【監査】内部統制基準および実施基準、公開草案を公表へ─企業会計審議会内部統制部会
去る2022年12月8日、金融庁・企業会計審議会は、第24回内部統制部会(部会長:橋本尚・青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科教授)を開催した。これまでの審議を踏まえ、事務局から次のような「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の実施基準」の改訂案および改訂に関する前文案が示された。
■内部統制の基本的枠組み
経営者による内部統制の無視ないし無効化への対策として、適切な職務の分掌や内部統制の整備・運用に対する取締役会による監督等が挙げられる。
内部統制に関係を有する者の役割と責任として、監査役は、内部監査人や監査人等との連携、能動的に情報を入手すること等が重要である。
内部監査人は、熟達した専門的能力と専門職としての正当な注意をもって職責を全うすること、取締役会および監査役等への報告経路を確保すること等が重要である。
内部統制とガバナンスおよび全社的なリスク管理は、一体的に整備および運用されることが重要であり、その考え方として3線モデル等が挙げられる。
■財務報告に係る内部統制の評価および報告
経営者が評価対象とする重要な事業拠点や業務プロセスの選定にあたって、「売上高等の概ね3分の2」や「売上、売掛金及び棚卸資産の3勘定」の例示を機械的に適用すべきではない。
監査人による指導的機能の発揮の一環として、評価範囲に関する監査人との協議を必要に応じて実施することが適切である。
ITを利用した内部統制に関して、経営者は全般統制と業務処理統制の両方を評価する。また、これらの評価はIT環境の変化を踏まえて行うべきであり、実施頻度につき、特定の年数を機械的に適用すべきではない。
■財務報告に係る内部統制の監査
監査人は実効的な内部統制監査を実施するために、監査証拠の活用や経営者との適切な協議を行うことが重要である。また、監査人が監査の過程で経営者による内部統制評価の範囲外から内部統制の不備を識別した場合には、必要に応じて経営者と協議することが適切である。
■内部統制報告書の訂正時の対応
訂正内部統制報告書において、具体的な訂正の経緯や理由の開示を求めるために、関係法令について所要の整備を行うことが適当である。
■今後の課題
ダイレクトレポーティングの採用や非財務情報の取扱い、罰則規定の見直し等については、中長期的な課題とする。
■適用時期
2024年4月1日以後に開始する事業年度における財務報告に係る内部統制の評価および監査から適用する。なお、本改訂に伴い、今後関係法令等に関して所要の整備が行われる予定。
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委員からはおおむね同意が得られたが「企業側の十分な準備のためにも本改訂の浸透に努めてほしい」との意見があった。今後事務局にて修正のうえ、公開草案を公表し意見募集を行う。コメント期間は1カ月の予定。
追記(2022年12月16日)
なお、企業会計審議会内部統制部会は12月15日に「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(公開草案)」を公表した。コメント期限は2023年1月19日(木)。
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