データ分析キャリア論:ドメイン知識ってなんだ?|【連載】データ分析のログハウス(第9回)
旬刊経理情報連載
「データ分析の森」ガイドマップ番外編
みなさん、こんにちは。
遠藤武(えんどう・たける)です。(私の活動や発信につは、https://boxcox.net/et をご覧ください!)
おや、「データキャラのクマさん」は、どうやらログハウスに居着いてくれた様子ですね。
メガネを外して、目をウルウルさせながら雑誌を読んでいますね。気づいたらけっこうサイズが成長(?)している様子です。
よし、今回はこれをシンプルに解説しましょう!
いわゆる「ドメイン知識」という概念があると、わかりやすいはずです!
「ドメイン知識」ってなんだ?
「ドメイン知識」とは、
のことです。
たとえば、鉄鋼業界に固有のドメイン知識は…。
鉄鉱石・原料炭のサプライチェーン、製鉄所(高炉・電炉)のしくみ、鉄鋼製品の種類(形状・素材・加工)、図面の読み方、品質管理などが挙げられます。
また他には、組織の「役職にも固有のドメイン知識があるといえます。
たとえば、CMO(最高マーケティング責任者)のドメイン知識を仮定すると…。
市場調査や顧客動向の調査、売上予測、商品の顧客体験価値づくりやLTV向上、コンセプトデザインづくりなど、マーケティングに関わる物事全般を担うという点が挙げられます。
これだけでなく、ありとあらゆる業界や分野や役職に、固有のドメイン知識があるはずですね。
仮にカッチリと整頓されたドメイン知識がなくとも、バラバラな主観や暗黙知として、ドメイン知識が存在していることも多々あります。
「データ分析の森」第1回の図表がわかりづらいとしたら、
異分野だったり職階が異なるために、想像がしづらいという点が実情でしょうか。
この場合は、CxOの仕事についての基礎知識を仕入れてしまうと手っ取り早いです。
要は、「今私がCxOだったら、何をどうするか?」という仮定のもとで動いてしまうのです。
CMO/CIO(CTO)/CFOは、それぞれどんなことをやっていて、具体的にどんな人がいて、どんな知識が必要で、業界や会社ごとにどんな違いがあるか、本や文献で解像度を上げ下げしていけばいいのです。
基礎知識と知識量がものをいう!
おたんさん、ご名答!
実のところ、ドメイン知識とは文字どおり基礎知識のことです。
そして、知識量は多いほうがいいといえます。
知識を、データのようにかき集めていくことが始まりです。
その際に、かなりマニアックな知識も出てくることになるはずです。
ちょうど公認会計士・税理士の方がクライアントとの関わりで特定業界の知識に強かったり、戦略コンサルティングファーム所属のコンサルタントが業界紙2〜3年分に目を通したりしておくように、その分野のプロと関わるうえでの基礎知識や、マニアックな知識や、大和言葉の習得が必要です。
というのも、その業界には独特の言葉や概念があり、それを知っているか否かで、「ああ、この人はわかっている人だな」と安心してもらえるところがあるためです。
筆者の場合、アナリスト時代に海運・造船業界を徹底的に掘り下げましたが、海運・造船業界内部では大手3社を「郵商K(ゆう・しょう・けい)」という言い方で呼ぶことが多々あります。
それぞれ読み解くと、「郵」は日本郵船、「商」は商船三井、「K」は川崎汽船を示します(日本郵船はNYK、商船三井はMOL、川崎汽船は“K”Lineという略称があります。)。
ほか、海運・造船業界では郵商Kの大手3社以外の規模が大きい企業を「中手」と呼ぶのも特徴的です。
このような用語だけでなく、業務の基本的な流れ、組織や部門の構成とポリシー、同じ事業をやっていてもどこに差があるか(人員構成、キャラクター、雰囲気)、などなど、数多くの要素(データとして捉えた場合は変数)出てきますね。
些細なことかもしれませんが、そのひとつひとつが、商品やサービスや対応力として、差をつけていくのです。
とはいえ、最初から知識の解像度を上げてしまうとなかなか大変です。
そのような場合は、まず本から入ることをおすすめします。
会計書の場合は、「業種別アカウンティング・シリーズ」、「Q&A業種別会計実務」(どちらも中央経済社)、「業種別会計シリーズ」(第一法規)、業界の動向の場合は、「動向とカラクリがよ〜くわかる本」(秀和システム)といったところが役に立つはずです。
これらで基礎知識を仕入れたうえで、各業界の大手のアニュアルレポートや有価証券報告書を見たり、業界紙やより細かい分野のソリューションをみたりすると、ドメイン知識の基礎は確保できるはずです。
知識の使い方
続いて、知識の使い方の話です。
特にデータ分析・データ利活用やAI活用を取り巻く新規事業について、特定のドメインで、「この状況は難しいな…」「この分野は難しい…」といったケースに直面した場合、原因は以下の2つの可能性が極めて高いです。
これを厳しいものと捉えるか、チャンスと捉えるかは、単に合理的に考えるだけではなく、合理性を無視して自分たちの本音と照らしてほうがいいでしょう。
アニマルスピリットを大事にするということです。チャンスとして前向きに捉えたいなら、
という目線で、ファイティングポーズの取れるToDoを作って、実行すればいいのです。
最近、メタバースについては「9割の取組みが失敗だった」というレポートが、NTTデータ系のコンサルティング会社であるクニエによる調査で明るみになっています。
データ分析やデジタル分野に関わってきた筆者としては、メタバース自体について、
と感じていました。
要はこれは、どのドメインを狙うかがよくわからず、ドメイン知識が不足していたか、そのドメインに入り込む隙間がなかったのです。
お金や技術を投入しただけでは、事業はうまく進みませんね。
ここに現実解を見出しましょう。
この真逆で、ちゃんと本音を反映させたものは売れてしまいます。
デジタルと本音を掛け算し、市場を取りにいくのであれば、コロナ禍でzoomやteamsが当たり前に使われるようになった点があり、リモートワークを推進していくことで、ついつい「こうしたい!」「欲しい!」となる点が挙げられます。
これらは時流にマッチしたところでもありますが、働き方というドメイン知識について、もともと痛みがあったという事実を見事に捉えています。
合理性だけではどうにもできない、価値観の話であり、アニマルスピリットが勝利をもたらしたといって差し支えありません。
ゼロ立ち上げするマーケティングの発想で言うと、コンセプトデザインを小さいところから磨きあげて分析し、そのうえでお悩み解決の需要をとりにいく視点で、ドメイン知識の取りまとめが想定できます。
特定の技術にどこまで伸びしろがあるかはさておき、ドメイン知識があることで、需要や強みが意味が見出せたなら、ビジネスの成功確率が上がるのは確かな事実です。
データ分析にまつわる素朴な疑問でもよいですし、他の「こんなことが気になる!」でも、ついつい湧き出る妄想でも構いません。
すべては、何かを始めるためにうってつけの理由です。
それでも「やっぱり不安だな…」という物事があれば、
お気軽にログハウスのドアをノックしてくださいね。
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「データ分析のログハウス」は、旬刊『経理情報』2022年7月10日号からスタートした連載「「データ分析の森」ガイドマップ」との連動記事です。
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バックナンバー
第1回 ログハウスができたよ!
第2回 「データ分析の人材市場」を分析したよ!(※属性つき)
第3回 FP&Aが「つまらない」は本当?
第4回 リスキリングの本質って何?
第5回 ゼロから始める事業立上げ 財務モデリングを超シンプルに!
第6回 「データない問題」に立ち向かう。
第7回 「データキャラ」は「データ分析キャラ」?
第8回 キャリアアップの方向性を探ろう!
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