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旬刊『経理情報』2024年9月10日号(通巻No.1720)情報ダイジェスト②/会計


【会計】新リース会計基準、次回公表議決へ─ASBJ

去る8月20日、企業会計基準委員会は、第531回企業会計基準委員会を開催した。
主な審議事項は次のとおり。

■リース会計基準

前回(2024年8月20日・9月1日合併号(№1719)情報ダイジェスト参照)に引き続き、新リース会計基準について審議が行われた。今回、会計基準・適用指針、その他の基準等の改正の文案等の検討が行われた。
委員からは特段の異論は聞かれず、事務局から次回の親委員会(9月3日開催予定)で公表議決したい旨が示された。

■企業会計基準諮問会議からのテーマ提言等の対応

前回(2024年8月20日・9月1日合併号(№1719)情報ダイジェスト参照)、企業会計基準諮問会議から報告された新規テーマについて、ASBJ事務局より次の対応方針案が示された。

⑴ 実務対応報告19号「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」の改正
新規テーマとする。検討を開始する時期、順序および範囲については他のプロジェクトの状況やリソースの状況を踏まえて判断する。

⑵ バーチャルPPAの会計処理
新規テーマとする。実務対応専門委員会において、需要家の観点から優先度の高い論点に範囲(会計処理単位や時価評価の要否)を限定して検討する。

⑶ 継続企業に関する会計基準の開発
新規テーマとし、親委員会において次の方向性で検討を行う。

① 日本公認会計士協会が公表した実務指針等のうち会計に関する指針に相当すると考えられる記載の移管を行うことに焦点を当てて、継続企業に関する会計基準を新たな会計基準として開発する。
② そのうえで、次の論点についても基準開発の範囲に含める。
・「財務諸表の公表の承認日」の概念の取入れ
・継続企業の前提に関する判断基準の作成(「企業の清算若しくは事業停止の意図がある」とされる範囲および「企業の清算若しくは事業停止の意図」をもつ主体の検討)

⑷ 後発事象に関する会計基準の開発
これまで休止していた本プロジェクトを再開し、親委員会において次の方向性で検討する。

① 後発事象の定義を見直しつつ、日本公認会計士協会が公表した実務指針等のうち会計に関する指針に相当すると考えられる記載の移管を行うことに焦点を当てて、後発事象に関する会計基準を新たな会計基準として開発する。
② そのうえで、次の論点についても基準開発の範囲に含める。
・「財務諸表の公表の承認日」の概念の取入れ
・修正後発事象が会社法監査における監査報告書日後、金融商品取引法に基づく監査報告書日までに発生した場合の取扱い

委員から、⑴~⑷のプロジェクト間における優先順位について質問があり、事務局から「⑵のバーチャルPPAは相対的に緊急性がある」との回答があった(8月21日公表の「現在開発中の会計基準に関する今後の計画」にて、2024年9月から検討開始予定の旨記載されている)。
これらの対応方針案について、出席委員全員が同意した。

【会計】VCファンド出資持分の会計処理の適用時期、検討─ASBJ、金融商品専門委

企業会計基準委員会は、去る8月8日に第223回、8月22日に第224回の金融商品専門委員会を開催した。
また、8 月20日開催の第531回親委員会でも第223回と同テーマの審議が行われた。
主な審議事項は次のとおり。

■上場企業等が保有するベンチャーキャピタル(VC)ファンドの出資持分

第223回専門委員会で、上場会社等が保有するVCファンドの出資持分に関する会計処理について審議が行われた。

⑴ 適用時期
最終基準公表日から1年程度経過した4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用する。
最終基準公表日から最初に到来する年の4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首からの早期適用を認める。

⑵ 経過措置
本改正では、遡及適用を求めず、適用初年度の期首時点において企業が定めた方針に基づいて時価評価オプションを適用する組合等への出資を決定し、適用初年度の期首から将来にわたって適用する。その際、適用初年度の期首時点において、時価評価オプションの対象となる組合等の構成資産である市場価格のない株式についての会計処理に、次の経過措置を設ける。

① 時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とする。この場合、適用初年度の期首時点での評価差額の持分相当額を適用初年度の期首のその他の包括利益累計額または評価・換算差額等に加減する。
② 時価のある有価証券の減損処理に関する定めに従って減損処理を行い、組合等への出資者の会計処理の基礎とする。この場合、減損処理による損失の持分相当額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減する。

専門委員からは方向性に異論は聞かれなかった。
第531回親委員会では、委員から「強制適用時期はもっと後でもいい。利害関係者にヒアリングして慎重に検討を」との意見が聞かれた。

■金融資産の減損

⑴ 満期保有目的の債券およびその他有価証券に分類される債券
第223回専門委員会で、満期保有目的の債券およびその他有価証券に分類される債券をステップ3では予想信用損失モデルの適用対象とするなどの事務局提案に対して、金融商品の分類・測定の議論とあわせて検討すべきなどの意見が聞かれており、これを踏まえ、次の再提案が示された。

① 満期保有目的の債券および貸付金代替性債券(貸付金の代替として銀行等金融機関が引き受けて保有する債券)→ステップ3、4、5のいずれにおいても予想信用損失モデルの適用対象とする。
② 満期保有目的の債券→格付会社が公表する情報等を活用して予想信用損失を算定する実務上の対応等について補足文書に記載する。
③ 貸付金代替性債券の分類・測定→ステップ3、4のいずれにおいても、時価をもって貸借対照表価額とせず、その他有価証券の範囲から外して、満期保有目的の債券と同じ測定とする。
④ その他有価証券に分類される債券のうち貸付金代替性債券以外の債券→ステップ3、4、5のいずれにおいても、金融商品の分類・測定の見直しに関する議論を行うまでの間、現行の取扱いを踏襲する。

専門委員から、「貸付金代替性債券を明確に定義すべき」などの意見が聞かれた。
第531回親委員会では、委員から「保有目的によって、減損するかしないか取扱いが変わるのが気になる。保有目的で分けるアプローチはうまくいかないのでは」との意見が聞かれた。

⑵ ステップ4の議論
第224回専門委員会で、第221回専門委員会(2024年7月20日号(№1716)情報ダイジェスト参照)においてステップ4(信用リスクに関するデータの詳細な整備がなされていない金融機関に適用される会計基準の開発)を採用する金融機関の代表者への意見聴取で聞かれた意見への対応について、審議が行われた。
主な審議事項は次のとおり。

 ① 予想信用損失の見積期間
 
債権単位での信用リスクの著しい増大の判定(SICR)ありに該当する債務者区分については全期間の予想信用損失を見積ることとなるが、平均残存期間を正確に算出できないケースも想定されるため、現行の「1―3年ルール」(正常先債権、一般要注意先債権は1年、要管理先債権は3年分の貸倒損失額をベースに算定する)のような簡便法の検討を求める意見が聞かれていた。これに対して、事務局から、次の再提案が示された。

(i) 会計基準に「1―3年ルール」は取り入れない。
(ii) ステップ4では、その他要注意先および要管理先に対する債権について、それぞれの区分の単位で、リスク特性が類似した金融商品のグループごとに契約の実態に応じた平均残存期間を用いることができることとし、また、状況に大きな変化がないと考えられる場合には一度決定した平均残存期間を見直さないことができる。

専門委員からは「『1―3年ルール』は残してもいいのでは」との意見が聞かれた。

 ② 貸倒実績率の利活用
 現行実務で使用されている貸倒実績率を利活用できないかとの意見を踏まえ、事務局から次の提案が示された。

(i) SICRの判定における閾値としての利活用→事務局から提案はないが、関係者からSICRの考え方と整合的な貸倒実績率の利活用に関する具体案が提示された場合は、その具体案について検討する。
(ii) 引当金の金額の算定→過去の貸倒実績率に将来予想情報等の調整を加えることによって、利活用することは可能である。

専門委員から「(ii) について、貸倒実績率にエキスパートジャッジやマネジメントオーバーレイによる補足が必要では」との意見が聞かれた。

【会計】SSBJ基準案に寄せられたコメント対応の検討、開始─SSBJ

去る8月21日、SSBJは第37回サステナビリティ基準委員会を開催した。
3月29日に公表されたサステナビリティ開示ユニバーサル基準およびサステナビリティ開示テーマ別基準の公開草案(以下、あわせて「本公開草案」という)に寄せられたコメントへの対応案について、審議が行われた。
主な審議事項は次のとおり。

■開発にあたっての基本的な方針

基準の確定に向けた再審議の方向性を固めるべく、「開発にあたっての基本的な方針」に寄せられたコメントについて次のような対応案が示され、審議された。

⑴ ISSB基準よりも範囲を限定すべきとの意見
本公開草案に対して、「米国証券取引委員会の気候関連開示規則を踏まえ、一部の開示項目について要求事項ではなく任意とすべき」旨の意見が寄せられた。
事務局は、「ISSB基準の根幹を成す要求事項であり、任意とすることは難しい」とし、ISSB基準との整合性を図るという本公開草案の基本的な方針を維持する考えを示した。
委員からは、異論は聞かれなかった。

⑵ ISSB基準との整合性を図る程度
 ① SSBJ基準独自の取扱いを設けることの是非(法令等の周辺諸制度との関係)
 本公開草案では、次の4点においてSSBJ基準に従い開示を行うことを要求または容認する法令等が別段の定めを置いている場合の取扱いを定めている。

・情報の記載場所
・同時の報告
・比較情報
・誤謬

これらについてはISSB基準に同様の要求事項が存在しないため、厳密にはSSBJ基準との差異になる。
これに対し、「法令等の定めがISSB基準の要求事項に反するものである場合、比較可能性を大きく損なわせる可能性がある」旨のコメントが寄せられた。
事務局は、「ISSB基準においても法令等の定めを優先している要求事項があるため、SSBJ基準を開発するにあたり、法令等に別段の定めが置かれている場合の取扱いを定めることには合理性がある」と回答した。
委員からは、異論は聞かれなかった。

 ② ISSB基準の要求事項が明確ではないと考えられる場合
 本公開草案では、ISSB基準の要求事項が必ずしも明確ではない点においては、SSBJ基準独自の取扱いを定めている。
これに対し、「ISSB基準に基づく開示と異なる場合、比較可能性を大きく損なわせる可能性がある」旨のコメントが寄せられた。
事務局は、SSBJ基準独自の取扱いを定める目的が明確化を図るためであることから、比較可能性を大きく損なうものではないとし、本公開草案の方針を維持してはどうかと回答した。
委員からは反対意見は聞かれなかった。

⑶ SSBJ基準の構成および用語
本公開草案では、基準の読みやすさを優先してISSB基準の定めの順番等を入れ替えており、日本語として不自然な場合は基準の意図がより明確になるような表現としている。
これについて、「SSBJ基準の構成および用語はISSB基準と整合させるべきである」とのコメントが寄せられた。
事務局は、ISSB基準の要求事項と同じことを要求する場合に、書き方を変更するほうがSSBJ基準を利用する者にとって利便性が高いとし、本公開草案を維持する考えを示した。
委員からは、反対意見は聞かれなかったものの、「SSBJ基準だけではなく、ISSB基準にも準拠しているかどうかの判断が求められる保証業務に携わる方や、両基準に準拠する企業にとっても使い勝手のいいものにする必要がある」との意見が聞かれた。


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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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