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ゼロから始める事業立上げ 財務モデリングを超シンプルに!|【連載】データ分析のログハウス(第5回)

~旬刊経理情報連載
「データ分析の森」ガイドマップ 番外編~

こんにちは。中央経済社「旬刊経理情報」編集部です。
本誌では『「データ分析の森」ガイドマップ』を連載中。DXやリスキリングなどで注目される「データ分析」について、その具体的な中身や取り組み方などをやさしく丁寧に解説していただいています。
このnote連載では、本誌連載では書ききれなかった、主にデータ分析に関わるキャリアや事業について、ざっくばらんにひもといていただきます。
第5回は架空の事例をもとに、実際に財務モデリングを作ってみます!

みなさん、こんにちは。
遠藤武(えんどう・たける)です(著者紹介はこちら)。

おやおや?
おたんさん、今日はパソコンに向かってExcelファイルを操作していますね。

おたん(データ分析に興味がある悩める大学生):
遠藤さん! 
実は財務モデリングについて考えているんです。というのも、『旬刊経理情報』の遠藤さんの連載記事は、FP&Aや財務モデリングを、超基礎から始めてFCF(フリー・キャッシュ・フロー)に行き着くまで扱っていますよね。
 私も遠藤さんの本誌連載を読むことで、少しずつモデリングの理解が進んできました!

なので、事業モデルを作ってプレゼンする技術を後輩に教えようとしているところなのですが、どうすれば「財務モデリングの超基礎」を一番シンプルに伝えられるかな、と迷っていまして……。

おお! いいことです! 

これまでは、財務モデリングを扱う人は「投資銀行・戦略コンサルティング・総合商社・FAS・PEファンド」の志望者ばかりでした。
しかし、最近では起業志望の方も増えており、事業計画やFP&A(管理会計)に連なる形で、財務モデリングも誰もが気楽に扱えたほうがよいと思っています。

そこで、今回は財務モデリングとはどのようなものなのか、とにかくシンプルに描いてみましょうか!


財務モデリングは、「売上-経費=利益」の見積りから始める!

本当にゼロから始めるなら、めちゃくちゃシンプルに「売上―経費=利益」の見積りから始めましょう。

『旬刊経理情報』の連載では、売上や粗利の読み取りや分析から始まり、

売上-原価[仕入]-販管費=営業利益
営業利益+減価償却費足し戻し-正味運転資本増価額[売掛金と買掛金の差額の増分]-税金支払=FCF(フリー・キャッシュ・フロー)

といった形で、分析に必要な要素を順番に紹介しながら、全体像を表したところです。

一気に構造を知るうえでは、いきなりFCFから考えてしまうという道もあります。

しかし、全く知識がないなかで「起業したい!」、「事業計画を立てたい!」と思うならば、まずは「売上-経費=利益」の構造に集中してみましょう!
モデリングもFP&Aも、実務上は営業利益が基本です。

たとえば、サンドイッチとコーヒーのセットを大学のマルシェでランチ向けに販売したとします。
おたんさん、その場合だと1日でどれくらい売れると見積れそうですか?

おたん
正確な需要は読めませんが、「だいたい50~100セットくらいが完売する」という見積りを立てておこうと思います。それくらいの数は売り切りたいです!

いい見積りですね。
では、まず次のように見積って、実際にモデルを起こしてみましょう(図表1)。

・顧客数を50件
・サンドイッチとコーヒーのセットで単価を1人600円
・原価(材料費・仕入)を1人200円

図表1 売上見積りから考えられる想定モデル

見積りを計算してみると、1日の粗利は2万円となります。

営業日数の見積り

では、次は営業日数を考えます。
大体、月に何日くらい、そして1日につき何時間くらい営業するでしょうか?

おたん
そうですね……月に15日は営業したいです。
1日当たりの営業時間は、準備も込みで3時間と見積ります!

OKです!
とすると、仮に営業日ごとに50セット売れたとして、営業日数が15日だとすると、見積りから図表2のようにモデルを想定することができます。

図表2 1か月の想定モデル

月の粗利が30万円出ました。
1時間当たりの粗利は、「3時間×15日=45時間」より、「30万円÷45時間=6,666円」と計算できます。

販管費の見積り

とはいえ、これを全部自分でやるわけにはいきませんね。
とすると、販管費(販売費・一般管理費)についても見積る必要があります。

おたん
なるほど。販売用のワゴンは貰い物があるので、それを再利用します。
本当ならサークルでTシャツやパーカーを作りたいのですが、まずそれくらいで!

まずはコストを抑える、素晴らしい発想です!

什器(販売用のワゴン)は、貰い物を使い、販売の際のユニフォーム等へのコストは考慮しないでおくと、残りは人件費ですね。

時給1,200円と見積ると、「3時間×1,200円=3,600円」の販管費がかかり、1日ごとの営業利益は図表3のとおり、1万6,400円です。

図表3 1日当たりの見積り

これを月単位(15日営業)に置き換えると、図表4となります。
1か月の販管費は、「3,600円×15日=54,000円」です。

図表4 1か月当たりの見積り

見積りをしてみると、月の営業利益は24万6,000円となりました。
このケースだと現金商売なので、営業利益がそのままキャッシュ・フローとなります。
売掛金・買掛金がないと仮定しているため、シンプルにいうと、財務モデリングってこのような見積りの繰り返しなんですよね。

おたん
ほんとだ! 実はめちゃくちゃシンプルなんですね。
見積ることでいろいろみえてきました!

そうなんです! 思いのほかシンプルでしょう?
他にも、次のような要素が挙げられます。

  • この内容と単価で50人に「欲しい!」と言ってもらえる? 

  • もっと需要が出て顧客数が増えたらどうする?

  • この原価で本当に仕入れられる?

  • もっとコストを下げられないか?

  • 「欲しい!」を「のどから手がでるほど欲しい!」にできないか?PMF(プロダクトマーケットフィット)や、PLG(プロダクト主導成長)の発想)

  • もっと単価と粗利を上げながら「欲しい!」と言ってもらえる?

  • 事業を拡大するとき、他に見積りが必要なコストはある?

「欲しい!」と言ってもらう(=顧客数を増やす)ために何をするか、そのためにどんな見積りが必要か、日々「妄想と行動」していくことが大事なんですよ。

妄想からデータを仮定して見積りに変えよう!

実のところ、妄想からデータを仮定し、見積りに変えれば、おのずと行動の分析につながります。

データ分析は、本連載の最初に述べたとおり、「妄想と行動の繰り返し」ということをあらためてお伝えできればと思います。

データ分析にまつわる素朴な疑問でもよいですし、
他の「こんなことが気になる!」でも、
ついつい湧き出る妄想でも構いません。
すべては、何かを始めるためにうってつけの理由です。

それでも「やっぱり不安だな…」と思うことがあれば、
お気軽にログハウスのドアをノックしてくださいね。


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「データ分析のログハウス」は、旬刊『経理情報』2022年7月10日号からスタートした連載「「データ分析の森」ガイドマップ」との連動記事です。
本誌では、DXやリスキリングなどで注目される「データ分析」について、その具体的な中身や取組み方などをやさしく丁寧に解説していただいています。ぜひあわせてご一読ください。定期購読はこちらから

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バックナンバー
第1回 ログハウスができたよ!
第2回 「データ分析の人材市場」を分析したよ!(※属性つき)
第3回 FP&Aが「つまらない」は本当?
第4回 リスキリングの本質って何?