見出し画像

現下、「継続企業の前提」をどう考えるか【2020年4月16日掲載記事アーカイブ】

この記事は、弊社緊急情報発信サイト『新型コロナ危機下のビジネス実務』において、2020年4月16日に掲載した記事のアーカイブです。
同サイトは、2020年から新型コロナウイルスの感染拡大を受け、社内有志で緊急的に立ち上げた情報発信サイトであり、サイトの趣旨に賛同いただいた公認会計士の持永勇一先生にご寄稿いただいた記事になります。当時、3月期決算企業が決算期を迎え、対応について悩んでいる企業が多かったところ、いち早くそのポイントをまとめていただきました。
なお、中央経済社note編集部としての情報発信を始めたことから、同サイトを近く閉鎖する予定のため、アーカイブ記事として公開いたします。

中央経済社note編集部

継続企業の前提に係る重要な疑義

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、売上高が急減するなどの厳しい経営環境下において、少なくない数の会社から予想利益の下方修正に係る適時開示が行われている。このような環境下において留意しなければならないのが、「継続企業の前提」である。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、業績が悪化し、特にキャッシュ・フローについても悪化している状況にある会社は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況に該当しているかどうか、判断する必要がある。もし、そのような事象または状況に該当すると考えられる場合には、経営者は本能的にも企業継続のために当該事象または状況を解決するための施策に着手しているであろう。
このような事象または状況に関して、監査人は、継続企業の前提に関して合理的な期間(少なくとも期末日の翌日から12カ月間)について、経営者が行った評価を検討することが必要である。具体的には、経営者と監査人との間で、継続企業の前提に関する重要な疑義が認められるのか、もし、認められる場合には、会社による対応策が期末日の翌日から12カ月間、その疑義を解消するのに十分であるかどうかについて、協議する必要がある。

サポートレター

国内外の子会社において継続企業の前提に重要な疑義が生じている場合、子会社の監査人から親会社に対してサポートレターの提出が要求されると考えられる。特に海外子会社が、現地金融機関から融資の確約を得るような対応策は、実務的な事例としては少なく、親会社からのサポートレターが現実的な解決策として選択されることが多い。
このサポートレターの発行に関しては、会社における承認権限規程によって、取締役会の承認等の所定の手続が必要となっている場合が多い。このため、新型コロナウイルス感染症への対応により出社制限がかかり、取締役会による承認に時間を要する場合があることについても実務的な配慮が必要となる。さらに海外の規制当局が、全般的に監査手続の強化を強く求めていることを反映して、現地監査人からのサポートレターの提出要求が一段と厳しくなっていることも念頭に置いておく必要がある。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う対応

なお、今回、日本公認会計士協会は、会員(監査人)に対して、2020年4月10日付で「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その2)」を公表している。そこには、次のように通知されているため、参考にされたい。

「監査人は、当該事象又は状況を識別した場合、経営者の対応策の検討、企業の資金計画表の分析、政府の経済支援策及び金融庁から2020年(令和2年)4月7日に発出された「『新型コロナウイルス感染症緊急経済対策』を踏まえた資金繰り支援について(要請)」(貸出等の条件となっている財務制限条項(コベナンツ)に事業者が抵触している場合であっても、これを機械的・形式的に取り扱わないこと等が要請されている。)なども含む当該事象や状況を改善する要因の検討等を実施することにより、十分かつ適切な監査証拠を入手し、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるか否かについて実態に即して判断し、結論付けなければならない。(監基報570第15項及び第17項)」

日本公認会計士協会「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その2)」7頁

筆者略歴

持永 勇一(もちなが・ゆういち)
公認会計士


#中央経済社 #実務