旬刊『経理情報』2023年8月1日号(通巻No.1684)情報ダイジェスト
【法務】重要な契約に関する開示府令の改正案、公表
─金融庁
去る6月30日、金融庁から「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部改正(案)」(以下、「開示府令改正案」という)が公表された。開示府令のほか、特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令、「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」の改正案も公表されている(https://www.fsa.go.jp/news/r4/sonota/20230630-8/20230630-8.html)。コメント期限は8月10日。
昨年6月に公表された「金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループ報告」の内容を踏まえ、個別分野における「重要な契約」について、開示すべき契約の類型や求められる開示内容が具体的に明らかにされたもの。有価証券報告書および有価証券届出書(以下、「有報等」)および臨時報告書の記載事項について、次の改正が行われる。
■企業・株主間のガバナンスに関する合意
有報等の提出会社(提出会社が持株会社の場合には、その子会社(重要性の乏しいものを除く)を含む)が、提出会社の株主との間で、次のガバナンスに影響を及ぼし得る合意を含む契約を締結している場合、当該契約の概要や合意の目的およびガバナンスへの影響等の開示を求める(開示府令改正案第二号様式記載上の注意㉝f)。
■企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意
有報等の提出会社が、提出会社の株主(大量保有報告書を提出した株主その他の重要な株主)との間で、次の株主保有株式の処分等に関する合意を含む契約を締結している場合、当該契約の概要や合意の目的等の開示を求める(開示府令改正案第二号様式記載上の注意㉝g)。
■ローン契約と社債に付される財務上の特約
⑴ 臨時報告書の提出
有報等の提出会社が、財務上の特約の付されたローン契約の締結または社債の発行をした場合(すでに締結している契約やすでに発行している社債に新たに財務上の特約が付される場合も含む)であって、その元本または発行額の総額が連結純資産額の3%以上の場合には、契約の概要(契約の相手方、元本総額および担保の内容等)や財務上の特約の内容を記載した臨時報告書の提出を求める(開示府令改正案19②十二の二、二十、企業内容等開示ガイドライン5―17―2)。
前記の財務上の特約に変更があった場合や財務上の特約に抵触した場合には、財務上の特約の変更内容や抵触事由等を記載した臨時報告書の提出を求める(開示府令改正案19②十二の三、二十一)。
⑵ 有報等への記載
有報等の提出会社が、財務上の特約の付されたローン契約の締結または社債の発行をしている場合であって、その残高が連結純資産額の10%以上である場合(同種の契約・社債はその負債の額を合算する)、当該契約または社債の概要および財務上の特約の内容の開示を求める(開示府令改正案第二号様式記載上の注意㉝h、企業内容等開示ガイドライン5―17―3)。
■適用日
改正後の規定は公布日から施行され、適用日は次のとおり。
【税務】令和5年度税制改正に伴う電帳法通達・一問一答の改正、公表
─国税庁
去る6月30日、国税庁は、「『電子帳簿保存法取扱通達の制定について』の一部改正について(法令解釈通達)」(以下、「改正通達」という)および、「電子帳簿保存法一問一答 【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】」の改正(以下、「改正一問一答」という)を公表した(通達:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sonota/kaiseir0506xx/index.htm、一問一答:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/00023006-044_03-2.pdf)。
■改正通達の内容
令和5年度税制改正における電帳法施行規則の改正に伴い、取扱いの明確化を図るため、所要の整備を行うもの。国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等における解像度情報の保存要件や入力者の情報の保存要件についての規定が削除されている。
また、電子取引の取引情報に関する電磁的記録の保存に関して、検索要件を不要とする措置の対象である、「整然とした形式及び明瞭な状態」の意義や、「取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたもの」の意義が明確化されている。
■改正一問一答の内容
過少申告加算税の軽減措置の規定を対象となる特例国税関係帳簿について規定されている「仕訳帳、総勘定元帳その他必要な帳簿」の「その他必要な帳簿」の詳細や、複数の会計ソフトを使用している場合の取扱い等が追加されている。
■適用関係
改正通達および改正一問一答は、令和5年度税制改正(電帳法施行規則の一部を改正する省令による改正)後について適用される。
【税務】ストックオプション課税の株価算定ルールに関する改正通達、公表
─国税庁
去る7月7日、国税庁は、ストックオプション課税に関する「『租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて』の一部改正について(法令解釈通達)」および、「『所得税基本通達の制定について』の一部改正について(法令解釈通達)」(以下、あわせて「改正通達」という)を公表した(措通:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/sochiho/kaisei/230707/index.htm、所基通:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/230707/index.htm)。また、通達の改正に伴い、ストックオプションに対する課税Q&Aの改正も行われている。
■コメント募集の結果
5月30日に改正通達のパブリックコメントの募集がされており(2023年6月20日号(No.1680)情報ダイジェスト参照)、寄せられた意見を踏まえ、改正されたもの。36通の意見が寄せられており、改正通達案からの修正は行われていない。
「通達発遣前に発行された新株予約権について、本通達発遣後にその内容を変更し、権利行使価額を財産評価基本通達の例によって算定した『契約時の1株当たりの価額』に引き下げた場合の取扱いを明らかにしてほしい」という意見に対し、国税庁の考え方として、税制適格ストックオプションに関する契約を変更した場合の取扱いについては、Q&Aで明らかにする旨が示され、そのようにQ&Aが改正されている。
■通達改正の内容
税制適格ストックオプションの権利行使価額要件に係る「契約時の1株当たりの価額」に関し、取引相場のない株式について、株価算定方法の明確化を図るもの。
具体的には、権利行使価額要件に係る「契約時の1株当たりの価額」については、所得税基本通達23~35共―9の例(売買実例等)によって算定することを明確化し、そのうえで、取引相場のない株式の「契約時の1株当たりの価額」については、財産評価基本通達の例によって算定することを認める。
改正通達は、発遣日(7月7日)以後に新株予約権の行使を行う場合について適用される。また、国税庁HPにおいて、改正通達の解説が後日掲載される予定。
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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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