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ニューヨーク大学|【連載】Study Abroad Journal—留学体験記—(第6回・終)

私は、2021年8月から22年5月まで、ニューヨーク大学(以下「NYU」といいます)のロースクールでLL.M.留学をしていました。
私は、弁護士登録以降、訴訟・調停、事業再生・倒産などの紛争解決を中心業務としていました。特に留学前の数年間に海外案件が多くなり、海外案件特有の複雑さ・円滑に案件を進めるうえでの難しさを感じ、LL.M.留学を決意しました。


ロースクール棟の入口

留学先を決めた理由

私は、世界のビジネス・経済の中心地であるニューヨーク(以下「NY」といいます)での留学を重視しました。特にNYUは、NYの実務家による実務系科目が多く開講され、最先端の実務に触れられることが魅力的でした(コロナによる制限の解除を受けて、現在では大手ローファーム主催によるイベントも2021/2022年よりも頻繁に開催されているようです)。NYには他にもロースクールはありますが、NYUはLL.M.だけでも約450人と特に学生数が多く、幅広くネットワークを築けます。

単身での渡米であったため、利便性や治安の他、文化や多様な人との出会いから刺激を受けることも重視していました。そのため、NYUのマンハッタンの中心という立地は理想的でした。治安面では、NYでも頻繁に暴行事件等が報道され、確かに深夜・早朝の地下鉄等は危険ではありますが、NYU周辺は基本的に人が多い点では安心でした。

ロースクール棟内の図書館

ロースクールでの授業・生活

私は、NY Barに必要な授業以外は、自身の業務分野(事業再生・倒産、訴訟・調停等の紛争解決)に関する授業を主に履修しつつ、かねてから興味のあったファイナンスの授業も履修しました。立地の良さから、NYUには弁護士や裁判官(元・現役)等の実務系教員も多く、体系的に学ぶ授業はもちろん、さまざまな大手ローファームの弁護士、著名なヘッジファンドマネージャーや、事業再生やM&Aのアドバイザリーに特化した投資銀行からゲストスピーカーを招いた授業もありました。私が履修した授業もほとんどが実務家教員による授業でした。なお、私は企業法務関連の授業が中心となりましたが、NYUは国際法の分野でも有名です。また、LL.M.ではInternational Taxationの専攻は特に人気があり、J.D.修了後のアメリカ人が取得するケースもあります。

大規模校で少人数の授業は少ないのでは?と思われがちですが、もちろん100人を超える大教室での講義もあるものの、ゼミ形式の20人前後の授業も多くありました。Alternative Dispute Resolutionの授業では、受講生約20人のうちJ.D.生とLL.M.生が半々で、毎週3時間の授業でほぼ毎回模擬交渉や調停・仲裁を行い、英語力も鍛えられました。15名ほどのLegal Writingの授業は現役の民事裁判官が教授であり、同裁判官にはその後傍聴やPro Bono活動でも手厚いケアをしてくださりました。

卒業式関連では、卒業式前日にNYの街並みを代表するエンパイア・ステート・ビルがNYUのVioletカラーでライトアップされ、ヤンキー・スタジアムで行われた大学院全体の卒業式では歌手のテイラー・スウィフトがスピーチをするなど豪華な演出は圧巻でした(NYUは、経済界のみならず、芸術方面でも多くの映画監督や俳優などの著名人を輩出しています)。

エンパイア・ステート・ビルディングが卒業式前日にNYUカラーでライトアップされた様子

NYでの生活

私は、ロースクール棟すぐ近くの寮で生活していました。寮でも1人部屋の家賃は最低月2,000ドルからと高く、全体的にNYの物価は高いです。しかし、NYの中心で世界中から集まる一流の文化(美術、音楽、ミュージカル、食と挙げればキリがありません)に日常的に触れられる贅沢な環境でした。法律関係でも、被告人の更正・矯正を強化し刑事手続に組み込むコミュニティコート(Community Justice Center)を見学するなど、日本にはない画期的な制度について直接見聞きできる貴重な機会もありました。

NYには全世界から文字通り夢を叶えるために来た人がたくさんいます。

LL.M.卒業生は、自国に帰る人が多いものの、NYの法律事務所や国際機関に就職する人等、NYに残り夢を追い続ける人も一定数います。LL.M.生やNY駐在員に限らず、英語ノンネイティブながらNYで米最大手銀行の投資部門やエンジニアなどの職を掴んだ友人等、東京の法律事務所で日夜働いていただけでは出会えなかった人たちと人生について語り合う時間はとても刺激的であり、自身の価値観も変わりました。

🄫Sorel: Courtesy of NYU Photo Bureau

著者略歴

山口みどり(やまぐち・みどり)Yamaguchi Midori
森・濱田松本法律事務所 弁護士。一橋大学法学部卒業、同大学法科大学院修了。2016年弁護士登録。ニューヨーク大学ロースクール修了後、Masuda, Funai, Eifert & Mitchell法律事務所シカゴオフィスにて執務。23年ニューヨーク州弁護士登録。


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 本記事は、月刊誌『ビジネス法務』掲載記事を一部修正したものです。
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