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旬刊『経理情報』2025年3月1日号(通巻No.1736)情報ダイジェスト②/金融


【金融】サステナビリティ保証業務実施者に求められる規律、議論─金融審議会サステナ情報保証専門G

去る2月12日、金融庁は第1回金融審議会サステナビリティ情報の保証に関する専門グループ(座長:堀江正之・日本大学商学部特任教授)を開催した。
第5回のサステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ(2024年12月20日号(№1730)情報ダイジェスト参照)を踏まえ、質の高い保証業務が提供されるために必要な環境整備に関する議論を行うために設けられたもの。
今回は、サステナビリティ保証業務実施者に求められる規律のあり方について、事務局から、次のような方向性が示され、審議された。

■登録制度・登録要件

上場会社等監査人と同等の登録制度の要件、業務管理体制を求める。
特に、業務管理体制について、サステナビリティ保証業務に関する十分な知識および経験(金融庁が認定した機関が主催する研修を受講した者、一定期間のサステナビリティ保証業務の経験等)を有する者を確保することなどの人的体制、および業務の品質の管理に係る専任部門または主たる従事者の設置などの業務管理体制が含まれる。

■業務制限・義務

監査法人等と同等の業務制限、義務・責任を課す。

■保証基準、倫理・独立性

保証基準および倫理・独立性について、次のように対応する。

・サステナビリティに関する国際的な保証基準であるISSA5000との整合性を確保しつつ、企業会計審議会が策定するサステナビリティ保証基準(仮称)と自主規制機関が策定する実務の指針を一体として、わが国の一般に公正妥当と認められるサステナビリティ保証の基準とする。

・国際的な品質管理基準であるISQM1と整合した監査に関する品質管理基準と日本公認会計士協会の実務の指針を一体として、サステナビリティ保証にも適用する。

・サステナビリティ保証に関する国際的な倫理・独立性基準であるIESSAとの整合性を確保しつつ、公認会計士法等の法規制、企業会計審議会が策定するサステナビリティ保証基準(仮称)および自主規制機関で策定する倫理規則を一体としてサステナビリティ保証の倫理・独立性とする。

■委員の意見

委員からは、方向性に賛成する意見が多く聞かれ、「保証業務は、会計プロフェッションの専門業務とすべき」との意見があった一方、「事務局案は監査人に偏りすぎで、Non―PA(職業会計士以外)を選択する余地がない」、「最初から財務諸表監査レベルの精緻な制度を作るのは難しい」といった反対意見も聞かれた。
また、「最近欧米でサステナビリティ開示が停止や緩和されているという動向を注視しつつ、慎重な検討を」、「将来的には、サステナビリティ保証の試験を導入し、試験合格を要件としては」などの意見も聞かれた。

【会計】SSBJ基準、次回にも公表議決へ─SSBJ

去る2月6日、SSBJは第48回サステナビリティ基準委員会を開催した。
昨年3月29日に公表されたサステナビリティ開示ユニバーサル基準およびサステナビリティ開示テーマ別基準の公開草案(以下、あわせて「本公開草案」という)に寄せられたコメントへの対応案について、審議が行われた。
主な審議事項は次のとおり。

■IFRS S2号改訂への対応

1月29日に開催されたISSBボード会議において、次の4点についてIFRS S2号における要求事項を修正または明確化することが提案されている。

⑴ 産業別に分解したファイナンスド・エミッション等の開示において、世界産業分類基準(GICS)の6桁の産業レベルのコードの使用について、特定の状況でGICS以外の産業分類システムを用いることができるとし、その場合に、使用した産業分類システムとそれを選択した基礎の説明を要求する容認規定を定める。

⑵ スコープ3「カテゴリー15」の投資に関連する温室効果ガス排出の測定および開示の範囲を、ファイナンスド・エミッション(ただし、デリバティブを除く)に限定する。

⑶ 温室効果ガスをCO2相当量に変換するにあたり、法域の当局または企業が上場する取引所から要求されている場合、最新ではない「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の評価における、100年の時間軸に基づく地球温暖化係数を用いることができるとする容認規定を定める。

⑷ 法域の当局または企業が上場する取引所が、「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法を用いることを要求している場合の容認規定は、グループ内の一部の企業にも適用可能であることを明確にする。

これに対し、事務局は次のような対応案を示した。

・IFRS S2号の改訂案が公表されれば、その内容をSSBJ基準に取り入れるかどうかについて審議のうえ、速やかに(ISSB基準の改訂の確定を待たずに)SSBJ基準の改正に関する公開草案を公表する。

・2025年中にIFRS S2号の改訂が確定した場合は2026年3月末までにSSBJ基準の改正を確定させることを目標とする。

・改正後のSSBJ基準は、関連する改訂後のISSB基準が適用となった日以後、適用可能とする旨の定めを含める。

委員からは、おおむね賛同の意見が聞かれた。

■世界産業分類基準(GICS)の取扱い

SSBJの本公開草案では、ISSBと同様に最新のGICSの6桁コードを用いて、産業別に分解したファイナンスド・エミッションおよびグロス・エクスポージャーの開示を要求することを提案した。
この点、ISSBでは、前記⑴について審議されており、そのように修正される方向となれば、速やかに修正案に関する公開草案が公表され、2025年内の確定を目指すことが示唆されている。
事務局は、本論点について次のような事務局案を提示した。

⑴ 本公開草案を変更し、産業別に分解したファイナンスド・エミッションおよびグロス・エクスポージャーの開示を求め、その産業分類にGICSを使用することを求めるものの、当面の間、産業別に分解したファイナンスド・エミッション等の開示をしないことができる旨を経過措置として定める。

⑵ 当面の間、開示を求めないものの、ISSB基準が改訂された場合には、SSBJ基準においても同様の改正を行うかどうかの議論を行う予定であることを、気候基準の結論の背景に記述する。

委員からは、おおむね賛同の意見が聞かれた。

事務局から次回の委員会(2月19日開催予定)にて、議決したい旨が示された。なお、公表は3月の模様。


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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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