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シカゴ大学|【連載】Study Abroad Journal—留学体験記—(第3回)

私は、オバマ元大統領が教鞭をとっていたことでも知られる、シカゴ大学のロースクールで、2021年9月~2022年6月までLL.M.留学をしていました。

少人数ならではの親密な交流

私は、教職員や他の学生と交流する機会が多い学校に行きたいと思っていたため、留学先として、学生の数が少ないことを特に重視していました。
シカゴ大学ロースクールの学生全体約630人のうち、LL.M.の学生は70人~80人です。そして、私が通っていた年のLL.M.には29カ国から78人が参加していたところ、全員とつながりを持ち、世界にまたがるネットワークを構築することができました。日々の学生生活のなかで、言葉も文化もバックグラウンドも異なる人々と、各々の日々の小さな違いや気づきを共有しあうという経験は、新たな発見の連続であるだけではなく、自分のこれまでの考えを見直す良いきっかけともなりました。

少人数であることを活かした授業も多く提供されており、たとえば、20人~30人規模の豊富な授業や、1年を通じて教員が学生を家に招きゼミを行うといったユニークな授業(Greenberg Seminar)もありました。学生との交流に積極的な教職員も多く、授業のときだけでなく、ラウンジでの朝食(Coffee Mess)、授業の合間のワインと軽食(Wine Mess)、放課後の飲み会といった授業外のさまざまなイベントにおいて、教職員ともより深く交流をすることができました。また、シカゴ大学では全体の人数が少ないことに加え、ほとんどの授業がJ.D.(Juris Doctor degree)の学生と合同で行われるため、J.D.の学生と触れ合う機会はもともと多いのですが、これらのイベントを通じて、J.D.の学生とも仲良くなることができました。 

履修科目のバラエティーの豊富さ

私にとって、コーポレートとライフサイエンスの法律に関する授業と、M&Aに関連するビジネススクールの授業といった、自身の専門分野を高めるための授業を履修できることも、留学における重要なポイントでした。シカゴ大学では、コーポレートで幅広い分野の授業が選択できることに加え、最先端のライフサイエンスのレギュレーションに関する授業も選択できました。また、ビジネススクールの授業の一部がロースクールの単位として認められていたため、世界的に有名な経営大学院であるChicago Boothの授業も履修することができました。Corporate and Entrepreneurial Financeでは、シミュレーションを通じて企業価値評価について学ぶとともに、法律事務所からPEやVCに転職した弁護士等のスピーカーから話を聞き、法律家だけでなくビジネスマンとしての知識と経験を得ることもできました。

シカゴ大学には、実務的な科目も多く存在します。たとえば、グローバル企業のコンプライアンス・オフィサーを務める弁護士によるCorporate Compliance and Business Integrationという授業においては、実際の会社を想定して、法的リスクにとどまらないリスクの発見およびその対応策についての検討を行い、模擬取締役会でのプレゼンテーション等を行いました。法律事務所に勤務していると、企業内部の立場からコンプライアンスを検討する機会は自ずと限られてしまうため、貴重な経験をすることができたと思っています。

また、シカゴ大学は3学期制であることから、限られた期間のなかでより多くの種類の授業を履修できる点も特徴的です。ニューヨーク州の司法試験を受ける場合には、指定の授業で必要単位を満たす必要があることから授業選択の幅がどうしても狭まってしまいますが、3学期制であったことにより他校に比べて比較的柔軟に授業を選択することができました。 

シカゴという街の魅力

シカゴは、ニューヨーク・ロサンゼルスに次ぐ全米3位の大都市としても非常に有名です。大学内のイベントだけではなく、近代建築、美術館、博物館、スポーツ観戦(野球、アイスホッケー、バスケットボール、アメリカンフットボール等)、観劇、国籍に富むレストラン、さまざまな国からの移民が作る数々のコミュニティ等、幅広い分野の文化とアクティビティーを楽しむことができる点もシカゴ大学の魅力です。シカゴは寒いというイメージがありますが、夏には五大湖の1つであるミシガン湖沿いでバーベキューをしたり、泳いだりすることも可能です。

私はこれまで米国の5つの都市に住んだことがありますが、その中でもシカゴは住みやすい街でした。治安に少し不安はありますが、上記の文化とアクティビティーの豊富さに加えて、街の適度なサイズ感、住む人々の朗らかな人柄、郊外にある日本人コミュニティー、シカゴ・オヘア国際空港からの豊富な路線数等、バランスの良い大都市だと思います。また、シカゴは大都市でありながら、ニューヨークやロサンゼルスと比べて物価が安いのも特徴的です。 

1年を終えて

LL.M.の1年間はあっという間に過ぎてしまいましたが、非常に濃密で、大いに自分を成長させることができた期間だったと感じています。特に、1つの国にしかいなかったにもかかわらず、それ以外の異なる国々の学生とも密に交流する機会を持てたことは、何ものにも代え難い貴重な経験であり、自分の財産となりました。これから留学に行かれる皆さまの留学生活が素敵なものとなりますよう、心からお祈りしております。

著者略歴

井上ゆりか(いのうえ・ゆりか)Inoue Yurika
森・濱田松本法律事務所 弁護士。ミシガン大学工学部電気工学科卒業、同大学大学院工学研究科医用生体工学専攻修了。東京大学法科大学院修了。シカゴ大学ロースクール修了。現在Covington & Burling法律事務所にて執務中。主な著書に『ヘルステックの法務Q&A』(商事法務、2019)など。


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 本記事は、月刊誌『ビジネス法務』掲載記事を一部修正したものです。
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