【会計】ISSB公開草案に対するコメントの審議、進む─SSBJ設立準備委
去る5月26日、SSBJ設立準備委員会は第8回会合を開催した。第7回会合(2022年6月1日号(No.1645)情報ダイジェスト参照)に引き続き、ISSB公開草案「IFRS S1号『サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項』」(以下、「S1基準案」という)および「IFRS S2号『気候関連開示』」(以下、「S2基準案」という)に対するコメント文案について審議が行われた。
■ S2基準案
(1) スコープ3排出(報告企業のバリューチェーンで発生する間接的な温室効果ガスの排出)
委員から「慎重な書きぶりが求められると考える。コメント案には『段階的に導入を図るべきであると考える』と書いてあり同意するが、どのように段階的な導入を図るのかまで書いたほうがよいのではないか」という意見が挙がった。
事務局は「スコープ3は重要であるが足元に課題もあるなか、段階的な導入をどういったロジックで伝えればよいのかが大切だと考える」と回答した。
⑵ シナリオ分析(不確実な条件下で、将来事象の結果の潜在的な範囲を識別および評価するプロセス)
事務局はシナリオ分析について、すべての企業に対し原則として実施を求める提案に反対し、シナリオ分析を行うことに合理的な理由を見出せる企業にのみ開示を求めることを提案することを考えている。
この点、委員からの「この提案内容はかなり慎重だと感じる。開示している企業の取組みをみても、自社にとってsignificant な水準のリスクは何か、それが一定の裏づけをもって示すことができるツールとしてシナリオ分析があると考えている」という意見に対し、事務局は「ご指摘のとおり、シナリオ分析を用いたほうが企業のリスクや機会を説明しやすい。すべての企業にこの基準が求められたときに、ワークする形になるかどうかが重要だと考える」と回答した。
(3) 「GHGプロトコル」の使用
事務局は、GHGプロトコルの使用に賛成する一方、ISSBの公表物でないことから「GHGプロトコル」という名称に言及しないことも検討すべきと提案している。この点、委員からの「言及がなくなることにより、企業間の比較可能性が失われることを懸念している」との意見に対し、事務局は「たとえば、GHGプロトコルを例示することで比較可能性を担保できると考えている」と回答した。
⑷ 産業別指標
委員から「各国等の法域における規制とのレリバンスが高い情報を開示していかないと、移行リスクを評価できる開示につながらないのではないか。グローバルにすべての指標を共通化していくことが目的にかなわない場合も多いということについての見解を明確にしたうえで、移行リスクを表す情報を開示していくことが重要であると考える」との意見が聞かれ、事務局は「検討する」と回答した。
また、「テーマ別とは違った切り口のため、開示の重複が発生するのでは」との意見に「必ずしも重複するわけではないと考える。ただ、基準によって想定される開示の全体像がみえにくい点をコメントしたい」と回答した。
■ S1基準案
前回の審議を踏まえ、修正が加えられたコメント案について審議された。特に、意見が多く聞かれたグローバルベースラインについてのコメントは、グローバル基準となるには世界中から採用可能と認められる必要があると記載するなど、全面的な書き直しが行われた。
また、委員から「質問6に書かれている『つながり』という概念について、整合性を理解できるようにすることを求めているのか。どんな場合につながりのある情報となるのか、具体的明示があったほうがよい」といった意見が聞かれ、事務局は「再検討する。具体的明示も入れていきたい」と回答した。
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