【会計】貸付金・債券の償却原価の償却方法、検討─ASBJ、金融商品専門委
去る2月28日、企業会計基準委員会は第196回金融商品専門委員会を開催した。
第495回親委員会(2023年3月1日号(No.1670)情報ダイジェスト参照)に引き続き、次の論点につき審議が行われた。
■貸付金に関する手数料の取扱い
ステップ2を採用する金融機関における貸付金の手数料について、次の再提案が行われた。
原則として、実効金利の不可分の一部である手数料を実効金利の調整として取り扱うIFRS9号「金融商品」の取扱いを取り入れる。
なお、次を条件として、手数料を実効金利に含めず、収益認識会計基準等に準じて、手数料に対応する役務を別個の履行義務として識別し、履行義務の充足時に収益として認識する。
(ⅰ) 特定の役務に対する手数料であることが明確である。
(ⅱ) 設定された手数料の料金が対応する役務との関係で合理的である。
また、「手数料が対応する貸付金の金利水準を調整するものではない」ことが(ⅱ)の考慮要素の1つであることにつき、結論の背景等に記載する。また、手数料について同種の契約とグルーピングして予想存続期間にわたり認識するオプションは、基準で定めず、教育文書に記載する。
専門委員からはおおむね賛意が示された。なお、「取引ごとに恣意的に選択される懸念があるが、その対応として、2のオプションは会計方針の選択となるのか」との質問に対して、事務局から「同一の金融機関で貸付金の実体が異なるので会計方針が異なる場合と、同じ性質であるが恣意的に選択される場合とに分けて考える必要がある」との回答があった。
また、「教育文書の位置づけを明確にすべきでは」との意見に対して、事務局から「FASFに決定権があるので、相談しながら決めていく」との回答があった。
■貸付金・債券に関する償却原価の償却方法
⑴貸付金
ステップ2を採用する金融機関における貸付金に関する償却原価の償却方法について、IFRS9号の定めを取り入れて利息法とし、定額法を認めないとする再提案が行われた。
⑵満期保有目的およびその他有価証券に分類される債券
⑴の議論のなかで、ステップ3における満期保有目的およびその他有価証券に分類される債券に係る償却原価の償却方法で利息法が適用された場合、システム開発や税務上の取扱いとの差異、会計基準開発のスケジュール等に影響があるのではとの懸念が出ていた。これらの意見を受けた事務局分析は次のとおり。
貸付金代替性債券は、貸付金と同じ取扱いとする。
その他の債券は原則利息法とするが、このうち、信用リスクが低く引当における時間価値が重要でない債券は、定額法を認める。
2の定額法を認める債券に該当するものとして、外部格付けが投資適格に該当する債券がある。
3の場合、事後的に外部格付けの変更により定額法と利息法の切替えが起こる場合、1つの方法として、投資適格となる/ならない事象が発生した期間の翌期首において定額法と利息法との差額についてキャッチ・アップ修正を行い、以降は切替後の償却方法を適用する。
これらの分析のもと、次の提案が示された。
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専門委員からは「キャッチ・アップ修正は実務上困難」、「定額法を債券だけではく、貸付金にも適用できるようにしては」との意見が聞かれた。
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