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旬刊『経理情報』2024年2月1日増大号(通巻No.1700)情報ダイジェスト/会計


【会計】S&LB、貸手のファイナンス・リース、検討―ASBJ

去る2023年12月27日、企業会計基準委員会は、第517回企業会計基準委員会を開催した。
主な審議事項は以下のとおり。

■金融資産の減損に関する会計基準の開発

第208回金融商品専門委員会において、ステップ4(信用リスクに関するデータの詳細な整備がなされていない金融機関に適用される会計基準の開発)を採用することが見込まれる金融機関の代表者(全国地方銀行協会および第二地方銀行協会)への意見聴取が行われ、その内容に関して報告がされた(2024年1月1日号(No.1698)情報ダイジェスト参照)。
この報告を受けて、委員からは「予想信用損失モデルの導入について、地域金融機関が大きな懸念を持っていることがわかった。しっかり議論して理解を深めることが必要」との意見が聞かれ、事務局から「どのような配慮ができるか検討していく」との回答があった。

■パーシャルスピンオフの会計処理

第110回企業結合専門委員会(2024年1月10日・20日合併号(No.1699)情報ダイジェスト参照)で審議された、企業会計基準適用指針公開草案80号(企業会計基準適用指針2号の改正案)「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針(案)」等および、日本公認会計士協会会計制度委員会報告7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」の改正に関する公開草案へ寄せられたコメントの紹介が行われた。
次回以降、事務局のコメント対応案が示される予定。

■リース会計基準の開発

第140回リース会計専門委員会(2024年1月10日・20日合併号(No.1699)情報ダイジェスト参照)で審議された、次の論点の議論が行われた。

(1)セール・アンド・リースバック(S&LB)取引
S&LB取引の性格について、資産の譲渡とリースバックを一体の取引とみて金融取引と整理すべきではない等のコメントに対して、公開草案の提案を変更しない案が示された。
また、一時点で充足される履行義務に該当する譲渡のみがS&LB取引に該当することを明示的に定める意図および目的について結論の背景で明確にする必要があるというコメントに対して、結論の背景に特段の追加を行わない案が示された。委員からは、「現行実務からの変更点であり、もう少し検討を」との意見が聞かれた。
フルペイアウトの考え方について借手のリース期間を基準に考えるのか、また、リースバックの該当性に関する具体的な要件および貸手におけるファイナンス・リースとの関係を明確化すべきとのコメントに対して、適用指針案の結論の背景において追記する案が示された。委員からは賛成意見が聞かれた。

(2)ファイナンス・リース(貸手のリース料)
借手のリース料の範囲に含められる「指数及びレートにより変動する使用料」が貸手のリース料に含まれるか明確化すべきであるとのコメントに対して、「指数又はレートに応じて決まる変動リース料」を「貸手のリース料」に含めていないことを結論の背景に追記する案が示された。
委員からは特段の異論は聞かれなかった。

【会計】VCファンドの出資持分の会計処理、議論―ASBJ、金融商品専門委

去る2023年12月27日、企業会計基準委員会は、第209回金融商品専門委員会を開催した。
主な審議事項は以下のとおり。なお、同27日開催の第517回親委員会でも同テーマについて審議された。

■上場企業等が保有するVCファンドの出資持分

第516回親委員会(2024年1月10日・20日合併号(No.1699)情報ダイジェスト参照)において新規テーマとされた、上場企業等が保有するベンチャーキャピタル(VC)ファンドの出資持分の会計上の取扱いについて、審議が行われた。
企業会計基準諮問会議で示された「VCファンドに相当する組合等の構成資産である市場価格のない株式を中心とする限定した範囲での対応を求める」との付記を受けて、事務局から議論の進め方について次の提案が示された。

・まずVCファンドに相当する組合等の定義について検討を行う。
・そのうえで、「時価評価を強制するアプローチ」と「時価評価するオプションを認めるアプローチ」のいずれを採用するかについて検討を行う。
・前記の論点の検討を進めた後に次の項目の検討を行う。
①時価評価(評価差額は純損益)する範囲
②市場価格のない株式が市場価格のない株式以外の株式になった場合の取扱い
③時価評価のオプションを適用する単位(ファンド単位で適用または個々の株式の単位で適用)
④注記事項
⑤適用初年度の取扱い

専門委員会および、第517回親委員会では議論の進め方についての異論は聞かれなかった。
専門委員からは、「時価評価の強制には反対」、「VCファンドが子会社に該当する場合も追加論点とするべき」との意見が聞かれた。
第517回親委員会では「オプションの採用は比較可能性が低減する懸念がある。採用する場合はしっかりした理由づけが必要」等の意見が聞かれた。

■LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計

2022年3月に改正された実務対応報告40号「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い」では、米ドル建LIBORおよびそれ以外の通貨建てのLIBORに関する不確実性が完全になくなったということでもないため、金利指標置換後の取扱いについて再度確認を行う時期を1年後に限定せず、将来必要な場合にはあらためて確認を行うこととしていた。
これを受けて、特例的な取扱いの適用期間(2024年3月31日以前に終了する事業年度の期末日まで)のさらなる延長などの追加的な対応を検討するかどうかについて、事務局が分析を行い、不要である旨の提案が示された。
専門委員および、第517回親委員会において、事務局提案に賛意が示された。

【会計】GM課税の段階的法制化への税効果の対応、検討―ASBJ、税効果会計専門委

去る2023年12月26日、企業会計基準委員会は、第89回税効果会計専門委員会を開催した。

■グローバル・ミニマム課税の段階的法制化への対応

2023年3月31日に、実務対応報告44号「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い」(以下、「実務対応報告44号」という)が公表されている。
実務対応報告44号は、グローバル・ミニマム(GM)課税制度における所得合算ルール(IIR)に係る取扱いを定めた令和5年度税制改正法にのみ対応しているが、令和6年度以降の税制改正により軽課税所得ルール(UTPR)および国内ミニマム課税(QDMTT)が段階的に法制化される予定であることを踏まえて、IIRに関する取扱いのみならず、UTPRおよびQDMTT等の取扱いも含めたGM課税制度に係る税効果会計の取扱いについて検討を行うことならびに、実務対応報告44号の改正を行う場合の改正案の文案について審議が行われた。
なお、同27日開催の第517回親委員会でも同テーマについて審議された。

■事務局分析

実務対応報告44号では、GM課税制度に基づく税効果会計の会計処理については、「GM課税制度の適用によって、企業が、既存の税法の下で認識した繰延税金資産および繰延税金負債を見直す必要があるかどうか」、「上乗せ税額を加味すると、税効果会計に使用する税率がどのような影響を受けるか」、「GM課税制度に基づき、追加的な一時差異を認識すべきかどうか」といった点が明らかではないとしている。
事務局分析では、UTPRおよびQDMTTもGM課税を構成するルールであることから、こうした状況は変わらないものと考えられるとし、国際的にもIAS12号「法人所得税」や米国会計基準での取扱いはUTPRやQDMTTを含めたものであり、国際的な会計基準における取扱いと整合することとなるとされた。

■事務局提案

これらを踏まえ、IIRのみならず、UTPRおよびQDMTT等の取扱いも含めて、国際的な動向に変化が生じるまでは、税効果適用指針の定めにかかわらず、GM課税制度の影響を反映しないこととした実務対応報告44号の当面の取扱いの適用を継続することする事務局案が示された。
また、この事務局提案を踏まえ、1項の「目的」で、GM課税を、令和5年度の法人税法改正によるものとする記載から、実務対応報告公開草案67号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い(案)」の1項とそろえ、BEPS包括的枠組みによるものとする記載に変更する等の文案が示された。

専門委員および、第517回親委員会でも賛意が聞かれた。次回親委員会(1月23日開催予定)で公開草案を公表議決する予定。コメント期限は1カ月程度とし、本年3月末までに最終化する方向。

【会計】SSBJ基準の構成、明らかに―SSBJ

去る2023年12月25日、SSBJは第28回サステナビリティ基準委員会を開催した。
第27回(2024年1月1日号(No.1698)情報ダイジェスト参照)に引き続き、IFRS S1号、S2号に相当する日本基準の開発の審議が行われた。
審議された具体的な検討事項は主に次のとおり。

■温室効果ガス排出目標

日本版S2基準において、IFRS S2号の定めを取り入れる。
委員からはIFRS S2号の定めを取り入れること自体への異論は聞かれなかったものの、「ISSBの基準がオフセットのなかでもカーボンクレジットに注力した開示となっているため、いわゆるカーボンクレジットを使用したオフセット以外の吸収・除去の取組みに関する開示についてガイダンスを設けるなどの明確化が必要では」との意見が聞かれ、事務局は「ISSBに問い合わせるなどして検討する」と回答した。

■「サステナビリティ開示基準の適用」の文案

事務局はSSBJ基準の構成について、国際的な整合性を踏まえ、次の4区分を示した。

1 サステナビリティ開示ユニバーサル基準
(1)サステナビリティ開示基準の適用
(2)以降は未定
2 サステナビリティ開示テーマ別基準
(1)一般開示基準(IFRS S1号のコア・コンテンツに関する定め)
(2)気候関連開示基準(IFRS S2号に相当する定め)
3 サステナビリティ開示産業別基準
4 サステナビリティ開示実務対応基準

1はサステナビリティ開示基準の全体像について説明する基準で、IFRS S1号のコア・コンテンツ以外の定めを想定している。3はISSB基準の産業別基準に相当するもの、4は1から3のいずれにも該当しない日本独自の定めで、いずれも当面はないものと想定している。
今回は、1の「(1)サステナビリティ開示基準の適用」の文案について検討がなされ、次の2点に議論が集中した。

①「ガイダンスの情報源」について、SASBスタンダードを義務づけるか否か
②「安全保障を脅かす可能性のある情報」の濫用リスク

①について、委員からは「投資家と企業との共通言語という意味でも『できる』規定ではなく、義務づけをするべきである」という意見と、「SASBスタンダードのデュープロセスに問題があるため、義務づけることは慎重になるべき」と両論が聞かれた。
事務局は「デュープロセスに不透明さがある以上、義務づけることへの説明が困難」としたうえで、「再度検討したい」と回答した。
②について、委員からは「安全保障という言葉の意味が幅広く、明確にすることが難しいため、濫用のリスクがある」などの意見が聞かれた。
事務局は、「法令で禁止されておらず安全保障を脅かす可能性がある場合は稀であるため、濫用リスクは低いと考えているが、文言の書き方や『安全保障』という言葉の使用なども再度検討したい」と回答した。


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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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