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【会計】最低法人税率15%導入に関するIASBの議論を確認─ASBJ、税効果会計専門委

去る2022年12月19日、企業会計基準委員会は第82回税効果会計専門委員会を開催した。
経済協力開発機構(OECD)によるBEPSプロジェクトの一環として、「第2の柱」(最低法人税課税制度)の導入に向けた取組みが各国で進められている。本制度に関して、国際会計基準審議会(IASB)では、企業の法人所得税の会計処理に与え得る影響について議論が行われている。今回は、IASBのボード会議における暫定決定が紹介された。

■IAS12号「法人所得税」の修正

「第2の柱」では、年間総収入金額が約1、000億円を超える多国籍企業を対象に最低法人税率15%の適用が求められる。本制度が導入された場合、最低法人税率15%の不足分への上乗せ税額(トップ・アップ税額)の計算やGloBE情報申告への対応等、税効果会計に影響が生じると考えられる。そこで、IASBは2022年11月のボード会議において、IAS12号を修正し、主に次の対応を企業に求めることとした。

  1. 第2の柱モデルルールの適用から生じる繰延税金を会計処理する要求に一時的な例外を導入する。

  2. 第2の柱モデルルールの発効前・当期は、企業が営業を行っている法域において制定された関連法制情報や、当期に係る企業の実際負担税率が15%未満の法域の場合の会計上の税引前利益率や法人所得税費用等の総額開示等を要求する。

  3. 一時的な例外を適用した旨およびトップ・アップ税に係る当期税金費用を開示する。

なお、本修正に関する公開草案は2023年1月に公表される予定であり、確定版は同年第2四半期中の公表が見込まれる。

■ASBJ事務局の考え

事務局は本修正について主に次のような懸念があるとし、IASBに意見していくとした。

⑴一時的な例外の適用時期

わが国では、3月決算企業への影響を見据え、関連する税法の制定が2023年3月末までに行われる可能性がある。その場合、本年第2四半期中の公表が見込まれるIAS12号の修正時に、発行がいまだ承認されていない2023年3月期の財務諸表への早期適用を認めることや、繰延税金の一時的な例外の導入をすることのみについて先に最終化すること等の対処が必要になると考えられる。

⑵開示要求の内容

第2の柱モデルルール発効前に求められる開示の一部は実質的に見積りを要求するものと考えられるが、関連税法が未発効の状況で行われた見積りは不確実性の高さが懸念される。
また、適用除外した結果、実際にトップ・アップ税が発生しない場合も考えられ、その場合は実際負担税率が15%未満である法域を開示することで、かえって利用者の誤解が生じ、情報の有用性を低下させる懸念がある。

⑶当期税金の取扱い

第2の柱モデルルールは複雑であり、当期税金に関する税金負債の認識に関して、見積りが困難な場合があると考えられ、困難性を考慮した例外規定を設けること等を検討すべきである。

専門委員からは、「日本基準でも対応が必要なのではないか」との意見が聞かれ、事務局は「日本基準の改正については、税制改正が行われ、内容が明らかになった段階で、親委員会および専門委員会で必要な議論を行いたい」と回答した。

■親委員会での意見

2022年12月26日に開催された第493回親委員会でも、同様のテーマの議論がされた。
委員からは、おおむね事務局意見に同意であり、「開示内容については、要求事項が拡大しており、十分な議論が必要」、「一時的な例外の導入のみを先に最終化することをメインの主張にしたほうがよい」との意見が聞かれた。
事務局からは、IASBから公開草案が出たところで正式なレターを作成するが、おおむねこの方向性で進めたい旨が示された。


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