【会計】SICR判定時の担保の考慮等、検討─ASBJ
去る9月6日、企業会計基準委員会は、第486回企業会計基準委員会を開催した。
金融資産の減損に関して、第186回金融商品専門委員会(2022年9月10日号(No.1654)情報ダイジェスト参照)に引き続き、次の論点について、議論が行われた。
■信用リスクの著しい増大(SICR)の判定時における担保の考慮
専門委員会で、有担保の債権と無担保の債権ではリスク特性が異なるものとしてグルーピングされる認識で正しいか等の意見が聞かれ、検討が行われた。
⑴事務局分析・提案
IFRS9号「金融商品」では、SICRの評価において、十分に担保が保全されていることによりデフォルトが発生したとしても損失が発生しない見込みであることは勘案されない。また、金融収益の認識と予想信用損失を別々に考慮しており、担保の有無による当初の信用スプレッドの違いはデフォルト・リスクの変動には関連せず、SICRの評価では考慮されない。
この点に関して、わが国の銀行等金融機関では、基本的には債務者ごとに信用リスクを管理し債務者区分を基礎に引当を行っており、担保の有無は債務者区分に反映されていないため、担保の価値をSICRの評価において考慮しないことに関して一般的には実務上の困難はないとの分析が示された。
この分析を踏まえ、事務局から、本論点について特段の対応を行わないとの提案がされた。
⑵委員の意見
委員からは「実務と整合的」など賛成意見が多く聞かれた。
■信用リスクが増大した場合の利息収益の認識方法
専門委員会で、IFRS9号は、信用リスクが増大した場合の利息収益の認識について、金融資産の総額での帳簿価額から損失評価引当金を控除した純額に対して実効金利を適用して算定することを要求しているが、日本基準や米国基準の取扱いと異なっており、追加的論点として取り上げてほしいとの意見が聞かれ、検討が行われた。
⑴事務局分析・提案
IFRS9号では実効金利法による償却原価を前提とした利息収益の算定と予想信用損失の算定が連携していることから、債権の測定(実効金利法による償却原価測定)に関する取扱いと密接に関連している。
一方、日本基準では、元本と利息を区別し、利息収益を元本に対する約定利息の回収として捉えており、債務者の信用が悪化した場合、元本に対する回収不能見込額を貸倒引当金として計上しつつ、利息に関しては一定の条件を満たした場合に利息不計上の取扱いがなされている。
これらを踏まえ、本論点は分類・測定において実効金利法による償却原価測定を採用するかどうかに関わるため、「貨幣の時間価値の考慮」(2022年8月10日号(No.1652)情報ダイジェスト参照)とあわせて引き続き検討する案が示された。
⑵委員の意見
委員から、特段の異論は聞かれなかった。また、事務局から、ステップ2で取り上げる論点をすべて検討した後に、本論点を検討するとの方向性が示された。
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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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