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【会計】第3号電子決済手段の取扱いを検討─ASBJ、実務対応専門委

去る11月2日、企業会計基準委員会は第151回実務対応専門委員会を開催した。前回(2022年11月10日号(No.1660)情報ダイジェスト参照)に引き続き、資金決済法上の「電子決済手段」の発行・保有等に係る会計上の取扱いについて審議された。前回の第1号電子決済手段に関する審議を踏まえ、第3号電子決済手段(特定信託受益権)が取り上げられた。

■認識および認識の中止の時点

前回、事務局は、第1号電子決済手段について、認識または認識の中止の時点を受渡日として定めることを提案した。
第3号電子決済手段については、受益証券が発行されていない場合の譲渡の効力は、譲渡人と譲受人の合意により生じるが、資産の利用による便益を享受できる時点は、第1号電子決済手段と同様であると考えられる。そこで事務局は、第3号電子決済手段の認識および認識の中止の時点も受渡日として定めることを提案した。

■測 定

前回、事務局は、第1号電子決済手段について、価値の尺度を表す券面額で測定すること、また、信用リスクに関する取扱いを特段定めないことを提案した。
この点、第3号電子決済手段は、次のような性質を有すると考えられる。

  • 送金・決済手段に用いられることが想定されている

  • 法定通貨との価値の連動性が確保され、送金・決済手段の価値の安定を図るしくみとなっている

  • 信託財産の全額が預貯金により分別管理され、第3号電子決済手段の発行価額と同額の現金が確保されている

  • 分別管理により信託財産の倒産隔離が図られている

以上から、事務局は第3号電子決済手段について、原則として、券面額に基づく価額を貸借対照表価額とし、また、取得価額と券面額が異なる場合には、差額を当期の損益として計上することを提案した。
専門委員からは、おおむね賛意が示されたが、「第3号電子決済手段の性質の判断にあたり、分配や利息の発生の有無は無視できない項目。考え方を明確にしてほしい」などの意見が聞かれた。

■発行者における会計処理

第3号電子決済手段は金銭の信託であり、その発行者は受託者である信託となる。
事務局は、これまでASBJが公表してきた会計基準等では、信託における受託者の具体的な会計処理について明らかにされていないこと、また、信託法上、信託の会計は一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとされ、その慣行には、これまで定着している信託会計の慣行も含まれると考えられることから、第3号電子決済手段のみ具体的な会計処理について特段定めないこととする提案をした。
専門委員からは、特段の異論は聞かれなかった。


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