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【会計】債権のリストラクチャリングに伴う条件変更の会計処理等、検討─ASBJ、金融商品専門委

去る9月7日、企業会計基準委員会は第187回金融商品専門委員会を開催した。金融資産の減損の会計基準の開発に関し、ステップ2で検討する次の論点について、審議が行われた。

■監督当局等から示されたガイダンスやレターの考慮

新型コロナウイルス感染症の影響下で、欧州証券市場監督局などの監督当局等からIFRS9号「金融商品」の適用に係るさまざまなガイダンスやレターが公表されている。これらについて、これまでの議論では、実務上の取扱いの明確化に資するものは取り入れるべきとの意見や、実務の柔軟性を損なう可能性の懸念から、その取扱いには慎重になるべきといったさまざまな意見が聞かれている。
そこで、今回はステップ2で取り入れるべきガイダンス等があるかについて検討が行われた。
事務局はIFRS9号の定めに関する追加的な情報を提供すると考えられるもののうち、IFRS9号の柔軟性を確認するガイダンスとして整理されるものは実務上の困難性を軽減し得るとの分析を示した。コロナ禍を念頭に置いている性質上、そのまま会計基準等に取り入れるべきではないが、その考え方は基準を理解するうえで参考になり得るため、結論の背景などで触れることが考えられるとした。

■債権のリストラクチャリングに伴う条件変更の会計処理

⑴概要

金融資産の契約上のキャッシュ・フローが条件変更される場合について、IFRS9号の「5・4償却原価測定」では次のように定められ、当該金融資産の認識が中止される場合と中止されない場合で会計処理が異なると考えられる。
①認識が中止されない場合
当該金融資産の帳簿価額を、条件変更後の契約上のキャッシュ・フローを当初の実効金利で割り引いた現在価値に修正する(IFRS9号5・4・3項)。減損に関しては、信用リスクの著しい増大(SICR)の有無を当初認識時の債務不履行リスクと比較して評価する必要がある(5・5・12項)。
②認識が中止される場合
条件変更後の資産は、新たな金融資産とみなす(B5・5・25項)。また、SICRが生じていない新たな金融資産または組成した信用減損金融資産として取り扱う(B5・5・26項)。

⑵事務局提案

減損と条件変更は密接に関連すると考えられるものの、条件変更は償却原価測定に関連する定めと位置づけられていることに加え、認識の中止に係る論点とも結びついており、減損というよりは「分類および測定」に関する論点である。そのため、今後の審議において、実効金利法による償却原価測定と条件変更に関して全体的に整合的となることに留意しつつ、分類および測定の取り込み方については事務局から別途提案を行う。
専門委員からは「日本の実務では条件変更のレベル感により格付けや引当金が異なるため、取り入れ方によっては引当水準にも大きな影響が生じるのではないか」との懸念が示された。事務局は「その点も考慮して検討していきたい」と回答した。


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