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旬刊『経理情報』2023年10月1日号(通巻No.1689)情報ダイジェスト


【監査】四半期レビュー基準の改訂、検討開始─企業会計審議会監査部会

去る9月5日、金融庁は、企業会計審議会監査部会(部会長:堀江正之・日本大学商学部教授)を開催した。
2022年12月公表の金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告(DWG報告)に盛り込まれた四半期開示の見直しに伴い、四半期報告制度廃止後の中間財務諸表および四半期決算短信のレビューについて、以下の論点に関する審議が行われた。

■検討範囲

DWG報告では、第2四半期報告書と同程度のレビューが半期報告書に求められ、第1・第3四半期決算短信のレビューは任意とされた。これを受けて、新たに必要となる「半期報告書に含まれる中間財務諸表に対するレビューに関する基準」に加えて、 「四半期決算短信に含まれる四半期財務情報に対するレビューに関する基準」を、企業会計審議会において検討することについて、委員からは、基本的に賛意が聞かれた。

■期中レビュー基準(仮称)

新たに改訂するレビュー基準について、次の論点が示された。

⑴ 現行の四半期レビュー基準をベースに所要の改正(四半期財務諸表を中間財務諸表に修正するなど)を行う。
⑵ 「四半期決算短信に含まれる四半期財務情報に対するレビューに関する基準」を含めて検討する場合、これも現行の四半期レビュー基準に取り込み、中間財務諸表と四半期財務情報に対するレビューを対象範囲に含む「期中レビュー基準」(仮称)にする。
⑶ 「期中レビュー基準」(仮称)とする場合、結論表明の枠組みについては、監査基準と同様に、適正性結論を中心とし、準拠性結論の規定を追加する(年度監査では適正性意見が中心で準拠性意見もあるところ、期中レビューの中間では適正性、四半期では準拠性の結論とするイメージ)。

なお、適正性意見は、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されているかに加え、経営者が採用した会計方針の選択やその適用方法、さらには財務諸表全体としての表示が適正表示を担保しているかといった実質的な判断を含めた意見」をいう。
また、準拠性意見は、「会計の基準に追加的な開示要請の規定がないこと等を踏まえ、財務諸表が当該財務諸表の作成にあたって適用された会計の基準に準拠して作成されているかどうかについての意見」をいう。
⑴、⑵については、委員から特段の異論は聞かれなかった。
⑶について、委員から「適正性のみでいいのでは」との意見があった一方、「四半期は注記が限定されるので、適正性のみとするのは難しい」との意見も聞かれた。また、「中間は適正性で四半期は準拠性とすると、その違いを一般投資家が理解するのは難しい。統一したほうがよい」との意見も挙がった。
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次回以降、基準の改訂案を示して、議論を行う予定。

【会計】改正リース会計基準公開草案に寄せられたコメント対応の検討、開始─ASBJ、リース会計専門委

去る9月4日、企業会計基準委員会は第132回リース会計専門委員会を開催した。
5月2日に公表された企業会計基準公開草案73号「リースに関する会計基準(案)」等に寄せられたコメントへの対応案について、審議が行われた。
寄せられたコメントを受けて、事務局から、今後個別に取り上げ検討する事項と、コメント対応として扱うものとを分けた対応案が示された。

■リースの識別に関するコメント



リースの識別に関する定めについて、「整備新幹線に係る鉄道施設の使用対価は適用対象外として取り扱う定めを設けることを要望する」とのコメントが寄せられた。これに対し、事務局からは「『整備新幹線に係る鉄道施設の使用対価』については、取引内容を確認したうえで対応の要否を検討する」とのコメント対応案が示された。
専門委員からは、「議論の背景としては、国や行政が絡んでくる問題で一般的ではないため、検討の俎上に載せるのか。どういった背景があるのかお示しいただきたい」との意見が聞かれた。
事務局は「取引内容がどのようになっているか事務局内で確認が取れていない。したがって、新たな論点が出てきた場合など取引内容次第では取り上げることになる。現在の会計基準や適用指針の定めで対応できるのであれば取り上げなくてもいいと思っている」と回答した。

■リースの契約条件等に関するコメント



また、リース事業協会のオブザーバーから、「リースの契約条件の変更及びリースの契約条件の変更を伴わないリース負債の見直しに関する質問」について、「従前のルールにはないルールが定められており、特にリース規約条件の変更を伴わないケースなどは、実務負担も相当あるため、可能であれば個別論点として議論してほしい。コメントが相当数あるようなので、もし難しい場合は、丁寧なコメント対応をお願いしたい」との意見が聞かれた。事務局は「検討する」と回答した。

■親委員会での審議

9月7日開催の第509回親委員会でも、本テーマについて審議が行われた。
委員からは、「今後の議論のしかたとして、ステークホルダーの実務対応を阻害しないよう、予見可能性の高いものから優先して議論したほうがいい」との意見が聞かれた。

【会計】パーシャルスピンオフの会計処理の実務対応報告案、検討大詰め─ASBJ、企業結合専門委

去る9月6日、企業会計基準委員会は第109回企業結合専門委員会を開催した。
第108回(2023年9月10日号(No.1687)情報ダイジェスト参照)に引き続き、「パーシャルスピンオフの会計処理」について審議された。

■改正の文案検討

前回に引き続き、企業会計基準適用指針2号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」および会計制度委員会報告7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」について、改正文案の検討が行われた。
前回議論された、2023年4月1日から公表日までの間に実行された取引について早期適用を可能とする経過措置について、事務局はそれに実際に該当するケースを想定できないことを理由に経過措置を定めない修正案を提示した。
専門委員からは、「公開草案を公表し、作成者からニーズがあるようであれば、再検討すればよいのでは」との意見が聞かれた。
また、企業会計基準適用指針28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」の改正文案の検討も行われた。

■「コメント募集および公開草案の概要」の文案

自己株式等適用指針および資本連結実務指針、税効果適用指針の改正案についてのコメント募集および公開草案の概要の文案が検討された。なお、資本連結実務指針については、日本公認会計士協会より改正案が公表される。
専門委員からは「資本連結実務指針が会計士協会での扱いになることで、『公表にあたって』の対象から外れることになった。こちらが主に読まれることが多いことも考慮すると、参考として連結上の扱いの概要等を付けたほうが便利では」という意見が聞かれた。
事務局は、「なお書きでリファーをしているので、こちらでカバーできると考えている」とした。
また、「そのような意見が多く聞かれた場合は再検討する」とした。また、9月7日開催の第509回親委員会でも、審議が行われた。
専門委員会と同様に、委員から、「資本連結実務指針の内容を参考情報として『公表にあたって』に記載しては」との意見が聞かれ、事務局から「検討する」との回答があった。

【会計】電子決済手段の会計処理に関するコメント対応、開始─ASBJ

去る9月7日、企業会計基準委員会は、第509回企業会計基準委員会を開催した。主な審議事項は以下のとおり。

■金融商品の減損

第205回金融商品専門委員会(2023年9月20日号(No.1688)情報ダイジェスト参照)に引き続き、金融資産の減損に関する会計基準の開発に関して、ステップ2を採用する金融機関における金融資産の条件変更の開示について審議された。
事務局から、注記に関してIFRS9号「金融商品」の定めを取り入れない項目については、原則IFRS7号「金融商品:開示」の定めを取り入れないことを基本的な方針としており、条件変更に関するIFRS7号の定めおよび、銀行等金融機関において要求されている条件変更に関連する開示の分析を行った結果、両者とも取り入れないとする案が示された。
委員からは賛同意見が多く聞かれたが、「利用者として条件変更は情報価値が高く、取り入れないとする案に抵抗がある」との意見も聞かれた。

■電子決済手段の会計処理・開示

第159回実務対応専門委員会(2023年9月20日号(No.1688)情報ダイジェスト参照)に引き続き、実務対応報告公開草案66号「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い(案)」等に関するコメント対応につき、審議された。
このうち、表示に関して、「貸借対照表上の表示は『現金及び預金』に含めるとされているが、その明確化を希望する」とのコメントに「わが国の会計基準では貸借対照表上の現金及び預金の範囲を定めていないことに鑑み、貸借対照表上の電子決済手段の表示について定めていない」とのコメント対応案が示された。
委員からは、「『現金及び預金』に含まれるか明確化したほうがいいのでは」との意見があり、事務局から「実務対応報告の範囲を超えるので、ここでは難しい」との回答がされた。

【会計】日本版S1・S2基準の開発、検討進む─SSBJ

去る9月5日、SSBJは第20回サステナビリティ基準委員会を開催した。第19回(2023年9月10日号(No.1687)情報ダイジェスト参照)に引き続き、IFRS S1号およびIFRS S2号に相当する日本基準の開発の審議が行われた。審議された具体的な検討事項は主に以下のとおり。

■目的

日本版S1基準・S2基準の目的について、それぞれIFRS S1号・S2号の定めを取り入れる。
日本版S1基準に関して、委員からは「『サステナビリティ開示』が『一般目的財務報告書の特定の様式をいう』と定義されているが、この訳し方だと誤解を招く可能性があるのではないか。S1号の『様式』は『情報の集合体としての様式』を指しているかと思うが、様式という言葉が日本では開示様式のようなものを想起させやすいのでは」との声が聞かれた。事務局は、「訳としては正しいが、説明のしかたを考える」とした。

■範囲

日本版S1基準における範囲について、IFRS S1号の定めを取り入れる。
また、SSBJが公表する他のテーマ別基準が、具体的なサステナビリティ関連のリスクおよび機会に関する情報の開示について定めている場合、これに従わなければならない、とした。

■バリュー・チェーンを通じてのサステナビリティ関連のリスクおよび機会の範囲の再評価

日本版S1基準において、IFRS S1号の定めを取り入れる。また、バリュー・チェーンを通じてのサステナビリティ関連のリスクまたは機会の範囲について、重大な事象や変化にかかわらず、より頻繫に再評価できるものとした。

■判断

日本版S1基準における(作成過程で企業が行った)判断について、IFRSS1号の定めを取り入れる。
委員からは、「事務局から示されている提案に『開示に含まれる情報に最も重大な影響を与えるものを理解できるよう、情報を開示しなければならない』という記述があるが、原文では複数形なので、必ずしも1つに限らない旨が伝わるよう表現を修正したほうがいいのではないか」という意見が聞かれた。事務局は、「書き方を検討する」とコメントした。

■測定の不確実性

日本版S1基準における測定の不確実性について、IFRSS1号の定めを取り入れる。
委員からは「具体的に何を開示すればいいのかがわかりにくい」という意見が聞かれた。事務局は、「例示を出すことはできるが、出した瞬間、各企業はそれと同じものを開示する蓋然性が高い。持ち帰って検討したい」とコメントした。


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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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