が約1時間早くご自宅(または宿泊先)を出発し、本セッションに足を運んでくださったことに感謝を申し上げます。
正直なところ、時間枠のこともあり、ここまでの参加者数になるとは予想していませんでした。それゆえに、驚きもありますが、我々が問題意識を持って取り組んできたことの方向性を支持していただけたような気がして、嬉しく思っています。

早朝にもかかわらず、大勢の方がご参加くださいました!

今後も同様の取り組みが定着していくよう、そして通底した問題意識を共有する類似の取り組みに波及させられるよう、本セッションを企画した背景と目的を簡単に説明したいと思います。

本セッションの企画を思いついたのは、2023年2月のことでした。本セッションの主催者3名が共同して、別の研究会の企画(ちなみに研究会の様子は、中央経済社Digitalがまとめてくださっています)を進める中で、私達が研究者になる過程で得た情報や知識には、指導教員から直に教わった以外のものが少なからぬ割合を占めていることに気が付きました。それらは、研究に直接関係するものだけでなく、研究者としての生活やキャリア形成に関するものまで含まれます。
こうした情報の多くは、研究者を多数輩出している大学院や名門ゼミでは、先輩・後輩の関係を通じて継承されてきたことでしょう。必然的に、そのような環境にある大学院生と、例えば地方にある大学院の院生との間には、社会関係資本などの点において大きな格差が生じてしまうことになります。
他方で、大学院生の数が減ることによって、若い世代が専任教員のポストを得にくくなっており(経営学分野は他の分野よりも大分恵まれてはいるようですが)、経営学系研究者の人口ピラミッドを考慮すると、将来的に国内の経営学を担う人材が空洞化していくのではと危惧されています。

これらの背景や中期的な将来を案じたときに、「“今さら聞けない質問”というテーマをきっかけに、文脈依存的な情報を少しでもフラットにすることができないか、そしてせっかくならネットワーキングもできないか」と考え、同じ想いを共有した3名で本企画を提案するに至った次第です。なお、本セッション「経営学の質問箱」という名づけは、2022年10月に組織学会年次大会にて開催された「経営学の道具箱」を参照しております。ご快諾いただいた清水洋先生には、ここに名を記してお礼を申し上げたいと思います。

私達3名はそれぞれ、中園は組織メカニズムの観点から、木川はエコシステムの観点から、そして舟津は制度派組織論の観点から、オープン・イノベーションにかかわる研究をしている(た)という共通点があります。
オープン・イノベーションのメッセージを簡潔にまとめると、「他者と連携することによって新たな価値が創造される」というものです。それはもちろん簡単なことではありませんが、オープン・イノベーションの論理が作用するのは、外部に多様な知識が存在していることが前提となります。それらの知識を互いが互いに、それぞれ結びつけることによって、新たな価値が生まれます。こうした営みは、シュンペーター的に言えば「新結合」であり、学会としてはディスカッションとして表出しうるものです。
今回の取り組み1度きりで、上述した問題が解決されるわけもなく、むしろ、現状の困難を少しばかり改善するというインクリメンタル・イノベーションの第一歩を踏み出したに過ぎないものです。それでも、われわれのねらいが汲み取られ、会員間でのコミュニケーションが活発化していくことを願っています。

最後に、組織学会としてはイレギュラーなセッションの記録化をご快諾いただいた先生方、ご多忙のところご賛同いただき、ボランティアであるにもかかわらず記事化にご協力いただいた中央経済社様・特に飯田宣彦氏、阪井あゆみ氏に格別の御礼を申し上げます。

2024年4月 

中園 宏幸・木川 大輔・舟津 昌平

ご登壇・運営の先生方、そして参加者のみなさま、
素晴らしいセッションをありがとうございました!

運営

中園 宏幸(なかぞの・ひろゆき)

2015年同志社大学大学院商学研究科博士後期課程修了。博士(商学)。同志社大学助教、広島修道大学助教を経て、2019年より広島修道大学商学部准教授。
専攻:イノベーション・マネジメント
researchmap:https://researchmap.jp/hnakazono

木川 大輔(きかわ・だいすけ)

2017年首都大学東京(現東京都立大学)大学院社会科学研究科博士後期課程修了。博士(経営学)。東洋学園大学専任講師、同准教授を経て、2023年より明治学院大学経済学部国際経営学科准教授。
専攻:経営戦略論、イノベーション・マネジメント
researchmap:https://researchmap.jp/dicek-kik

舟津 昌平(ふなつ・しょうへい)

2019年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。京都産業大学経営学部助教、同大学准教授を経て、2023年10月より東京大学大学院経済学研究科講師。
専攻:経営組織論、イノベーション・マネジメント
researchmap:https://researchmap.jp/sfunatsu


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