【会計】信用リスクの見積期間のオプション等、検討─ASBJ、金融商品専門委
去る10月20日、企業会計基準委員会は第189回金融商品専門委員会を開催した。前回審議(2022年10月10日号(No.1657)情報ダイジェスト参照)において、金融資産の減損の会計基準の開発に関し、ステップ2で引き続き検討すべきとされた論点のうち、次の論点について、審議が行われた。
■予想存続期間が1年未満の取扱い
⑴実務上の困難性
信用リスクを見積る期間に関しては、IFRS9号「金融商品」における、予想存続期間を見積期間とする定めを取り入れることが提案されていた。しかし、日本の現行実務では、予想存続期間が1年未満の場合に契約期間で見積ることは負担が大きいとの意見が聞かれた。そのため、再度その取扱いを検討することとしていた(2022年7月1日号(No.1648)情報ダイジェスト参照)。
⑵オプションの検討
実務上の負担を軽減させるため、IFRS9号の定めを原則として取り入れつつ、予想存続期間が1年未満の場合には見積期間を1年とするオプションを認めることが提案された。
なお、この取扱いは基本的には引当金を少なく見積ることを目的としておらず、濫用の懸念もないため、国際的な比較可能性を大きく損ねるとは必ずしもいえないと事務局は考えている。
専門委員からはおおむね賛意が示された。他方で、「オプションの適用に際しては、注記の検討も必要になるのではないか」との意見が挙がった。事務局は「他の項目との兼ね合いもある。開示に関する検討のなかで、今後考えていきたい」との回答がなされた。
■マネジメント・オーバーレイ
⑴分析
将来予測情報について、欧米ではモデルを用いた予測に対して追加的な修正(マネジメント・オーバーレイ)を行う対応がみられ、これまでの審議においてこの取扱いに関する検討が求められていた。マネジメント・オーバーレイはIFRS9号に特段の記載はないものの、一般的には定量的なモデルに対する調整を総称するものとされている。欧米の金融機関ではコロナ禍における適用等の事例がみられ、欧州銀行監督局(EBA)の見解として、オーバーレイは将来予測と方向性が一致し、適切な文書で裏づけられ、適切なガバナンスのもとで行われる必要があること等が紹介された。
⑵事務局提案
IFRS9号の定めを取り入れる場合、予想信用損失について定量モデルによって機械的に見積るのではなく、将来予測的な情報や定性的情報も考慮した全期間の認識が求められている。このような定めを適切に理解すれば、不確実な状況下でより適切に予想信用損失を認識するためにマネジメント・オーバーレイを行い得ることが読み取れると考えられるため、基準のなかでマネジメント・オーバーレイに関する特段の記載は行わない。
専門委員からはおおむね賛意が示され、「基準に含めることは難しいと思うが、教育文書などで触れることは有用では」との意見もあった。
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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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