見出し画像

旬刊『経理情報』2024年12月20日号(通巻No.1730)情報ダイジェスト①/金融・会計


【金融】政策保有株式に関する開示府令等改正案、公表─金融庁

去る11月26日、金融庁は、政策保有株式の開示に関する「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(案)を公表した。

改正の背景

金融庁では、令和5年度の有報レビューにおいて、「株式の保有状況」の開示のうち、いわゆる政策保有目的から純投資目的に保有目的を変更した株式の開示状況を検証したところ、実質的に政策保有株式を継続保有していることと差異がない状態になっているとの課題を識別していた。また、「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム2024」や「2024事務年度金融行政方針」においても、政策保有株式の開示の適切性について、制度改正等の方向性が示されていた。

改正の概要

有報等における「株式の保有状況」の開示に関して、次の改正を行う。

⑴ 開示府令の改正
当期を含む最近5事業年度以内に政策保有目的から純投資目的に保有目的を変更した株式(当事業年度末において保有しているものに限る)について、次の開示を求める。

・銘柄
・株式数
・貸借対照表計上額
・保有目的の変更年度
・保有目的の変更の理由および変更後の保有または売却に関する方針

⑵ 開示ガイドラインの改正
「純投資目的」を「専ら株式の価値の変動又は株式に係る配当によって利益を受けることを目的とすることをいう」とする考え方を明示する。

■適用関係等

公布の日から施行され、2025年3月31日以後に終了する事業年度に係る有報等から適用予定。
コメント期限は12月26日。

【金融】WG内にサステナビリティ情報保証の専門グループを設置へ─金融審議会サステナ情報開示・保証WG

去る12月2日、金融庁は第4回金融審議会サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ(座長:神作裕之・学習院大学大学院法務研究科教授)を開催した。
主な審議事項は次のとおり。

サステナビリティ情報の開示

⑴ セーフハーバー
前回会議( 2024年11月10号(№1726)情報ダイジェスト参照)にて、スコープ3排出量に係る定量情報の虚偽記載等に対するセーフハーバーについて、開示ガイドラインを改正し、一定の開示を前提に、責任を負わないとの考え方を示す事務局案についておおむね賛意が聞かれていた一方、責任の要件の見直し等、法改正により対応すべきとの意見も聞かれていた。
そこで事務局は前回提案した開示ガイドラインによる対応を行うことを前提に、適用対象や適用要件について法律改正の要否も含め、検討していくことを提案した。

⑵ 確認書
前回会議では、経営者の有価証券報告書の作成責任の明確化の観点から、金融商品取引法上の確認書の記載事項を追加するとの事務局案に対し、反対意見が聞かれていた。
これを受けて、事務局は、確認書による確認の範囲は、有価証券報告書の記載内容全体に及んでいるものの、記載事項が限定的であるとし、会社の代表者等が、かかる情報開示のための社内の手続について、たとえば、「開示手続を整備していること」や「開示手続の実効性を確認したこと」等、代表者等の役割と責任に関する事項を確認書の記載事項とすることで、情報開示に対する代表者等の責任の範囲の明確化を図るとの方向性が示された。
委員からは、「確認書の記載事項を増やすことよりも、開示手続を有報等に記載するほうがより実効性があるのでは」との意見や「現状においてもサステナビリティ情報も含めた有報全体に対して、代表者および最高財務責任者が適正性を表明しているため、追記はいらないのでは」という意見が聞かれた。

サステナビリティ情報に対する保証制度

事務局は保証制度の方向性に関する各種論点について次の対応案を示した。

⑴ サステナビリティ保証の範囲・水準等
時価総額3兆円以上、1兆円以上、5,000億円以上のそれぞれについて、保証制度導入から2年間は保証範囲をスコープ1・2、ガバナンスおよびリスク管理とし、3年目以降は、国際動向等を踏まえて、本WGにおいて継続して検討する。

⑵ サステナビリティ保証業務の担い手
サステナビリティ保証業務を公正かつ的確に遂行するに足りる体制が整備されていることを条件に、監査法人に限定されないprofession-agnostic制度とする。
保証業務実施者の保証の質を確保するための登録制度を導入する(制度の円滑な導入のためのしくみも含む)。
保証の質を確保するため、監査法人であるか、その他の保証業務提供者であるかにかかわらず、義務・責任、倫理・独立性などは制度上同等なものとする。

⑶ 保証基準、検査監督、自主規制
質の高いサステナビリティ保証業務が提供されるための環境を整備するため、わが国において保証基準を作成する。
監査法人であるか、その他の保証業務提供者であるかにかかわらず、検査監督、自主規制は同じものとする。

委員からは、おおむね賛意が聞かれたものの、⑴について、「前回WGから、ガバナンスとリスク管理が追加され保証範囲が拡大している。アメリカと同様にスコープ1・2までとするべき」、「3年目以降は国際的動向を踏まえてとあるが、必ずしも国際的な動向が一致しているとも限らず、3年目以降の実務の予見可能性が低い」などの意見が聞かれた。

今後の検討の進め方

事務局は今後の検討の進め方について、次のように本WGで議論するものと、新たに「サステナビリティ情報の保証に関する専門グループ」を設置してさらに議論を進めていくものとを提案した。

【本WGで議論(大きな方向性)】
・サステナビリティ保証の範囲・水準等
・サステナビリティ保証業務の担い手
【「サステナビリティ情報の保証に関する専門グループ」(法改正が必要なもの等)】
・サステナビリティ保証業務の担い手の登録要件、義務責任
・サステナビリティ保証業務に関する保証基準および倫理
・独立性基準のあり方・サステナビリティ保証業務実施者への検査・監督のあり方
・自主規制機関の役割
・任意保証の義務責任 等

委員からは賛意が聞かれた。

【会計】指標の算定期間の考え方に関する再提案、公表─SSBJ

去る11月28日、SSBJは第44回サステナビリティ基準委員会を開催した。
3月29日に公表されたサステナビリティ開示ユニバーサル基準およびサステナビリティ開示テーマ別基準の公開草案(以下、あわせて「本公開草案」という)に寄せられたコメントへの対応案について、審議が行われた。
主な審議事項は次のとおり。

指標の報告のための算定期間に関する再提案

事務局は、前回(2024年12月10日号(№1729)情報ダイジェスト参照)までの審議において再提案を行うこととなっていた指標の報告のための算定期間について文案を示し、委員全員からの賛成を得て、公表議決された(11月29日公表。2025年1月10日コメント期限。公開草案「指標の報告のための算定期間に関する再提案」の公表参照)。

任意でサステナビリティ基準に従った開示を行う場合

本公開草案に関して市場関係者からは「任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合」が、企業が自発的にSSBJ基準のすべての定めに準拠した開示を行う場合のみを指しているのか、企業が自発的にSSBJ基準の一部の定めに準拠した開示を行う場合も含めるのかが必ずしも明確ではないとの声が寄せられた。
そこで事務局は「任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合」とは、次の2ケースであるとした。

⑴ 適用が法令等により強制される報告期間よりも前にSSBJ基準を適用することを認めている場合に、企業が自発的に、SSBJ基準のすべての定めに準拠した開示(ただし、別段の定めがあるものを除く)を行うとき(強制適用前のフル適用)

⑵ 前記⑴以外の場合(自発的なフル適用)

そのうえで事務局は、「強制適用前のフル適用」について次のように本公開草案の明確化ならびに変更を提案した。

① 「任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合」の定めは、「強制適用前のフル適用」の場合に適用されないことを明確にする。

② 「サステナビリティ開示基準に従い開示を行うことを要求又は容認する法令に従い開示を行う場合」の経過措置は「強制適用前のフル適用」の場合にも適用されることを明確にする。

③ 「任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行っていた企業が法令に従い開示を行うこととなった場合」の経過措置に関する本公開草案の提案を削除する。

委員からは、「任意開示が強制適用前のフル適用と自発的なフル適用と2つあり複雑なため、一本化しては」という意見も聞かれた。
事務局は、「一本化するとなると強制適用前のフル適用のみとなってしまい、さまざまな経過措置を認めている自発的なフル適用の規定が廃止されることになるため、任意開示の推進につながらない」旨を回答した。


〈旬刊『経理情報』電子版のご案内〉

本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
『経理情報』は、会社実務に役立つ、経理・税務・金融・証券・法務のニュースと解説を10 日ごとにお届けする専門情報誌です。タイムリーに新制度・実務問題をズバリわかりやすく解説しています。定期購読はこちらから

電子版(PDF)の閲覧・検索サービスもご用意!詳細はこちらから


#中央経済社 #旬刊経理情報 #ニュース  #実務 #会計