【会計】電子決済手段の預託の会計上の取扱い、検討─ASBJ、実務対応専門委
去る2022年12月20日、企業会計基準委員会は第153回実務対応専門委員会を開催した。
第152回(2022年12月10日号(No.1663)情報ダイジェスト参照)に引き続き、資金決済法上の「電子決済手段」の発行・保有等に係る会計上の取扱いについて審議された。
■電子決済手段の預託の会計上の取扱い
事務局の分析は次のとおり。
⑴仲介者等が利用者から預かった電子決済手段を信託する場合の会計処理の分析
仲介者等が顧客から預かった電子決済手段を信託する場合、信託法により信託財産である電子決済手段の独立性が確保されている。そのため、現行の信託会社等の会計実務と同様に、受け入れた仲介者等は電子決済手段を貸借対照表に計上しないことが考えられる。
⑵仲介者等が預かった電子決済手段を自己で管理する場合の会計処理の分析
仲介者等が預かった電子決済手段を自己で管理する場合、仲介者等が顧客から預かった電子決済手段は私法上の位置づけが必ずしも明らかであるとはいえない。電子決済手段を有する者には償還請求権があるのに対し、資金決済法上の暗号資産を有するものには、通常、償還請求権はない。ここでいう償還請求権が誰(顧客または仲介者等)に帰属するかは必ずしも明らかではないと考えられる。
これを前提とすると、電子決済手段と資金決済法上の暗号資産との間に重要な相違点はなく、仲介者等が顧客から預かった電子決済手段を自己で管理する場合、会計処理として「預かった電子決済手段を預かった現金(および資金決済法上の暗号資産)と同様に、仲介者等の貸借対照表に計上する方法」を採用することが考えられる。
■事務局の提案
前記を踏まえ、次の事務局案を示した。
①仲介者等が顧客から預かった電子決済手段を信託とする扱いとなる場合、仲介者等は当該電子決済手段を貸借対照表に資産計上しない。
②仲介者等が顧客から預かった電子決済手段を自己で管理する扱いとなる場合、仲介者等は当該電子決済手段を貸借対照表に資産計上(見合いの負債との両建て計上)する。
③①の場合、仲介者等が顧客から預かった電子決済手段の合計額や見合いの義務に関する注記を行わない。
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専門委員からは、「制度設計が落ち着いてから議論を進めるべき」といった、前提がないなかで会計処理を想定することへの懸念を示す意見が複数聞かれた。事務局は「関連する内閣府令案やガイドライン案が公表された段階で、事務局内で再度検討のうえ、修正すべき点等をあらためて審議していただきたい」と回答した。
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