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旬刊『経理情報』2024年2月10日号(通巻No.1701)情報ダイジェスト/会計


【会計】ステップ4でのSICR判定、検討―ASBJ、金融商品専門委

去る1月17日、企業会計基準委員会は、第210回金融商品専門委員会を開催した。
金融資産の減損に関する会計基準の開発に関して、ステップ4(信用リスクに関するデータの詳細な整備がなされていない金融機関に適用される会計基準の開発)の検討の審議が行われた。
主な審議事項は以下のとおり。なお、同23日開催の第518回親委員会でも同テーマについて審議された。

■ステップ4に予想信用損失モデルを採用する必要性

これまでの審議で、ステップ4の検討に着手するにあたり、予想信用損失モデルを採用する必要性やその意義について、関係者間での共通理解を醸成する必要があるといった意見が聞かれており、これを踏まえて、ステップ4に予想信用損失モデルを採用することの必要性に関して、事務局から次のような進め方についての提案が示された。

・ステップ4についても予想信用損失モデルを採用する必要があり、この場合には「IFRS9号『金融商品』を出発点」として基準開発を行う。
・予想信用損失モデルの採用に伴う現行実務への影響に関する地域金融機関における懸念については、「適切な引当水準を確保したうえで実務負担に配慮」することにより対応する。

専門委員からは方向性について賛成意見が聞かれた。
第518回親委員会では、「『IFRS9号を出発点』とすると、ステップ2と同じになってしまうのでは」との意見が聞かれ、事務局から「出発点は同じでも着地点が違うイメージ」との回答があった。

■債権単位での信用リスクの著しい増大(SICR)の判定

多くの金融機関で実務上行われている債務者区分を基礎とする信用リスク管理の区分に基づき、SICRの判定に関して債務者単位に基づく絶対的アプローチを最大限に活用する次の提案が示された。

・正常先に対する債権等は原則SICRが生じていないとみなすが、このうち低い内部信用格付区分に含まれる債権等については、SICRが生じているとみなしつつ、債権または債権グループごとに反証できる(債権単位に基づく相対的アプローチによる反証のほか、債権グループ単位で定性的または定量的な評価を利用した反証方法を認める)。
・要管理先を除く要注意先に対する債権等については、SICRが生じているとみなしつつ、債権単位で相対的アプローチにより反証できる。
・要管理先および破綻懸念先、実質破綻先、破綻先に対する債権等については、SICRが生じているものとみなす。

また、期日経過情報のみを用いて信用リスク管理を行う債権等に対するSICRの判定については、ステップ4において個別の定めを設けず、IFRS9号の定めに基づいてSICRの判定を行うとの提案がされた。
専門委員からは、「旧金融検査マニュアルと整合的にして、内部信用格付区分が低い正常先も一律にSICRが生じていないとするのも1つの方法では」との意見に対し、事務局から「足元が問題ないため正常先であるが、将来予測の観点からは、一律になしとすることはできないと思われる」との回答があった。
第518回親委員会では、事務局案への賛成意見が聞かれた。

【会計】貸手における知的財産のライセンスの供与、条件付きで適用範囲へ―ASBJ、リース会計専門委

去る1月18日、企業会計基準委員会は第141回リース会計専門委員会を開催した。
第140回(2024年1月10日・20日合併号(No.1699)情報ダイジェスト参照)に引き続き、企業会計基準公開草案73号「リースに関する会計基準(案)」等に寄せられたコメントへの対応の方向性と個別事項について、審議が行われた。なお、同23日開催の第518回親委員会でも同テーマについて審議された。

■他の会計基準との関係(貸手における知的財産のライセンスの供与)

公開草案では、貸手において知的財産のライセンスの供与を本会計基準案等の適用範囲に含めないことを提案していた。これに対して、「借手と同様に本会計基準を適用可能とすることが適当である」とのコメントが寄せられていた。また、専門委員からも、「少なくとも貸手による知的財産のライセンスの供与について収益認識会計基準を適用することを強制するのではなく、本会計基準案等の任意適用を認めるべきである」との意見が聞かれていた。
事務局は、「リースの貸手が、製品または商品を販売することを主たる事業としていない企業の場合には、貸手が知的財産のライセンスの供与をリースする場合であっても本会計基準案の範囲に含めることができる」とする修正案を示した。
専門委員および、第518回親委員会委員から、異論は聞かれなかった。

■借手における維持管理費用相当額

公開草案に寄せられたコメントとしては、「『リースを構成する部分と構成しない部分』の区分に関して、借手において維持管理費用相当額の取扱いの選択適用を認めるべき」との意見が聞かれた。
前回議論では、事務局は次の案1、案2を提案し、維持管理費用相当額の控除を認めない案1を事務局案としていた。

(案1)公開草案のとおり。
(案2)維持管理費用相当額であることが明らかであるか、または維持管理費用相当額を合理的に見積ることが可能である場合に限り、維持管理費用相当額を借手のリース料から控除する代替的な会計処理の選択適用を認める。

専門委員から賛否両論が聞かれたため再度分析を行い、事務局は、維持管理費用相当額を契約の対価から控除する方法を一律に適用することは難しいと考えられることや、案2についても、維持管理費用相当額を控除できるリースと控除できないリースが同一企業内で混在することとなるという課題があるため、前回同様、案1を提案した。
専門委員からは、賛意も聞かれたが、「維持管理費用相当額を控除して、企業内で混在しない場合には代替的な取扱いを設けては」との意見も聞かれた。
第518回親委員会では、案1の提案に異論は聞かれなかった。

■サブリース取引(利息相当額の配分)

公開草案では、IFRS16号「リース」と同様に、ヘッドリースとサブリースを2つの別個の契約として、借手と貸手の両方の会計処理を行うことを提案している。
これに対して、「サブリース取引に係るヘッドリースの会計処理について、利息相当額を定額で配分することを認めるなどの措置が必要である」とのコメントが聞かれた。
事務局は「このコメントは、一括借上契約におけるサブリース取引の会計処理について問題提起されているものであるが、一括借上契約はヘッドリースとサブリースの契約条件が同一ではないため、サブリース契約における受取リース料に係る収益の計上額とヘッドリース契約における減価償却費および支払利息の合計での費用計上の対応関係が図られないことについては一定の限界がある」とし、本公開草案を維持すると回答した。
専門委員からは賛意が聞かれた。
第518回親委員会でも、おおむね賛成意見が聞かれた。

【会計】GM課税の会計処理・開示の実務対応報告案のコメント対応、検討─ASBJ、税効果会計専門委

去る1月22日、企業会計基準委員会は、第90回税効果会計専門委員会を開催した。
実務対応報告公開草案67号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い(案)」等のコメント対応について審議された。
なお、同23日開催の第518回親委員会でも同テーマについて審議された。その際、事務局から、3月までに最終化したい旨が示された。
主なコメントとその対応案は次のとおり。

■連結財務諸表における区分表示・注記

「第2の柱に関するIAS12号『法人所得税』の修正では、第2の柱の法人所得税を区分して開示することが求められているので、連結財務諸表における区分表示または注記を認めるべき」とのコメントに対して、グローバル・ミニマム(GM)課税制度に係る法人税等については、グループの利益(所得)に対する課税額という点では、他の法人税、地方法人税、住民税および事業税(所得割)と同様であるため、修正しない案が示された。
専門委員から「IFRS適用企業との比較可能性や国際的整合性を懸念するコメントであり、それを踏まえて検討してほしい」との意見が聞かれた。また、第518回親委員会でも「GM課税額の見積りは不確実性が高く、見積りの精度が違う税額が混在してしまう。区分表示すべき」との意見が聞かれた。

■法人税等会計基準の定めに従う旨の明確化

「GM課税制度により納付する税金について、法人税等会計基準5項に従い損益計上する会計処理を行うことを明示すべきであり、仮に発生源泉が明らかでない等の理由で損益処理を求めるのであれば、損益として計上することを明示すべき」とのコメントに対して、公開草案6項を次のように修正する案が示された(太字部分を追加)。

6 グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等については、対象会計年度となる連結会計年度及び事業年度において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき当該法人税等の合理的な金額を見積り損益に計上する。

【会計】パーシャルスピンオフの会計処理、コメント対応進む─ASBJ、企業結合専門委

去る1月22日、企業会計基準委員会は第111回企業結合専門委員会を開催した。
第110回(2024年1月10日・20日合併号(No.1699)情報ダイジェスト参照)に引き続き、「パーシャルスピンオフの会計処理」について審議された。なお、同23日開催の第518回親委員会でも同テーマについて審議された。

■「共通支配下の取引である組織再編に類似」とする記載の見直し

自己株式等会計適用指針案38-2項に記載のある「共通支配下の取引である組織再編に類似」としているのは、共通支配下の取引の解釈を広くするもので、他の組織再編の会計処理への影響が懸念されるおそれがあるとして、記載の見直しを求めるコメントが寄せられた。
事務局から、次の2案が示された。

(案A)公開草案から変更しない。
(案B)共通支配下の取引である組織再編に類似した状況である旨を削除する。

専門委員からは、案Bへの賛意が多く聞かれた。第518回親委員会でも案Bへの賛意が多く聞かれた。

■当期税金の支払が生じる場合の取扱い

自己株式等会計適用指針案10項(2-2)で定められた取引において当期税金の支払が生じる場合、当該税金を法人税等会計基準5項に従い損益に計上すべきか否かの記載を求めるコメントが寄せられた。
事務局は、損益に計上する旨を結論の背景に記載する対応案を示した。
専門委員からは、賛意が聞かれたものの、「現物配当という持分所有者との取引によって生じたものに対して課されているのではなく、あくまでも、配当前に行われる評価損益から生じたものであり、配当から生じたものではないことを記載することでさらに明確化されるのでは」との意見も聞かれた。事務局から検討する旨の回答があった。

■非相互取引であることで会計上の取扱いを分ける理由の明確化

自己株式等会計適用指針案38-2項では、保有する完全子会社株式の一部を配当する場合の会計処理について、子会社株式の配当は非相互取引であると示しているが、相互取引および非相互取引には明確な定義が示されていない。そのため、両者の明確な定義を示すとともに、どちらに該当するかによって会計上の取扱いを分ける理由の記載を求めるコメントが寄せられた。
事務局は、「相互取引であるか非相互取引であるかを論拠として会計処理を定めていないため、特段の対応は行わない」と回答した。
専門委員からは、「論拠にかかわっていないのなら削除するのも1つの案では」という意見が聞かれた。
事務局は「削除した場合に内容としてうまくつながるか検討したい」と回答した。
第518回親委員会でも削除したほうがいい旨の意見が聞かれた。


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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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