【会計】わが国のIFRSへの今後の対応を検討─企業会計審議会会計部会
去る6月2日、金融庁は、企業会計審議会第10回会計部会(部会長:徳賀芳弘・京都大学名誉教授)を開催した。2013年に「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」、いわゆる「当面の方針」を公表して以降、約10年が経ち、IFRS任意適用企業の拡大やのれんをめぐる国際的な動向について環境の変化がみられるため、今後の方針について議論を行った。
主な審議事項は次のとおり。
■IFRS任意適用
事務局は、「『当面の方針』を公表以降、『IFRS任意適用企業数』および『全上場企業の時価総額に占める割合』は増加したものの、直近において伸び率は鈍化傾向がみられる」としたうえで、委員にIFRS任意適用についての考え方と、その考え方に基づく具体的な取組みについて議論を求めた。
委員からは、「IFRS任意適用については、継続して一層の拡大促進を図っていくべき」との声が聞かれた。特にプライム市場については、「海外投資家の影響力が拡大しているなかで、海外投資家との共通言語であるIFRSの任意適用が重要である」との考え方が示された。
具体的な取組みについては、「現在、IFRSに移行していないプライム企業の経営陣に対して、IFRSを導入するベネフィットを認識してもらう機会を作るべき」、「IFRSへの移行について、コストなどネガティブ面に意識が向いているため、移行コストや移行後のコストについて少なくしていくためにも、日本基準のコンバージェンスを進めていくことが重要」など、強制適用ではなく、あくまでも経営上の判断として、IFRSへの任意適用拡大を促進していく意見が多く聞かれた。
■のれんをめぐる国際的な動向
ASBJや日本経済団体連合会はIASBに対して、「too little, too late」問題(減損損失の認識の十分性および適時性に課題があり、貸借対照表にのれん残高が積み上がる問題)への対応として、のれんの償却の再導入を求めていたが、2022年6月、FASBおよびIASBはのれんの会計処理について、わが国の会計基準と収斂しない方向で暫定的な決定がなされた。
こうした環境の変化を考慮し、事務局は、今後「too little, too 」late」問題についてどう考えるか、また今後の対応や意見発信についての議論を求めた。
委員からは、「今の減損テストの枠組みを変えることは難しいが、発信については継続的に行っていくべき」との意見が聞かれた。その一方で、「のれんの償却については、企業が選べるようにするべき」、「上場しているスタートアップ企業の72%がのれんの償却が負担となり、M&Aを断念しているというデータがある。日本のスタートアップを大きくしていくなかでこの問題について考えるべき」との声も聞かれた。
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今回の議論では多岐にわたる意見が出たため、次回以降、具体的な方向性を定めることとした。
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