旬刊『経理情報』2024年11月1日号(通巻No.1725)情報ダイジェスト/会計
【会計】金融資産の減損における満期保有目的債券等の議論、検討─ASBJ
去る10月8日、企業会計基準委員会は、第534回企業会計基準委員会を開催した。
主な審議事項は次のとおり。
■金融資産の減損
第226回金融商品専門委員会(2024年10月20日号(№1724)情報ダイジェスト参照)に引き続き、金融資産の減損に関する審議が行われた。
主な審議事項は次のとおり。
⑴満期保有目的の債券およびその他有価証券に分類される債券
満期保有目的の債券およびその他有価証券に分類される債券の減損議論について、金融商品の分類・測定に関する会計基準の開発の進め方との関係を踏まえて大局的な観点での分析が行われた。
事務局は3つの案(図表)を示し、委員に、案2および案3いずれによって進めるかについて意見を求めた。
委員からは、「案3ではすべての債券が範囲となり影響が大きく、分類・測定の議論に時間がかかりすぎる」など、案3ではなく、案2を支持する意見が多く聞かれた。また、「案3をもとに、何が実務上困難で、簡便法などを入れるかといった議論の進め方のほうが早いのでは」との意見も聞かれた。
⑵ステップ4の債権単位でのSICR
ステップ4(信用リスクに関するデータの詳細な整備がなされていない金融機関に適用される会計基準の開発)における債権単位での信用リスクの著しい増大の判定(SICR)について聞かれた意見への対応について審議された。
正常先の取扱いに関して、「①優良格付」、「②中間的な格付」、「③SICRが生じているとみなす格付」に分類するアプローチ1が提案されていた。これに聞かれた意見を踏まえ、③の債務者に係る債権等についてSICRが生じていないと反証できる場合として、「債務者単位で前期末において債券等が存在しない場合」を追加する再提案がされた。
また、常に全期間の予想信用損失に等しい額で測定するアプローチ3をオプションとする案について、オプションを採用する金融機関から強いニーズが聞かれなかったので、アプローチ3をオプションとして採用しないとの再提案がされた。
委員からは、事務局案に賛意が聞かれた。
■企業会計基準等の年次改善
第533回親委員会(2024年10月10日号(№1723)情報ダイジェスト参照)に引き続き、企業会計基準等の要変更事項の確認作業において、企業会計基準等の改正(公開草案を公表するもの)の手続を経て対応するものの検討が行われた。
特別法人事業税に関する法人税等会計基準等の改正について、事務局から、最終基準公表後最初に開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用し、公表日後最初に終了する連結会計年度および事業年度の年度末に係る(連結)財務諸表から早期適用できるとする案が示された。
また、経過措置として、本改正に伴う会計方針の変更について、適用初年度の期首から新たな会計方針を適用することを認める等の案が示された。
委員からは、特段異論は聞かれなかった。
【会計】スコープ2温室効果ガス排出におけるロケーション基準およびマーケット基準の検討、進む─SSBJ
去る10月3日、SSBJは第40回サステナビリティ基準委員会を開催した。
3月29日に公表されたサステナビリティ開示ユニバーサル基準およびサステナビリティ開示テーマ別基準の公開草案に寄せられたコメントへの対応案について、審議が行われた。
主な審議事項は次のとおり。
■スコープ2温室効果ガス排出におけるロケーション基準およびマーケット基準
ISSB基準では、ロケーション基準によるスコープ2温室効果ガス排出量の開示を要求したうえで、マーケット基準によるスコープ2温室効果ガス排出量の開示は要求しない代わりに、主要な利用者の理解のために必要な契約証書を企業が有している場合、当該「契約証書に関する情報」を提供することを要求している。
気候基準案では、ロケーション基準によるスコープ2温室効果ガス排出量を開示しなければならない(56項)としたうえで、次のように提案している。
これに対して、契約証書を企業が有していない場合、マーケット基準によるスコープ2温室効果ガス排出量の開示を求めているように読めるとのコメントが寄せられた。
事務局は、契約証書を企業が有していない場合は、マーケット基準によるスコープ2温室効果ガス排出量の開示を求めることは意図していないため、57項を次のとおり修正すると提案した(太字は修正箇所)。
■内部炭素価格
気候基準案を審議する過程において、同じ目的で複数の内部炭素価格を意思決定に用いている場合における取扱いに関する要望が聞かれていたことや、米国や欧州のサステナビリティ開示基準においては、同じ目的で複数の内部炭素価格を意思決定に用いている場合の取扱いが定められていることから、気候基準案においても、85項、86項にその旨を追加している。
これに対して、同じ目的で複数の内部炭素価格を用いている場合、内部炭素価格を範囲(最小値と最大値)で開示することが認められている(85項)が、誤解を招く可能性があるため、それぞれの内部炭素価格の開示を求めるか、または、少なくとも範囲で開示することとした理由の説明を求めることが必要であるという意見や、ISSB基準には定めのない、複数目的で使用されている場合の開示が明確化されている(86項)が、国際的な整合性のためであれば、複数目的で使用されている場合の開示の明確化は不要である等のコメントが寄せられた。
これらを受けて、事務局は、85項、86項を気候基準案から削除する再提案を示した。
委員からは、「米国や欧州では複数の内部炭素価格に関する開示の要求を明確化しているなかで日本だけ削除してしまうと、保証実務等にも影響が出るのでは」などの意見が聞かれた。
事務局は「基準で強制するのではなく、解説記事等において見せ方の一例として示していく」と回答した。
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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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