旬刊『経理情報』2024年7月1日号(通巻No.1714 )情報ダイジェスト/会計
【会計】VCファンドにおける時価評価オプションの適用単位、検討─ASBJ
去る6月5日、企業会計基準委員会は、第527回企業会計基準委員会を開催した。
主な審議事項は以下のとおり。
■ベンチャーキャピタル(VC )ファンドの出資持分
第219回金融商品専門委員会(2024年6月20日号(№1713)情報ダイジェスト参照)に引き続き、組合等の会計処理に関する時価評価(評価差額はその他の包括利益)するオプションの適用単位に関する追加的な分析と再提案がされた。
当初の会計方針の選択とする事務局案に意見が聞かれたため、「時価評価オプションの適用単位を『組合等(ファンド)の単位』での選択とし、企業自身が定めた一定の方法に基づいて組合等をグルーピングしたうえで、グルーピングされた組合等の単位で時価評価オプションを適用することを選択可能(当初認識時に取消不能の選択)」とする案が再提案された。
委員からは、異論は聞かれなかった。
■金融資産の減損
第219回金融商品専門委員会(2024年6月20日号(№1713)情報ダイジェスト参照)に引き続き、ステップ5(一般事業会社に対する検討)を採用する一般事業会社における営業債権、契約資産およびリース債権についての取扱い(単純化したアプローチ)の審議が行われた。
事務局から、ステップ5を採用する一般事業会社における営業債権、契約資産およびリース債権の取扱いとして、IFRS9号「金融商品」の損失評価引当金を全期間の予想信用損失に等しい金額で測定する単純化したアプローチの定めを取り入れる案が示された。
委員からは賛意が聞かれた。また、「一般事業会社が金融機関並みの負担があると誤解しないよう、基準の構成の工夫や周知活動を」との意見があった。
■リース会計基準の開発
第150回リース会計専門委員会(2024年6月20日号(№1713)情報ダイジェスト参照)に引き続き、次の検討が行われた。
⑴ 貸手の基本となる会計処理(文案の検討)
リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法(第1法)と売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法(第3法)の適用関係について、検討が行われた。
第1法を適用するリースは、「製造又は販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリース」とする案が示された。
また、第3法適用時における販売益相当額が生じる場合の会計処理について、これまでの案の他に、「貸手の現金購入価額と借手に対する現金販売価額に差がない処理を定めたうえで、販売益相当額が生じる場合の会計処理を別途定める」案が新たに示された。
委員からは、新たな案への賛成意見が聞かれた。
⑵ 経過措置
適用初年度の期首に利子込法で計上したリースに関して、利子抜法への変更を求めるか否かについて、本適用指針案116項の経過措置を適用し適用初年度において利子込法により計上した借手のファイナンス・リースについては、10%基準を超えたとしても見直しは不要とする事務局案が示された。
委員から異論は聞かれなかった。
■企業会計基準等の年次改善
事務局では、担当チームを設け、原則として年1回、ASBJが公表した企業会計基準等の要変更事項の確認作業を行うこととしている。
今回、事務局より、次の基準等について軽微な改正・修正の提案が示された。
委員から異論は聞かれなかった。
【会計】金融資産の減損における一般事業会社の貸倒引当金の取扱い、検討─ASBJ、金融商品専門委
去る6月12日、企業会計基準委員会は、第220回金融商品専門委員会を開催した。
主な審議事項は以下のとおり。
■金融資産の減損
前回(2024年6月20日号(№1713)情報ダイジェスト参照)に引き続き、ステップ5(一般事業会社に対する検討)に関する検討が行われた。
ステップ5の基本的な方針として、現行基準において貸倒引当金の対象となるすべての金融資産等に予想信用損失に基づく減損モデルを適用するのではなく、現行基準における金融商品の分類・測定を前提として、IFRS9号「金融商品」における取扱いや金融資産の性質等に基づいてグルーピングしたうえで、IFRS9号の定めを取り入れるか、または当面の間は現行の金融商品会計基準等における取扱いを踏襲するかを判断するとされている。
事務局から、貸倒引当金の対象となる主な金融資産等について、次の対応方針案が示された。
専門委員からは、「ファクタリングにより取得した売掛債権等は、①の範囲外とする分析がされているが、債権は短期のものが多く、単純化したアプローチが適当」との意見が聞かれた。
■ベンチャーキャピタル(VC)ファンドの出資持分
前回(2024年6月20日号(№1713)情報ダイジェスト参照)に引き続き、本プロジェクトの審議の過程でこれまで聞かれた意見に関して、分析が行われた。主な意見と事務局提案は次のとおり。
⑴ 総額法で会計処理している組合等への出資
組合等への出資は持分相当額を純額で取り込む純額法が原則だが、一定の場合に総額法も認められている。総額法で会計処理している組合等への出資に関して、時価評価オプションが適用できるか、適用できる場合にどのような開示(注記事項)が求められるか確認したいとの意見が聞かれていた。
これに対し、総額法の会計処理を行っている組合への出資についても時価評価オプションの適用を認め、その場合には、金融商品の時価等に関する事項および金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項についての開示(注記)の規定を適用する案が示された。
⑵ 連結上の取扱い
組合等が連結子会社に該当する場合の取扱いを追加検討すべきとの意見に対し、時価評価オプションの適用企業として想定しているLP出資者が組合等を連結することになる可能性はほとんどないとの分析を踏まえ、時価評価オプションを適用することとした組合等が連結子会社に該当する場合の会計処理は本プロジェクトの範囲に含めないとする案が示された。
専門委員から、事務局案に賛意が聞かれた。また、「⑴と⑵は似たような処理であり、結論が異なることに違和感がある」との意見も聞かれた。
〈旬刊『経理情報』電子版のご案内〉
本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
『経理情報』は、会社実務に役立つ、経理・税務・金融・証券・法務のニュースと解説を10 日ごとにお届けする専門情報誌です。タイムリーに新制度・実務問題をズバリわかりやすく解説しています。定期購読はこちらから。
電子版(PDF)の閲覧・検索サービスもご用意!詳細はこちらから。