データ分析キャリア論:異分子であれ!FP&A・CFO単独のキャリアは、もはや限界!?|【連載】データ分析のログハウス(第10回)
旬刊経理情報連載
「データ分析の森」ガイドマップ番外編
みなさん、こんにちは。
遠藤武(えんどう・たける)です。
(私の活動や発信については、 https://boxcox.net/et をご覧ください!)。
おやおや、「データキャラのクマさん」が、
何やら絵を描いている様子ですね。
これは、すばらしい心がけですね!
データ分析を極力「絵」でみていって、
もともとバラバラだったものをつなげるというのは、
実はとても大切なことです!
直近で「経理とマーケティング」という、経理と一見すると縁遠くみえる話題を本誌で扱っています。
実は「経理・FP&A・CFO」が、他の分野とつながりあい、二刀流や三刀流である異分子の経営人材が出てきたということに起因しています。
今回は、本誌で出した「図表」を用い、点を読み解くことにしましょう!
なぜ「異分子」が求められる?
そもそもですが、
FP&A(ファイナンス)や管理会計はCFOが頂点
マーケティングはCMOが頂点
データ分析周りのテクノロジーは研究職やCIO(あるいはCTO)が頂点
という、それぞれ点在する別物だとみなされてきました。
キャリアとして、あまり交わる必要はありませんでしたね。
ここに異分子の要素はありません。
いっぽう、データドリブンやデジタル化が当たり前になり、複合的な視点を持つ人材が重要になってきて、単純な分類だけでは組織が機能しなくなってきたのです。
上記の「経理は有利」チャートのとおり、たとえば、
CFOが司るファイナンスに統計学の視点が必要になった
CMOやマーケターにCIOやCTOの視点が必要になった
CIOやCTOに投資価値評価の視点が必要になった
という具合に、それぞれ点在する素養がつながっています。
ここまでならまだ想像がつく範囲だと思いますが、現実はより激しく動いています。
単なる多様性というだけではもはや手ぬるいくらい、複数分野を掛け合わせた人材が求められる時代になりました。
筆者が知る限りでは、
異分子といえるCxOとして、
CMOが、PLに責任を持っているケース(上場しているテックベンチャー)
CFOが、経営戦略だけでなく、マーケティングとテクノロジーの背景を極めて強く持つケース(業界最大手の飲食店)
という、相当抜本的な動きを実際に把握しています。
上記のチャートの「レベル3:経理ではない異分野の知識」と「レベル4:誰も見たことのない世界を、作り続ける」が、分野という点と点がつながる形で大きく動き、異分子化が現実の話になっているのです。
デジタル化や市場の変化の影響を受け、経営人材の異分子化が進んでいるのは、もはや不可避だといえます。
単にFP&Aを導入するのは、もう限界!?
おたんさん、さすが鋭い質問ですね。
ストレートに私の見解を言い切ってしまうと、
現今のFP&Aには、BizDev(事業開発)とBizOps(事業運用)の観点が足りていないと考えます。
大枠をいうと、BizDevとは事業や組織をゼロから作って成長軌道を策定することであり、BizOpsとは事業や組織を成長させ続けるサイクルを回すことです。
本誌では図表のマーケティング・ループで、事業や組織を成長させ続けるサイクルを表現しています。これは広い意味ではマーケティングですが、価値やコンセプトづくり、価値観や座組み構築を含むBizDevやBizOpsといった、事業と組織の開発・運用まで広げられます。
以前に、FP&Aが「つまらない」?と、noteの第3回で書き、「FP&Aが単なる集計代行であれば、事業にインパクトを与えることがないから、つまらないと感じてしまう」と述べました。
確かに私もFP&Aを経験しましたが、私の場合も多様性ある異分子として、事業を作って成長させる側を経験したため、FP&Aに参入できたという経緯があります。
私はもともと、リサーチアナリストとして市場の統計予測や記事執筆を行い、投資価値評価サービスを統計モデリングと財務モデリングを構築してリリースした背景があります。
そのうえで製造業での調達やSCM、大手ベンチャーでの予実管理とマーケティング企画を担う経営戦略を手掛けていました。
通常のFP&Aだとなかなか触れないところまでリーチし、勤め人時代の最後には外資の日本法人ゼロ立ち上げをリードしたのですが、
その時にやっていたことが、いわゆるBizDev(事業開発)とBizOps(事業運営)であり、今私が手掛ける「仕組み化」の1要素にもなっているのです。
私がかつて、外資企業ゼロ立ち上げから急成長をリードしたときの流れは、以下のようなチャートで表せます。
新規事業(および組織)立ち上げは、フィジビリティ含め、本音からゼロイチで中身を作ることです。
BizDev(事業開発)は、事業を成長軌道に乗せる方策を作って実行することです。
DevOps(事業運営)は、事業の成長のための実行について、混沌を整然へと定式化・効率化していくことです。
この図表における経験は、FP&Aの素養と、データ分析の背景、マネジメントの背景、またプロダクト構築経験や市場から洞察を引っ張り出す経験が、総合的にすべて役立ちました。
単にFP&Aだけを扱うのであれば、それすらもはや断片的になるリスクがあります。
少なくとも、マーケティング・ループで示したような全体像があれば、FP&Aは断片化せず、エキサイティングな日々を過ごすことができるはずです。
結局、マーケティングもキャリアも、本音が大事
仕事が面白いのは、なぜでしょうか?
あるいは、研究や勉強が、趣味が、遊びが面白いのは、なぜでしょうか?
理由はいろいろあるでしょうけども、一番は「本音がそこにあるから」ではないでしょうか。
自分が「こうしたい!」と思うことしか、人間は本気では取り組めません。
売れる商品やサービスが現にあるのも、
今をときめくあの企業に応募が殺到するのも、
「欲しい!」で本音の体現を果たしているためです。
上記はマーケティングの話として描いた図表ですが、
マネジメントにも関わってくることになりますね。
新規事業と組織立ち上げ、BizDev、BizOpsについて関わっていくと、
このような目線での分析や、妄想と行動が重要で、
データ分析そのものはその手段だと気づかされます。
データは過去のものであっても、
今を生きる人間の本音は、
常に現在進行形や未来完了形です。
事実から本音を見定めることで、
分析を知恵に昇華させていくのです。
データ分析とは、
「いかにして本音を大事にしてあげられるか」
が常に問われる競技種目だといえますね。
データ分析にまつわる素朴な疑問でもよいですし、
他の「こんなことが気になる!」でも、
ついつい湧き出る妄想でも構いません。
すべては、何かを始めるためにうってつけの理由です。
それでも「やっぱり不安だな…」という物事があれば、
お気軽にログハウスのドアをノックしてくださいね。
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「データ分析のログハウス」は、旬刊『経理情報』2022年7月10日号からスタートした連載「「データ分析の森」ガイドマップ」との連動記事です。
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バックナンバー
第1回 ログハウスができたよ!
第2回 「データ分析の人材市場」を分析したよ!(※属性つき)
第3回 FP&Aが「つまらない」は本当?
第4回 リスキリングの本質って何?
第5回 ゼロから始める事業立上げ 財務モデリングを超シンプルに!
第6回 「データない問題」に立ち向かう。
第7回 「データキャラ」は「データ分析キャラ」?
第8回 キャリアアップの方向性を探ろう!
第9回 ドメイン知識ってなんだ?
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