旬刊『経理情報』2024年11月10日号(通巻No.1726)情報ダイジェスト②/会計
【会計】バーチャルPPAの会計処理に関する論点を検討─ASBJ、実務対応専門委
去る10月22日、企業会計基準委員会は、第162回実務対応専門委員会を開催した。
前回(2024年10月1日号(№1722)情報ダイジェスト参照)に引き続き、バーチャルPPAの会計上の取扱いについて審議が行われた。
主な審議事項は次のとおり。
■会計処理に関する基本的な考え方
日本公認会計士協会から、①デリバティブの該非、②会計処理を行う単位、について検討することが提案されていた。その理由として、「バーチャルPPAにおいては、非化石証書を発電事業者から需要家に移転し、『発電量×(PPA契約上の固定価格―卸電力市場で決定される電力価格)』により計算される金額を発電事業者と需要家との間で決済する(差金決済)ことが一般的である。この差金決済という特徴に着目し、バーチャルPPAをデリバティブとして取り扱うか否かが論点である」ことが示されている。
これを受けて、事務局は次のように分析した。
■非化石証書の会計処理
非化石証書に関する会計処理を検討するにあたり、事務局は次のとおりに論点を整理した。
前記の論点のうち、(ⅰ)について、需要家は契約で指定された発電設備の発電量に相当する量の非化石価値を取得することをあらかじめ約束しているため、非化石価値システムを通じて非化石価値が発電事業者から需要家に移転する前から実質的に発電量に相当する量の非化石価値を受け取る権利および対価の支払義務が生じている。この場合、①発電時、②一般送配電事業者における発電量の通知時点、③発電量の認定時点のいずれかの時点で負債を認識する、との分析を事務局は示した。
これを踏まえ事務局は、需要家は対価に関する実質的な支払義務を発電時から負っているが、本プロジェクトが対象とする取引の目的が非化石証書の取得であることを踏まえると、非化石価値が認定され、需要家の支払義務が確定した発電量の認定時点で負債を認識するとの提案を行った。
専門委員からは、「取引の実態分析をもう少し行ってほしい」との意見が聞かれた。
【会計】選択適用可能なオプションの開示、検討─ASBJ、金融商品専門委
去る10月24日、企業会計基準委員会は、第227回金融商品専門委員会を開催した。
金融資産の減損について、審議が行われた。主な審議事項は次のとおり。
■オプションの開示
これまで提案された、企業の判断により選択適用できる個別のオプションの開示に関して、次のような事務局案が示された。
専門委員からは、「①の方針に賛成。②、③は重要性が乏しいのでは」との意見が聞かれた。
■今後の審議の進め方
金融商品の減損・信用リスクの開示に関するIFRS会計基準を取り込むにあたっての審議の進め方について、次の事務局案が示された。
⑴ 減損に関する会計基準
次の順序で審議を進める。
⑵ 開示に関する基準
次の順序で審議を進める。
専門委員から特段異論は聞かれなかった。
【会計】サステナビリティ開示の後発事象に関する実務対応基準の開発を検討─SSBJ
去る10月16日、SSBJは第41回サステナビリティ基準委員会を開催した。
3月29日に公表されたサステナビリティ開示ユニバーサル基準案(以下、「適用基準案」という)およびサステナビリティ開示テーマ別基準案に寄せられたコメントへの対応案について、審議が行われた。
主な審議事項は次のとおり。
■後発事象
会計上、会社法監査報告書日後、金商法監査報告書日までに発生した事象について、IFRS会計基準においては修正後発事象として修正を要する一方、わが国会計基準では、開示の単一性を重視し、開示後発事象に準じた取扱いをすることとされている。
この点、適用基準案74項では修正後発事象、75項では開示後発事象に準じた定めとなっているが、会社法監査報告書日後、金商法監査報告書日までに、報告期間の末日現在で存在していた状況についての情報を入手したとき、IFRS会計基準適用企業では74項に基づき開示を更新する必要がある一方、わが国会計基準適用企業では75項に基づき当該情報を開示することになるのか、明確化を求めるコメントが寄せられていた。
事務局は、報告期間の末日後に入手する、報告期間の末日現在で存在していた状況についての情報を、「①財務諸表に関連する後発事象に関する情報」と「②財務諸表に関連しない後発事象に関する情報」に分け、次のように整理した。
なお、前記の取扱いについてはわが国特有の論点であるため、追加的なガイダンスがなければ理解が難しいことが想定されるとの懸念が示された。
そこで事務局は、追加的なガイダンスを公表するにあたって、次の文書のいずれかとすることが考えられるとした。
このなかで強制力があり、かつISSB基準との整合性にも鑑み、⑴④のサステナビリティ開示実務対応基準として開発し、新たに公開草案として公表することを提案した。
委員からは、ISSB基準との乖離や、公開草案とすることで来年3月公表に間に合わないのではないかと懸念の声も聞かれた。
事務局は、日本特有の問題であるため対応が必要とし、公開草案を経ても3来年月公表に変わりはないと回答した。
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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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