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【会計】旬刊『経理情報』2023年6月1日号(通巻No.1678)情報ダイジェスト

パーシャルスピンオフの会計処理、検討進む─ASBJ、企業結合専門委

去る5月8日、企業会計基準委員会は第103回企業結合専門委員会を開催した。
第102回(2023年5月10日・20日合併号(No.1677)情報ダイジェスト参照)に引き続き、「パーシャルスピンオフの会計処理」について審議された。

■例外的な取扱いの範囲

事務局は、非金銭資産の分配について時価で会計処理することを原則としつつ、帳簿価額で会計処理する例外的な取扱いを設けることとし、その範囲について、次の案1、案2を提案した。

案1 完全子会社について子会社株式の分配を行い、その結果、当該株式が子会社株式および関連会社株式に該当しなくなる一部留保の株式分配(按分型)について例外的な取扱いをする。

案2 完全子会社について子会社株式の分配を行い、その結果、当該株式が子会社株式に該当しなくなる一部留保の株式分配(按分型)について例外的な取扱いをする。

事務局は「案1および案2のいずれの考え方もあり得るものの、米国会計基準においては(連結に関する取扱いであるが)スピンオフ実施会社に一部の持分を残すスピンオフのうち、一部の子会社株式を比例的に配当することによってスピナー(元親企業)がスピニー(事業を切り出して、新たに設立した会社)の支配を喪失したと判断した場合には完全なスピンオフと同じ取扱いをしていると考えられることを踏まえて、国際的な整合性の観点から案2で進めていく」との考えを明かした。
専門委員からは、「単体だけで考えれば、案1が妥当のように思える」との声が多くあった。事務局は、「単体で考えれば、案1が妥当であるが、連単のパッケージで考えた際に、案2が妥当である」旨を説明した。特に、案1では連結の実務が複雑になってしまう点が強調された。

■スピンオフ実施会社の連結財務諸表上の会計処理

事務局案は次のとおり。

⑴支配を喪失する株式分配
支配を喪失する株式分配に関する連結財務諸表における取扱いについても、帳簿価額で会計処理する例外的な取扱いを設けることとし、その範囲は個別財務諸表上の取扱いと同じとする。

⑵支配を喪失しない株式分配
現行の日本基準において支配を喪失しない株式分配に関する定めは存在しないが、企業会計基準22号「連結財務諸表に関する会計基準」29項を踏まえると、連結財務諸表上、支配を喪失しない一部留保の株式分配(按分型)を資本取引として処理する。

専門委員からは、「単体と連結の整合性を取ることは必要」、「支配を喪失しない一部留保の株式分配を資本取引として処理することに賛成する」という意見があった一方で、「連結実務が複雑になるため、例外的な取扱いとして案2を採用するという話だったが、案1を採用した場合の連結実務の複雑さが説明されていない」等、さまざまな意見が聞かれた。


直接償却の取扱い、検討─ASBJ、金融商品専門委

去る4月27日、企業会計基準委員会は第199回金融商品専門委員会を開催した。金融資産の減損に関する会計基準の開発における、ステップ2を採用する金融機関における直接償却の取扱いについて審議が行われた。

■取り上げる理由

3月22日開催の第498回親委員会(2023年4月10日号(No.1674)情報ダイジェスト参照)等における信用減損金融資産に係る利息収益の認識の審議での、ステップ2を採用する金融機関の、引当における貨幣の時間価値の考慮、IFRS9号「金融商品」における償却原価の採用および利率に係る審議のなかで、直接償却についても整理する必要があるとの意見が聞かれた。その後の委員会や専門委員会でも、追加的に検討を行う論点とすることに特段の異論は聞かれていなかった。

■事務局分析

⑴IFRS・日本基準の取扱い
IFRS9号では、直接償却は償却原価測定のセクションに定めが置かれているが、金融資産の減損と密接に関連する論点であると考えられる。
日本基準(金融商品会計基準等)では、貸倒引当金の会計処理の一部として直接償却に関する取扱いを定めており、貸倒引当金を算定するうえでの債権区分を前提とした定めを置いている。
この点、ステップ2で採用する方向で検討されている予想信用損失モデルでは、これらの区分は設けないため、現行の債権区分を前提とする直接償却に関する定めを見直す必要がある。
国際的な比較可能性を確保することを重視するステップ2の目的を踏まえると、IFRS9号における直接償却に関する定めを取り入れるとする。
その場合、IFRS9号では、金融資産の全体または一部分を回収するという合理的な予想を有していない場合は、直接償却を行うことを要求している。「合理的な予想を有して」いるかどうかの詳細なガイダンスは提供されておらず、IFRS7号「金融商品:開示」では、企業の直接償却の方針の開示が要求されている。
一方、日本基準では、貸倒引当金の対象となる債権について回収可能性がほとんどないと判断された場合には、直接償却を行うことを要求している。「回収可能性がほとんどない」と判断されるかどうかの詳細なガイダンスは設けていない。

⑵会計処理変更の可能性
このように、IFRS9号および日本基準において、直接償却を行う時点に関する文言が同一ではなく、IFRS9号を取り入れた場合に会計処理が変わる可能性がある。しかし、両者とも詳細なガイダンスは設けられておらず、各社の個々の状況等によるため、IFRS9号を取り入れても、企業の判断によっては、現行の実務や方針が大きく変わらない可能性がある。

■事務局案

直接償却の方針に関する開示については別途議論をするとして、ステップ2では直接償却に関するIFRS9号の定めを取り入れ、直接償却の方針に関する開示に係るIFRS7号の定めをあわせて取り入れる。

■専門委員の意見

専門委員からは、「事務局分析のように実務上変わらないのであれば賛成だが、直接償却の範囲が広がるのであれば、考慮してほしい」との意見に、事務局から「今回の提案は、企業の判断に委ねつつ、開示をしっかりしてもらうというもの」と回答した。
一方、「実務的な対応を、書ける範囲で教育文書などに記載してほしい」との意見が聞かれ、事務局から、「実務的な目線合わせがどこまでできるか、検討する」との回答があった。


日本版S1・S2基準の論点、審議進む─SSBJ

去る4月25日、SSBJは第12回サステナビリティ基準委員会を開催した。
第11回(2023年5月1号(No.1676)情報ダイジェスト参照)に引き続き、日本版S1基準および日本版S2基準の開発に関する論点が審議された。

■コア・コンテンツにおける4つの構成要素

提案は次のとおり。

① ISSBのS1基準およびS2基準のコア・コンテンツに含まれる開示目的および開示要求について、TCFD提言で示された4つの構成要素に基づき構成するという暫定決定を、SSBJが開発するサステナビリティ開示基準においても受け入れる。
② ISSBのS1基準およびS2基準のコア・コンテンツの開示目的および開示要求について、これらと整合的な定めをSSBJが開発するサステナビリティ開示基準においても受け入れる。
③ 指標および目標の開示目的ならびに気候関連の目標の一部を修正するというISSBの暫定決定と整合的な定めを日本版S1基準およびS2基準に受け入れる。

■バリュー・チェーンに関する情報

S1基準案40項(バリュー・チェーンに関する情報)と整合的な定めを日本版S1基準に受け入れる。

■表示通貨

S1基準案39項では、通貨が測定単位として特定されている場合、企業は企業の財務諸表の表示通貨を使用しなければならないとされており、これと整合的な定めを日本版S1基準に受け入れる。

■不必要な重複の回避

S1基準案78項では、IFRSサステナビリティ開示基準が、共通の情報項目の開示を要求する場合、企業は不必要な重複を避けなければならず、たとえば、サステナビリティ関連のリスクおよび機会に対する企業の監督が統合されている場合、ガバナンスに関する開示も重大な(significant)サステナビリティ関連のリスクおよび機会ごとに別個のガバナンスの開示の形式で提供するのではなく、結合しなければならないとされており、これと整合的な定めを日本版S1基準に受け入れる。

■財務上のデータおよび仮定に関する開示

提案は次のとおり。

① ISSBの再審議における暫定決定に基づき「可能な範囲で」の意味を明確にしたS1基準案80項と整合的な定めを日本版S1基準に受け入れる。
② サステナビリティ関連財務開示を作成する際に用いた財務上のデータおよび仮定の重大な相違について情報の開示を企業に求めるという、ISSBの再審議における暫定決定と整合的な定めを日本版S1基準に受け入れる。

委員からは、「暫定決定がされているものの、複数シナリオがある場合、どのシナリオに基づいて会計上の見積りがなされているかの説明が求められるのでは」といった意見が聞かれ、事務局は「検討する」と回答した。

■見積りおよび結果の不確実性に関する開示

提案は次のとおり。

① ISSBの再審議において、現在のおよび予想される財務的影響(S1基準案22項)ならびに指標(S1基準案30項)をS1基準案79項(見積りの不確実性に関する開示)の適用対象とすることが暫定決定されたものの、日本版S1基準では、特段対象を限定せず、見積り全体を対象としたうえで、S1基準案79項と整合的な定めを受け入れる。
② S1基準案81項~83項(結果の不確実性に関する開示)と整合的な定めを日本版S1基準に受け入れる。

委員からの「不確実性に関するガイド等が、別途ISSBより提供されるのか」との質問に、事務局からは「そうした認識はない」との回答があり、これを受け、委員は「そうならば、ISSB同様、財務的影響に絞るのはどうか」との意見を述べた。


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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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