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旬刊『経理情報』2023年12月1日号(通巻No.1695)情報ダイジェスト/会計


【会計】ファイナンス・リースの貸手における会計処理等、議論─ASBJ、リース会計専門委

去る11月13日、企業会計基準委員会は第137回リース会計専門委員会を開催した。
第136回(2023年11月20日号(No.1694)情報ダイジェスト参照)に引き続き、企業会計基準公開草案73号「リースに関する会計基準(案)」等に寄せられたコメントへの対応の方向性と個別事項について、審議が行われた。

■開発にあたっての基本的な方針(貸手の会計処理)

公開草案では、所有権移転外ファイナンス・リースおよび所有権移転ファイナンス・リースの貸手における基本となる会計処理について、リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法(以下、「第2法」という)を廃止することを提案していたが、これに対して、「有報提出会社を含めすべてのリース会社は、少なくとも個別財務諸表においてはリースに係る収益の認識として適切な第2法の会計処理を採用していることから、第2法の会計処理の廃止に対応するためのシステム変更に多額のコストを要することとなる」とのコメントが寄せられていた。
事務局は、「第2法を採用していた企業においては、会計処理に関する一定のコストが生じる可能性があると考えられるが、第3法(売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法)に変更することによるコストは限定的になると考えられる」と事務局案を変更しない旨のコメント対応案を示した。
専門委員からは「国際的な比較可能性については十分理解できるが、リース業界からするとコストだけがかかり、特段のベネフィットがない。コストは限定的という回答があったが、第2法から第3法に会計処理を変更するにあたって生じるシステム変更などのコストは相応にあり、すべてのリース会社に関係してくる」との意見が聞かれた。事務局は、「コストがまったくかからないとは思っていないが、新たな規定を導入することに比べれば限定的だと考えられる」とした。

■他の会計基準等との関係(鉱物、石油、天然ガス及び類似の非再生資源の炭鉱又は使用のリース)

公開草案では、現行の企業会計基準13号等の適用範囲を基礎として検討を行っていたこと、また、関係者からの指摘がなかったことから、「鉱物、石油、天然ガス及び類似の非再生資源の炭鉱又は使用のリース」については、適用範囲から除外する提案をしていない。これに対し、コメント提出者からは、次の2つのいずれかを要望するというコメントが寄せられていた。

⑴ 本会計基準案3項から「鉱物、石油、天然ガス及び類似の非再生資源の探鉱又は使用のためのリース」を除外する。
⑵ 鉱業権を国から賦与される取引は、本会計基準案が定める、リースに該当しない旨を明示する。

事務局は、国際的な会計基準との整合性を図ることから⑴を事務局案として示した。
専門委員からは賛意が聞かれた。

【会計】日本版S1・S2基準の開発、GHG排出関連、検討進む─SSBJ


去る11月2日、SSBJは第24回サステナビリティ基準委員会を開催した。
第23回(2023年11月10日号(No.1693)情報ダイジェスト)に引き続き、IFRS S2号に相当する日本基準の開発の審議が行われた。
審議された具体的な検討事項は主に次のとおり。

■スコープ2温室効果ガス排出におけるロケーション基準とマーケット基準

日本版S2基準において、IFRS S2号の定めを取り入れ、細かい用語の定義を追加することによって、よりわかりやすいものとする。
また、IFRS S2号において、「一般目的財務報告書の主要な利用者がスコープ2温室効果ガス排出を理解する上で必要な契約証書を報告企業が有する場合、ロケーション基準による開示に加えて、当該契約証書に関する情報を開示しなければならない」との定めに対し、事務局は、「この開示は、マーケット基準による測定が困難であるために代替案として導入されたものと考えられる」とし、わが国ではマーケット基準による測定が可能である場合も想定されることから、IFRS S2号に追加する日本基準独自の定めとして「マーケット基準により測定したスコープ2温室効果ガス排出を開示することをもってロケーション基準による開示に加えて、当該契約証書に関する情報に代えることができる」とする案を示した。
委員からは、おおむね賛意が聞かれた。一方で、「契約証書に関する情報の開示とあるが、その『情報』はどこまで求めるのか」という懸念の声も聞かれた。
事務局は「同じ懸念は各所から聞かれているため、限定的にここまでの記載を求めるといった事項を結論の背景に追記するか検討する」と回答した。

■温室効果ガス排出の測定方法の開示

日本版S2基準において、IFRS S2号の定めを取り入れる。
また、事務局は温室効果ガス排出の測定方法について次のような案を提示した(太字は、IFRS S2号から変更した部分)。

 ⑴ 温室効果ガス排出の測定にあたり、「温室効果ガスプロトコルの企業算定及び報告基準(2004年)」(以下、「GHGプロトコル(2004)」という。)に従い、報告企業が使用する測定アプローチを選択した場合、次の事項を開示しなければならない。      
(略)
⑵ 温室効果ガス排出の測定にあたり、法域の当局又は報告企業が上場する取引所が、GHGプロトコル(2004)とは異なる方法に従うことを報告企業に要求し、かつ、報告企業がその異なる方法に従い測定した温室効果ガス排出を開示することを選択する場合、次の事項を開示しなければならない。      
(略)
⑶ 報告企業が経過措置を適用して温室効果ガス排出を開示する場合にも、⑵と同様の開示を行わなければならない。
⑷ スコープ1温室効果ガス排出、スコープ2温室効果ガス排出及びスコープ3温室効果ガス排出の測定に関する次の事項を、それぞれ開示しなければならない。
(ア) 直接測定
温室効果ガス排出を測定するために使用した排出量に関する情報及び測定にあたって企業がおいた仮定
(イ) 見積り
温室効果ガス排出を測定するために使用した活動量及び排出係数に関する情報並びに測定にあたって企業がおいた仮定 

⑶の経過措置に関して、委員からは「⑵と同様の開示をしなければいけないとあるが、⑵に限定してしまってよいのか」という意見が聞かれた。
事務局は、「経過措置は基本的にGHGプロトコルとは別の測定をした場合のことを想定しているため、⑴については現状、求められていない」と回答した。
また、⑷の測定に関する開示の見積りについて、委員からは、「マーケットベースの排出量を開示している場合において海外の排出量も含めている場合に、その排出係数についても説明したほうがいいのでは」という意見が聞かれた。
事務局は「どういった開示のしかたが適切なのか検討する」と回答した。

■スコープ3測定フレームワーク

日本版S2基準において、IFRS S2号の定めを取り入れる。概念の定義や説明部分が混在し重複している部分については整理したうえで一部言葉を置き換え、要求事項部分をS2基準本文に取り入れるとともに、説明部分を規範性のあるガイダンスとしてS2基準の別紙に取り入れることなどを提案している。
委員からは、「直接測定や1次データを『優先しなければならない』という規定が出てくるが、これは努力目標か、多少難しい場合においても直接測定や1次データが求められているのか」といった意見が聞かれた。
事務局は「直接測定と見積りがあったら直接測定が優先される、1次データと2次データがあったら1次データが優先されるという趣旨。何と比較して優先すべきなのかがわかる記載方法のほうが理解しやすいのであれば検討したい」と回答した。


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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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