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【会計】信用リスクを見積る期間、検討─ASBJ、金融商品専門委

去る6月13日、企業会計基準委員会は第182回金融商品専門委員会を開催した。金融資産の減損の会計基準の開発に関し、前々回(2022年6月1日号(No.1645)情報ダイジェスト参照)示されたステップ2で優先して検討する論点のうち、信用リスクを見積る期間について、検討された。

■ 事務局提案

⑴ ECLモデル(IFRS基準)での取扱い

IFRS9号「金融商品」における予想信用損失の見積期間は次のように定められている。

(前略)金融商品のすべての契約条件(例えば、期限前償還、期限延長、コール及び類似のオプション)を当該金融商品の予想存続期間を通じて考慮することによって行わなければならない。…(中略)…金融商品の予想存続期間は信頼性をもって見積ることができるという推定がある。しかし、金融商品の予想存続期間を信頼性をもって見積ることが可能でない稀な場合においては、企業は当該金融商品の残存契約期間を用いなければならない。(IFRS9号付録Aの信用損失の定義)

なお、予想存続期間が12カ月未満である場合には、予想存続期間はその短い期間となる(IFRS9号B5・5・43項)。また、予想信用損失を測定する際に考慮すべき最長の期間は、企業が信用リスクに晒される最長の契約期間(延長オプションを含む)であり、たとえそれより長い期間を考慮することが事業慣行と整合する場合でも、その長い期間を考慮しない(IFRS9号5・5・19項)。
ステップ2では、前記の予想存続期間を見積期間とするIFRS9号の定めをそのまま取り入れることとするが、一定の信用枠(ローン・コミットメント)に係る信用リスクの見積期間についてはステップ3で取り扱う。また、ステップ4では議論の展開次第で別途検討を行う。

⑵ 日本基準との違い

IFRS9号の定めを取り入れる場合、債権(または債権グループ)ごとに予想存続期間を見積るために、次のデータが必要となり得る。

① 債権ごとの残存契約期間
② 期限前償還、期限延長、コールおよび類似のオプションの影響の考慮

①については、企業が有する債権ごとの契約期日データに基づき算出可能であると考えられる。②については、特に期限前返済率の将来に関する見積りに係るデータやモデル整備に相応の負担が生じる可能性がある。
しかし、期限前返済率による金融資産の存続期間は、実務上、リテール向け貸付金(特に住宅ローン)で影響が大きい一方、(ⅰ)ホールセール向け貸付金では契約上の返済スケジュールに従った支払が行われ予想存続期間と残存契約期間が近似するケースが多く、金融機関の業種や融資ポートフォリオの構成などによっては予想存続期間の見積りに係る負担がそれほど生じ得ない、(ⅱ)住宅ローン等においても12カ月ECLと全期間ECLを使い分ける2区分モデルの特徴により、引当においては期限前返済の影響が限定される可能性がある、などといった理由から、実務上の困難さにつながる負担があるとは限らないと考えられる。

■ 専門委員の意見

専門委員からは「現行制度と大きく異なるため、実務上の影響を慎重に検討すべき」、「予想存続期間が1年未満の場合も契約期間で見積ることは、実務上かなりの負担になり得るため、この点は取り入れなくてもよいのではないか」といった意見が聞かれた。事務局は「あらためて検討する」とした。


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