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【会計】信用減損金融資産に係る利息収益の認識、検討─ASBJ、金融商品専門委

去る3月14日、企業会計基準委員会は第197回金融商品専門委員会を開催した。
主な審議事項は次のとおり。また、本テーマについては、3月22日開催の第498回親委員会でも審議された。

■信用減損金融資産に係る利息収益の認識

貸付金の測定に関する論点の1つとして示されていた、ステップ2を採用する金融機関における信用減損金融資産に係る利息収益の認識について、審議された。

⑴IFRS9号「金融商品」の取扱い

IFRS9号では、利息収益と予想信用損失を別々に認識するデカップル・アプローチを採用し、信用減損していない金融資産に係る利息収益について、金融資産の総額での帳簿価額に実効金利を適用して算定する。
しかし、信用減損金融資産に係る利息収益は、企業が受け取ると見込んでいるキャッシュ・フロー(CF)が基礎となる損失評価引当金を控除した償却原価に実効金利を適用する。

⑵事務局分析

IFRS9号では、日本基準のような元本および利払いという形式ではなく、契約期間全体にわたるCFに着目して、受取利息の計上および予想信用損失の測定を整合的に行っている。
①純額での利息計上
IFRS9号では、購入または組成した信用減損金融資産ではないが、その後信用減損金融資産になった金融資産については、その後の報告期間で金融資産の償却原価に実効金利を適用しなければならない。この償却原価は損失評価引当金控除後の金額であり、報告期間末日以後において回収が見込まれるCFの割引現在価値を表している。また、この償却原価に実効金利を乗じて認識される利息は、回収が見込まれるCFに係る現在価値の巻き戻しを表している。
損失評価引当金を控除せず、総額での帳簿価額に実効金利を乗じた利息を認識することは、回収が見込まれないCFに係る利息を認識するものであり、その妥当性を国際的に説明するのは困難である。
②未収利息の不計上
IFRS9号では、信用損失はすべてのCF不足の現在価値とされ、将来の利払いに係るCFについても予想信用損失の対象となる。そのため、未収利息を不計上とする処理は、予想信用損失に織り込み済みとなるので不要である。

⑶事務局提案

⑵の分析を踏まえ、IFRS9号の定めを取り入れ、未収利息を不計上とするオプションは設けないとする案が示された。

専門委員からは、「純額の利息計上について、その理由を結論の背景や教育文書で説明してほしい」、「未収利息の不計上について、現行の税務や金融検査との関係で懸念がある」との意見が聞かれた。
また、第498回親委員会では、委員から賛成意見が多く聞かれた。

■信託への投資に対する予想信用損失による減損モデルの適用

第496回親委員会(2023年3月10日号(No.1671)情報ダイジェスト参照)に引き続き、審議が行われた。
当初、信託受益権に関して、債権または債券、株式等、預金のそれぞれと同様の性格を有する場合に分けて会計処理の提案が示されていたが、聞かれた意見を踏まえ、次の信託への投資に対する予想信用損失モデルの適用については、当面の間、現行の減損モデルを維持し、金融商品の分類・測定に関する会計基準の開発に着手するかの議論の際に考慮事項として取り扱う。

  • 委託者兼当初受益者が複数である金銭の信託

  • 受益権が質的に異なるものに分割されているまたは受益者が多数となる金銭以外の信託

専門委員からは、特段の異論は聞かれなかった。また、第498回親委員会でも賛成意見が多く聞かれた。


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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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