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旬刊『経理情報』2023年10月10日号(通巻No.1690)情報ダイジェスト



【会計】四半期報告書制度の見直しに関する検討、開始─ASBJ

去る9月21日、企業会計基準委員会は、第510回企業会計基準委員会を開催した。
主な審議事項は次のとおり。

■四半期報告書制度の見直し

昨年12月に公表された金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループ報告で、第1・第3四半期について、金融商品取引法上の開示義務を廃止し、四半期決算短信に一本化する等の方向性が示され、法改正が秋の臨時国会で予定されている。
これを受けて事務局から、四半期報告書廃止後に必要となる、新たな半期報告書作成のための会計基準の検討を行う方針である旨が示された。
この点、金融庁企業開示課長から法改正の方向性等の説明がなされ、「法定の会計期間の6カ月を前提に、半期報告書作成のための会計基準を検討していただきたい」との発言があった。
その後の質疑では、委員から「半期報告書の期間は6カ月であり、四半期決算短信の1Q・3Qは3カ月となる。開示期間の齟齬はどう考えているのか」との質問に、企業開示課長から「現行実務と変わらないよう、実務的な影響が最小限となる基準開発をお願いしたい」との回答があった。
事務局からも、法改正前ではあるが、すべての企業に適用する6カ月の半期報告書に関する会計基準の開発のための検討を始めていく旨が示された。

■パーシャルスピンオフの会計処理

第109回企業結合専門委員会(2023年10月1日号(No.1689)情報ダイジェスト参照)に引き続き、パーシャルスピンオフの会計処理について、審議された。
前回専門委員会での意見を踏まえた修正文案が示された。また、日本公認会計士協会が公表する会計制度委員会報告7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針(案)」について、ASBJが公表する公開草案の「公表にあたって」に追加する参考資料の文案も示された。
委員からは、特段の異論は聞かれなかった。
次回の親委員会で公表議決を行う予定。

■JICPA公表の実務指針等の移管

6月20日に公表された「日本公認会計士協会が公表した実務指針等の移管に関する意見の募集」に寄せられたコメントへの対応について審議された。
意見募集文書の方向性を支持しないコメントとして、「業種別委員会の実務指針等についても本移管プロジェクトの対象とすべき」との意見が寄せられており、事務局から「ASBJは特定の業種を対象とした会計基準の開発は行わないこととしている」とのコメント対応案が示された。
委員からは賛成意見が多く聞かれた。

【会計】改正リース会計基準の個別検討事項、検討開始─ASBJ、リース会計専門委

去る9月20日、企業会計基準委員会は第133回リース会計専門委員会を開催した。
第132回(2023年10月1日号(No.1689)情報ダイジェスト参照)に引き続き、企業会計基準公開草案73号「リースに関する会計基準(案)」等に寄せられたコメントへの対応の方向性および個別検討事項について、審議が行われた。
また、9月21日開催の第510回親委員会でも同テーマについて議論された。

■適用時期に関するコメント

適用時期に関する定めについて、「最低でも3年程度の準備期間を設けるべきである」といったコメントが寄せられた。
専門委員からは「適用時期の延長を求めるコメントがきているが、グループが多く連結上の集計が大変で調整に時間がかかる等、どういう問題の背景でこういうコメントがきているのか整理しないとまとめられないのでは」という意見が聞かれた。
事務局は、「時間がかかる理由はいくつもあると考えられるので、適用時期の延長については、公開草案を最終化する前にもう一度取り上げたい」とした。

■開発にあたっての基本的な方針(借手の会計処理)

事務局は公開草案に寄せられたコメントのうち個別検討事項とした、借手の会計処理に関する「開発にあたっての基本的な方針」における次の論点について、検討を開始した。

⑴ 2区分の会計処理モデルの選択適用 

会計処理モデルについての定めについて、「わが国のリース会計基準の開発において、IFRSを基本とするのは適切であるが、米国基準もIFRSも、どちらも国際的な会計基準であることを勘案して、企業が『2区分の会計処理モデル』の費用処理が実態にあっていると判断するのであれば、その選択肢を用意することも考えられる」とのコメントが寄せられていた。
事務局は「利点はあるものの、弊害の影響が大きいと考えることから、2区分の会計処理モデルの選択適用は認めない」との案を示した。
専門委員からは、「結論は変わらないとしても納得できる説明を」との声が聞かれた。
第510 回親委員会では、「比較可能性を損なうので、選択適用すべきではない」と事務局案への賛成意見が聞かれた。

⑵ IFRS16号「リース」と同じ定めを取り入れるべきとの意見

IFRS16号に関する定めについて、実務負担や国際的な比較可能性の観点から、「原則として代替的な取扱いは定めず、IFRS16号の定めに合わせることを要望する」とのコメントが寄せられていた。
事務局は、「国際的な比較可能性を損なわない範囲で代替的な取扱いを定めているため、比較可能性を大きく損なうとはいえないと考えている。また、一定数の代替的な取扱いを定めたとしても、IFRS16号と同様の会計処理を行うことは可能であるため、実務負荷が必ずしも生じるわけではない」とした。
専門委員からは賛意が聞かれた。

【会計】電子決済手段の実務対応報告案のコメント対応、検討─ASBJ、実務対応専門委

去る9月20日、企業会計基準委員会は第160回実務対応専門委員会を開催した。
前回(2023年9月20日号(No.1688)情報ダイジェスト参照)に引き続き、実務対応報告公開草案66号「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い(案)」等へのコメント対応について、審議が行われた。
また、9月21日開催の第510回親委員会でも同テーマについて議論された。

■預託電子決済手段に関するコメント

公開草案では、電子決済手段の取引業者または発行者と利用者との合意に基づき、利用者から預かった電子決済手段を資産計上しないとしているが、資産計上している暗号資産の従前の会計実務との比較において補足説明を求めるコメントが寄せられていた。
これに対して、法律上の権利の移転に係る事実および状況が異なっており、必ずしも統一的な考え方に基づき判断されているものではないため、判断基準の明確化はできないとのコメント対応案が示されていた。
この対応案に対し、前回の親委員会や専門委員会で、「暗号資産については、実務対応報告38号における説明の追加が必要」、「法律上の権利の移転に関する状況が異なるとの記載に関して、法律上の財産権の移転に相違があるように読み取れてしまい、必ずしも預託電子決済手段と暗号資産に違いがあるとはいえないのでは」との意見が聞かれていた。
これらを踏まえ、対応案の要旨のみを示す修正案が示された。
専門委員からは、「預託と自己保有が区別できない暗号資産の同一性と、区別できる電子決済手段の個別性といった観点から、コメントへの回答はできないか」との質問に対し、「実務対応報告等の一部を切り取って説明することは難しく、ミスリードする可能性がある」との回答があった。

■表示に関するコメント

BS上の表示は「現金及び預金」に含めることを明確化すべきとのコメントに対して、前回の専門委員等の意見をもとに、次のような修正案が示された。

本公開草案では、「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」における資金の範囲及び現金の定義を改正し、キャッシュ・フロー計算書上、本実務対応報告の対象となる電子決済手段を現金に含めることを提案している。一方、我が国の会計基準では、貸借対照表上の現金及び預金の範囲を定めておらず、貸借対照表上は、重要性も踏まえ、その性質を示す適切な科目で表示することとなると考えられるがどうか。

専門委員からは「現金及び預金に含めるかどうか、会計基準で定める考え方もあるのではないか」との意見が聞かれた。事務局から「現金及び預金に含めるか否かさまざまな意見が聞かれており、最小限の取扱いを行う方針」との回答があった。
第510回親委員会でも、「BS上の現金及び預金の範囲を検討するのに相当時間がかかる旨の説明を入れては」との意見も聞かれた。

【会計】日本版S1・S2基準の開発、GHG関連の事項等、検討─SSBJ

去る9月19日、SSBJは第21回サステナビリティ基準委員会を開催した。
第20回(2023年10月1日号(No.1689)情報ダイジェスト参照)に引き続き、IFRS S1号よびIFRS S2号に相当する日本基準の開発の審議が行われた。
審議された具体的な検討事項は主に次のとおり。

■ガバナンス

日本版S1基準・S2基準において、それぞれIFRS S1号・S2号を取り入れる。
事務局は、「S1、S2号の根幹にかかわるところであるため、内容の変更は考えておらず、理解しやすい文言について議論いただきたい」と前置きした。
専門委員からは異論は聞かれず、文言の表現について議論が行われた。

■温室効果ガス排出の3つのスコープ

日本版S2基準において、IFRS S2号における次の用語の定義を、日本版S2基準に取り入れるとした。

⑴  温室効果ガス
⑵  地球温暖化係数
⑶  CO2相当量
⑷  間接的な温室効果ガス排出
⑸  スコープ1温室効果ガス排出
⑹  スコープ2温室効果ガス排出
⑺  スコープ3温室効果ガス排出
⑻  スコープ3カテゴリー

また、「温室効果ガスプロトコルの企業算定及び報告基準(2004年)」(以下、「GHGプロトコル」という)における定義を踏まえ、次の用語を日本版S2基準の用語の定義に含めるとした。

「直接的な温室効果ガス排出」とは報告企業が所有または支配する排出源から生じる温室効果ガスの排出をいう。

■GHGプロトコルの測定アプローチ

IFRS S2号では、GHGプロトコルに従い①持分割合アプローチ、②経営支配力アプローチまたは③財務支配力アプローチのいずれかを用いることを要求している。しかし、IFRSS2号では用語の定義がされていないため、GHGプロトコルを参考に、①〜③のアプローチの用語の定義を日本版S2基準において定めることとした。
また、次の事項を日本版S2基準において定めるとした。

報告企業の親会社は、報告企業に含める温室効果ガス排出の範囲を決定する方法について、前記①〜③のうち1つを選択しなければならない。

■スコープ1およびスコープ2の温室効果ガス排出の分解

日本版S2基準において、IFRS S2号を取り入れ、次のことを定める。

スコープ1温室効果ガス排出及びスコープ2温室効果ガス排出について、連結会計グループに関するものとその他の投資先に関するものとに分解して開示しなければならない。

また、次の事項を日本版S2基準の規範性のあるものとして定めるとした。

「連結会計グループ」には、親会社とその連結子会社が含まれ、「その他の投資先」には、関連会社、共同支配企業および非連結子会社が含まれる。


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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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