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【会計】ISSB公開草案に対し、基準と適用指針に分割する提案も検討─SSBJ設立準備委

去る6月9日、SSBJ設立準備委員会は第9回会合を開催した。第8回会合(2022年6月20日号(No.1647)情報ダイジェスト参照)に引き続き、ISSB公開草案「IFRS S1号『サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項』」(以下、「S1基準案」という)と「IFRS S2号『気候関連開示』」(以下、「S2基準案」という)に対するコメント文案について審議が行われた。

■ S2基準案

事務局は、S2基準案の「戦略及び意思決定」に係る開示要求について、最初に提示するグローバル・ベースラインとしては過大なものとなっていると懸念し、13項⒜(ⅰ)⑴~⑶、⒝ⅱに関し、企業価値・企業の排出目標の達成可能性を評価するうえで必ずしも必要とまではいえない項目は、基準上、例示項目として示すことが適切であると提案することを考えている。
この点、委員からの「13項⒜(ⅰ)⑴~⑶の情報は、各ビジネスセグメント等がどのように気候変動に対応しようとしているのかを知り、利益予想を積み上げていくうえでは比較的重要な情報である。重要性の判断が介在するという前提を置けば、項目は残してもよいのでは」との意見に対し、事務局は「分析し、検討する」と回答した。
また、事務局は、13項⒝(ⅲ)⑴のカーボン・オフセットの使用に依拠する程度は、企業価値の評価に資する情報であると考えている。
この点、委員からは「現在、排出削減の道のりが業種・企業によって異なっている状況。カーボン・オフセットについてもさまざまな種類があり、そのなかで単一的な評価をすることは難しいと考えると、横並びに評価できるものではないのでは」との指摘があり、そのうえで「CO2そのものを削減する技術等が不確定な部分も多いなか、現時点で要求事項とするのではなく、技術開発の進捗などを踏まえ、段階的に開示するのがよい」との意見が聞かれた。事務局は「検討する」と回答した。
そのほか、「例示項目ではなく要求事項とすべき」、「13項⒜(ⅰ)⑴の例だけが細かく、強い印象を受ける。実務を引っ張ってしまうのでは」といった意見が聞かれた。

■ S1基準案

前回までの審議では、委員から「サステナビリティの開示基準は、早い勢いで変化していくものであるため、最終化した基準であったとしても必要に応じて短い期間で改訂することは考えられないのか」といった意見等が聞かれた。
このような審議内容を踏まえ、今回事務局はコメント案に修正を加え、ISSBの公表物を「基準」と「適用指針」の2種類に分けることを提案している。「基準」については最もコアとなる開示要求のみを定めることで安定性を追求する一方、「適用指針」については、たとえば外部の組織が公表するさまざまな指針等に変更があった場合には、その内容の妥当性についてISSBにて審議したうえで、必要に応じて「適用指針」を更新することにより、柔軟性を追求することを提案したいという考えを示した。
委員からはおおむね賛意が示された一方、「適用指針に何が含まれるのか、考え方を整理する必要がある。『基準』と『適用指針』の2つに分けるという提案に加え、柔軟性が重要であることを指摘しつつ、他の手法についてもなげかけてもよい。基準の構造上、保証との関係も含めて議論が必要であると考える」といった意見が聞かれた。
これに対し事務局は、「適用指針というのは、あくまで事務的な内容であると考えている。変わる可能性があるものについては、はじめはあえて原則主義としてあいまいにしておき、はっきりしたところで明文化していくプロセスになるかと思う」と回答した。

なお、第9回会合の翌日である6月10日、事務局は、ISSB公開草案(産業別開示要求)に関するアウトリーチ(意見聴取)を実施する旨をホームページ(https://www.asb.or.jp/jp/info/146368.html)にて公表した。


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