【企画紹介】『税務弘報』2023年12月号特集 使用者目線で使いこなす ポイント税務の最前線
目次
はじめに
『税務弘報』2023年12月号掲載の特集企画をご紹介します。
企画概要
使用量が増え続け,サービスの多様化も進むポイントについて,クライアントに「ポイントを導入したい」と言われたら? という趣旨で重要トピックを集めました。まずは活用法の最新事情と関連制度の変遷をチェック。そして,税務・会計上の取扱い,さらにインボイス制度下での留意事項を確認。加えて,自社発行/共通ポイントの導入の流れに,マイナポイントやマイナンバーカードによる納税者の利便性向上まで焦点を当ててみました。
わかったようでわからないモヤモヤ感を本企画で吹っ飛ばしましょう。
「使用者目線で使いこなす ポイント税務の最前線」Outline
① 企業の活用の形
~ポイントサービスのトレンドと事業戦略への組み込み方
共通ポイントTポイントの消滅の一方,PayPayの新規参入に加え,物流の人手不足対策に置き配等を選択するとポイント付与する施策を政府が発表するなど,話題が尽きない昨今のポイント市場。ポイントをめぐる最近の潮流,導入の失敗ケース,これからポイントを導入する事業者が気にするべきことは何かまで,日頃,企業のポイントサービスの導入,改善のコンサルティングを専門で行っている立場から解説したい。
② ポイント制度の変遷
~税務・会計の制度及び関係する法制度
ポイント制度は,企業による顧客囲い込みのマーケティングツールとして市場拡大が続く一方で,経済政策の一環として官主導でも度々導入されている制度である。会計上は収益認識基準においてポイントの取扱いが限定的に示されているに過ぎない。税務上では,収益認識基準の導入に対応して法人税基本通達で取扱いの一部が示されているが,もっぱら税務の実務で問題とされているのは消費税法上の取扱いであり,取扱いの明確化が望まれる。
③ 自社・共通ポイント及び商品券の税務
~会計基準及び近時の開示事例・裁決例・裁判例を指針として
近時,ポイント経済の拡大は著しく,大手共通ポイント数社の令和6年春の経営統合予定など,市場の変化は急速である。ポイント及び商品券に関し,令和3年4月1日以降の収益認識基準の適用に伴い,近時,上場企業等の各種の開示事例が現れている。また,税務についても,令和2年1月14日の国税庁処理例の実務上の位置づけにつき,各種の裁決例,裁判例により,漸次,実務運用の方向性が見えてきた。ポイント及び商品券等に関する会計処理及び法人税,消費税の取扱いにつき,概観する。
④ インボイス制度とレシート等の書き方
~値引きなのか支払手段なのかで様式変更を要する場合も
ポイント制度は広く実務において浸透してきているものの,必ずしも消費税法上の取扱いとして売手と買手で整合的な処理がなされていないこともあるのではないか。令和5年10月1日にインボイス制度が開始され,課税事業者における消費税法上の取扱いはインボイスを通して整合性が図られることになる。本稿では,ポイント制度に対する消費税法における取扱いを整理するとともに,インボイスの具体的な記載方法について考察していく。
⑤ ポイント制度の新規導入時における会計処理の検討
~会計論点の明確化と処理方針の早期確定を
ポイント制度の新規導入を決定した事業者では,適切な会計処理を実施するため制度の実情を踏まえた検討が必要となる。特に,ポイントの付与及び使用に関する取引は,通常の財又はサービスの単独販売と異なり,ポイント自体が決済手段の一種として利用される点が大きな特徴である。そのため,会計処理に関しても,会計上の見積りを含めた特有の論点が多い。本稿ではポイントの付与,使用及び失効に係る会計上の取扱いについて,収益認識会計基準等を前提として経理実務上考慮すべき事項を解説する。なお,本稿で意見に相当する部分は,筆者の見解であり,所属する組織の統一的見解を述べたものではない。
⑥ 自社発行ポイント及び共通ポイントの導入
~導入目的に応じた比較と留意点は
ポイント制度導入の際によく聞かれるのが,「自社発行ポイント」か「共通ポイント」か,どちらを採用するかである。その得失は,導入の目的により変わってくるので,検討に際しては留意が必要である。各々の導入ステップについても,留意点を中心に簡潔に触れる。特に自社発行ポイントは,制度設計からシステム構築まで,自社で行う必要があるが,自由度の高さなど,戦略的メリットも大きい。
⑦ マイナポイントの取扱いとマイナンバーカード等による納税環境整備
~ポイント付与の先にある納税者の利便性向上
わが国は,デジタル社会の実現を目指しており,そのための重要なインフラとしてマイナンバーカードがある。マイナンバーカードを取得すると,マイナポイント事業によりマイナポイントを得られるが,それは税務上一時所得となる。また,マイナポイントを得るためには,マイナンバーカードの取得が必要であるところ,マイナンバーカードは税務手続においても活用され始めており,今後は重要な位置づけになると考えられる。
編集部コメント
2022年8月号特集【ポイント税務重大事変】で取り上げたテーマですが,今回は別のアプローチから掘り下げています。ポイントは,社会の中で利用場面が増えている一方,寡聞にして,税務・会計上の取扱いについてまとめた論攷が少ない印象もあります。クライアントから「ポイントを……」と言われたとき,アタフタしないためにも,まずは本特集をチェックしてみてください。
関連バックナンバー
『税務弘報』2022年8月号
発行日:2022/07/05
【特集】大手共通ポイントの運用変更に新たな調査展開も ポイント税務重大事変
▶️解題 ポイント制度に関する消費税課税の論点
(荒井優美子)
▶️国税庁の「処理例」と大手共通ポイントの動き
運用変更に伴う税務インパクトを探る
(田中康雄)
▶️共通ポイント付与に係る対価性
大阪高裁令和3年9月29日納税者逆転勝訴判決
(朝倉雅彦)
▶️共通ポイント利用時の加盟店における消費税の課税標準の額
国税不服審判所令和3年5月17日非公開裁決
(齋藤吉英)
▶️ポイントにまつわる税務調査の動向と対応策
自社ポジションと疎明資料の早急な整備を
(竹原昌利)
▶️ポイントの法的性質と関連法令
ポイント税務の検討の一側面として
(右崎大輔/藤田侑也/松澤 瞭)
▶️「一般的な処理例」と租税法律主義
予測可能性・理解可能性への配慮を
(鈴木 修)
〈掲載号のご案内〉
『税務弘報』2023年12月号
発行日:2023/11/04
〈『税務弘報』のご案内〉
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