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旬刊『経理情報』2023年10月20日号(通巻No.1691)情報ダイジェスト/会計


【会計】金融商品の減損に関する開示の再提案、検討─ASBJ、金融商品専門委

去る9月25日、企業会計基準委員会は第206回金融商品専門委員会を開催した。
金融資産の減損に関する会計基準の開発に関して、ステップ2を採用する金融機関における開示について、これまで検討された審議のまとめが行われた。
主な審議事項は次のとおり。

■金融商品のクラス別の期首残高から期末残高への調整表

第203回専門委員会(2023年8月10日号(No.1685)情報ダイジェスト参照)で、金融商品のクラス別の調整表に関するIFRS7号「金融商品:開示」の定めを取り入れるかどうか、財務諸表利用者へのアウトリーチを行う方針が示されていたが、今回その利用者アウトリーチの実施結果を踏まえた再提案が示された。
利用者アウトリーチでは、クラス別の調整表の開示に対する情報ニーズを有しており、金融商品のクラス別の調整表における期中変動の内訳項目については、内訳項目によって重視する度合いに濃淡があるとされた。
このアウトリーチの結果を踏まえ、事務局から、次の再提案が示された。

金融商品のクラス別の調整表に関するIFRS 7号の定めを取り入れ、企業が開示目的に照らして金融商品のクラス別の調整表における内訳項目を判断することを強調する。
仮に、IFRS 7号IG 20B項の開示例(信用リスクに関する35H項および35I項(予想信用損失から生じた金額に関する定量的情報および定性的情報)の適用の例示)を設例として取り入れるとする場合、一部の内訳項目をまとめたうえで取り入れる。

専門委員からは、「『クラス別』とはどこまで細かくするかの指針を出してほしい」、「作成者コストが大きいことを認識して議論を」等の意見が聞かれた。

■ステップ2を採用する金融機関における開示(注記事項)

これまでの開示に関する議論の振り返りとして、これまで聞かれた意見に対する分析や方向性が示された。
主な議論は次のとおり。

⑴ 信用リスクの開示目的

事務局は、開示目的を「信用リスクが将来キャッシュ・フローの金額、時期及び不確実性に与える影響を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を企業が開示すること」とし、開示目的を達成するために提供する情報として、次の4つの区分に整理する旨提案していた。

① 会計方針に関する事項
② 貸倒引当金の分解情報
③ 貸倒引当金の算定プロセスに関する情報
④ 当期および翌期以降の財務諸表への影響を理解するための情報

これに対し、「開示目的は適用指針ではなく会計基準に記載すべき」、「より具体的な記載とすることで開示目的アプローチの実効性を高められる」、「教育文書等で開示目的を定めるアプローチの考え方を示すべき」、「②の開示は、収益認識基準の『分解情報』と必ずしも同じではないので、『分解情報』の表現を見直しては」との意見がこれまでの議論で聞かれており、これらの意見について文案検討時に追加的に検討するとの対応案が示された。

⑵ 信用リスク・エクスポージャー

信用リスク・エクスポージャーについて、IFRS7号の定めを取り入れる提案に対して聞かれた意見をもとに、継続中である、債券等の有価証券を予想信用損失に基づく減損モデルの対象とするかどうかに関する会計処理の議論を踏まえ、開示について再検討するとの対応案が示された。

⑶ 財務諸表以外の開示への参照

財務諸表以外の開示への参照については、IFRS7号の定めを取り入れる提案がされていた。これに対して、監査の観点から実務上の課題が生じる可能性等を懸念する意見が聞かれていた。これを踏まえ、文案検討時に監査上の課題について再検討する対応案が示された。
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専門委員からは、特段の異論は聞かれなかった。

【会計】日本版S2基準の開発、報告期間関連の事項等、検討─SSBJ

去る10月2日、SSBJは第22回サステナビリティ基準委員会を開催した。
第21回(2023年10月10日号(No.1690)情報ダイジェスト)に引き続き、IFRS S2号に相当する日本基準の開発の審議が行われた。
審議された具体的な検討事項は主に次のとおり。

■異なる報告期間の情報の使用

日本版S2基準において、IFRS S2号を取り入れ、細かい用語については追加・変更することで、よりわかりやすいものとする。
委員からは、「スコープ3において、活動量は自社の数値を、排出係数は取引先の数値を用いて算定するケースが想定されるが、その場合において、取引先の排出係数を、異なる報告期間の情報として扱ってもいいのか」とのコメントが聞かれた。
事務局は、「スコープ3の情報が何カ月かずれてもいいのかというご質問かと思うが、ISSBがそこまで含意しているかどうかが必ずしも明らかではないので、確認する」とした。

■温室効果ガス排出量の表示単位

日本版S2基準において、IFRS S2号を取り入れ、次のことを定める。

●温室効果ガス排出量の測定は、CO2相当量のメートル・トン(mt(e))によ らなければならない。
●温室効果ガス排出量の合計が大きい場合、千メートル・トン(キロ・トン)または百万メートル・トン(メガ・トン)単位で開示することができる。ただし、この選択を行う場合、温室効果ガス排出量に関する開示は同じ単位を用いて開示しなければならない。

■GHGプロトコルと法域における他の法令等との関係

日本版S2基準において、IFRS S2号を取り入れた。また、報告期間のずれの取扱いについて次の事務局案を提案した。

案1:当局に報告した内容であることを重視し、公表承認日までに当局に報告した内容をサステナビリティ関連財務開示に含める考え方。この考え方のもとでは、報告期間がどれだけずれているかについては問わない
案2:公表承認日までに当局に報告した内容をサステナビリティ関連財務開示に含めることを原則としつつも、報告期間のずれは1年未満にすることを要求する考え方。この考え方のもとでは、温対法等に基づく報告を報告期限よりも早く行うことを求めることになる場合がある

委員からは、案2を原則として考える意見が多かったものの、「規模の小さい企業にとってはリソースが不足しているため、作成者側の規模に応じて案1を認めるといったメリハリをつけるのはどうか」と案1を推す意見も聞かれた。
事務局は「案2を原則として考えたときにどのような場合において例外的に案1を認めるべきか難しい」とコメントした



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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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