旬刊『経理情報』2024年6月10日号(通巻No.1712 )情報ダイジェスト/会計・金融
【会計】中間会計基準公表後の課題、検討─ASBJ
去る5月22日、企業会計基準委員会は、第526回企業会計基準委員会を開催した。
主な審議事項は次のとおり。
■四半期報告書制度の見直しへの対応
「中間財務諸表に関する会計基準」等の公開草案公表時に、今後、中間会計基準等と四半期会計基準等を統合した(仮称)期中財務諸表に関する会計基準等の開発を検討する方向性について、意見募集していた。寄せられた意見を踏まえ、今後検討予定としている。
また、中間会計基準等では、短期的な対応として、他の会計基準等の改正または修正について読み替える取扱いを定めていた。しかし、他の会計基準の改正または修正については用語への置換え等で対応することが一般的であるため、追加的な検討を行うことが考えられる。
これらの残された課題への今後の検討方針について、事務局から次のように提案された。
委員からは異論は聞かれなかった。
【会計】VCファンドへの出資に関する注記、検討─ASBJ、金融商品専門委
去る5月16日、企業会計基準委員会は、第218回金融商品専門委員会を開催した。
主な審議事項は以下のとおり。
なお、5月22日開催の第526回親委員会でも同テーマについて審議された。
■ベンチャーキャピタル(VC)ファンドの出資持分
第525回親委員会(2014年6月1日号(No.1711)情報ダイジェスト参照)に引き続き、組合等の会計処理について審議された。今回は、組合への出資に関する開示(注記事項)に関して審議された。
⑴ 時価評価オプション適用時の注記
時価評価(評価差額がOCI)するオプションを適用した場合に関して、次の注記を行う提案が示された。
専門委員からは、①②への賛成意見が多く聞かれ、③は「一部の現行では求められていない開示について、分類・測定の議論で対応を」との意見が聞かれた。
第526回親委員会でも、①②への賛同意見が聞かれ、③については「取得原価の超過で区分するのでなく総額で」との意見が聞かれた。
⑵ 算定された時価の信頼性の対応
事務局は、次のアプローチを示し、どちらを選好するか委員に意見を求めた。
専門委員から「レベル別の開示を求めるのは過度な負担では」など、②に賛同する意見が多く聞かれた。
第526回親委員会でも、②を支持する意見が聞かれた。
■金融資産の減損
第523回親委員会(2024年4月20日号(No,1708)情報ダイジェスト参照)に引き続き、ステップ4(信用リスクに関するデータの詳細な整備がなされていない金融機関に適用される会計基準の開発)を採用する金融機関における債権単位での信用リスクの著しい増大(SICR)の判定における「正常先のうち低い内部信用格付区分」の取扱いについて審議が行われた。
前回、アプローチの1つとして「『企業が受け入れる最大当初信用リスク』として企業が自ら設定した閾値を超える予想デフォルト率(PD)となっている内部信用格付区分を『正常先のうち低い内部信用格付区分』として位置づけ、当該内部信用格付区分に含まれる債権等についてSICRが生じているという反証可能な推定規定を設ける」が提案された。
委員から、「多くの中小金融機関ではPDを算定しないので、実務上困難」などの意見が聞かれ、これを踏まえて次の再提案が示された。
また、貸倒実績率を活用することを提案する意見に対して、担保価値や担保処分等により回収分を含めて算出される貸倒実績率の活用は難しいとの分析が示された。
専門委員からは「企業に委ねられるので適用しやすい」との賛意が聞かれた一方、「貸倒実績率は工夫して基準等に取り込めないか」との意見が複数聞かれた。
第526回親委員会でも、事務局案に賛成意見が聞かれたが、貸倒実績率の活用については、「国際的にない概念」など、否定的な意見が聞かれた。
【会計】借地権の残存価額の設定、容認の方向に─ASBJ、リース会計専門委・企業結合専門委
去る5月21日、企業会計基準委員会は第149回リース会計専門委員会を開催した。前回(2024年6月1日号(No.1711)情報ダイジェスト参照)に引き続き、企業会計基準公開草案73号「リースに関する会計基準(案)」等に寄せられたコメントへの対応の方向性と個別事項について、審議が行われた。
なお、5月22日開催の第526回親委員会でも同テーマについて審議された。
■借地権の設定に係る権利金等に関する取扱い
公開草案では、借地権の設定に係る権利金等は使用権資産の取得価額に含め、原則として、借手のリース期間を耐用年数とし、減価償却を行うことを提案している。ただし、非償却を認める例外規定も提案していた。
この点について、主に次のようなコメントが寄せられ、事務局から対応案が示された。
⑴ 借地権の設定に係る権利金等を償却するかどうか
次のコメントが寄せられた。
事務局は、さまざまな考え方があるとしながらも、公開草案を変更しない旨を再提案した。
専門委員からは、「使用権資産に含める場合も、無形固定資産として会計処理を行う場合もそれぞれ合理性があるが、どちらかに一本化することが望ましい」などの意見が聞かれた。事務局は「どちらかに決めてしまうのが一番よいが、非償却とすべきというコメントもあり、難しい」と回答した。
第526回親委員会では事務局案に異論は聞かれなかった。
⑵ 借地権の残存価額の設定
「借地権の残存価額の設定を認めるべき」との意見に関しては、取引慣行がさまざまであるなかで借手のリース期間の終了時に予想される売却価額を合理的に見積ることができるかどうかに難しさがあり、また、仮に残存価額を設定する場合、毎期見直すことになるが、それには相応のコストが発生することから、事務局は次の2案を提案した。
専門委員からは案2への賛意が多く聞かれた。
第526回親委員会でも、案2を支持する意見が聞かれた。
■セール・アンド・リースバック(S&LB)取引
事務局は、S&LB取引に関連し、資産の譲渡が企業会計基準29号「収益認識に関する会計基準」等により売却に該当しない場合の取扱いに関して、現行の転リース取引におけるS&LB取引に係る取扱い(リース適用指針50項なお書き)を踏襲し、収益の認識の要件を次のとおり整理することを提案していた。
これに対して、専門委員からは、「転リース取引にはさまざまな取引が存在するため、転リース取引のすべてが仲介であるかのような整理は誤解を生じさせる可能性がある」などの意見が聞かれていた。
そこで、事務局はあらためて検討し、50項なお書きの定めをそのまま踏襲するのではなく、「資産の譲渡に係る売却益相当額の損益計上について、転リース取引の例外的な会計処理に補足する形で定めを置く」のはどうかと提案した。
専門委員からは「50項なお書きを引き継がないことも検討しては」などの意見が聞かれた。
第526回親委員会では、賛成意見が聞かれた。
■現行の結合分離適用指針の簡便的な取扱いを踏まえた検討
5月20日開催の第115回企業結合専門委員会では、引き続きリース会計基準改正に伴う結合分離適用指針の改正案に関する検討が行われた。
第522回親委員会等(2024年4月10日号(No.1707)情報ダイジェスト参照)において、現行の結合分離適用指針で認められている簡便的な取扱いに関してIFRS3号「企業結合」と同様の取扱いを定めることに賛意が聞かれたが、「企業結合時の取得原価の配分において重要性がないと認められる範囲内で簡便的に時価を算定する実務が浸透していると考えるため、現行の取扱いに対する追加的な取扱いとする定め方も検討しては」との意見が聞かれていた。
そこで事務局は、次の3つの案を示し、案3を事務局案とした。
専門委員からは案3に賛意が聞かれたものの、文案の表現については工夫を求める意見が聞かれた。
第526回親委員会でも、案3に同意する意見が聞かれた。
【金融】2029年3月期から時価総額5,000億円以上の企業も義務化へ─金融審議会サステナ情報開示・保証WG
去る5月14日、金融庁は第2回金融審議会サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ(座長:神作裕之・学習院大学大学院法務研究科教授)(以下、「WG」という)を開催した。
■SSBJ基準適用企業の拡大とその適用時期
前回(2024年4月20号(No.1708) 情報ダイジェスト参照)の会議では、時価総額1兆円以上の企業にSSBJ基準を適用する時期の検討をしていたが、委員からは「対象を拡大すべき」との声が聞かれていた。
そこで事務局は前回提案された案1をベースに新たに時価総額5,000億円以上の企業にも順次適用する事務局案を提示した(太字が新規提案事項)。
委員からは賛意の声が聞かれた。
■SSBJ基準の導入による開示タイミング
現在、日本企業の多くは有報の開示の2~3カ月後に、詳細なサステナビリティ情報が記載された統合報告書を公表しており、財務諸表とサステナビリティ情報の同時開示を求めているISSB基準やSSBJ基準とのタイミングの違いが問題となっていた。
事務局は義務化初年度において、有報への開示が間に合わない場合は半期報告書等による開示を可能とする2段階開示を許容し、2年目以降は有報における同時開示(ただし、基準に準拠した開示を保証付きで行う場合には、法改正による提出期限の延長(たとえば、事業年度後4カ月)なども検討する)とすることはどうかと提案した。また、有報は総会前に提出されることが望ましいとした。
委員からは、2段階開示や有報における同時開示自体についておおむね賛意が聞かれたものの、有報の総会前提出については「有報の提出期限を4カ月に延長すればよいという問題ではなく、株主総会との関連性をもって議論するべき」など、金商法の改正だけではなく、会社法なども含めた議論を行うべきとの意見が聞かれた。
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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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