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登録申請書はどう書くの?|【連載】消費税インボイス対応ノート[登録申請編]第4話

前話は登録申請用紙や提出に関する留意点を解説しました。この第4話では実際に書類に記入していきましょう。画像をみながら、ぜひ皆さんも申請書を埋めてみてください。今回は税務署に直接書面で提出するまたは郵送される方を対象にしています。スマホやPCで申請される場合は、第5話以降で解説します。 

今回は個人事業主が、紙の書面でインボイス発行事業者の登録をする方法を紹介します。
書面で登録申請をする場合、登録申請用紙が必要になりますが、最寄りの税務署でもらってくるか、ホームページでプリントアウトする方法(第3話参照)で入手できます。登録申請だけであれば登録申請書を2枚準備し、公表事項の追加をする場合には、公表(変更)申出書も1枚準備しましょう。

  • 登録申請書(+公表(変更)申出書)

  • マイナンバーカードなどのマイナンバーと身分証明書のコピー

ステップ1 まずは登録申請書(国内事業者用)を入手しましょう

次の申請書の罫線部分が基本的な記載項目になり、破線部分は免税事業者の場合にのみ記載する項目となります。 

皆さん、どうでしょうか? ぱっと見た感じだと、思ったより簡単そうではないでしょうか。書面での申請は、記載する内容さえ理解していれば、申請書の作成にはそれほど手間はかかりません。ただし、申請する人の状況に応じて書くべき箇所や内容が異なってくる点に注意が必要です。
 
たとえば、登録申請書に記載する箇所は、現時点で課税事業者であるか、免税事業者であるかによって異なります。また、いつからインボイスの登録を受けたいかによっても異なります。なお、令和6(2024)年4月1日以降に登録を受けたい場合には、インボイス制度開始日(令和5年10月1日)以降に登録申請をすることが求められているため、以下ではインボイス制度開始日から令和6年3月31日までの間に登録を受けたい場合の記載方法を紹介したいと思います。 

ステップ2 続いて公表(変更)申出書を入手しましょう(任意)

申請書同様、罫線部分が基本的な記載項目です。 

ステップ3 登録申請書(国内事業者用)1枚目の記載内容を確認する

登録申請書(国内事業者用)1枚目の記載内容は、上段と中段に記載する項目があります。上段はすべての人が記載する必要がある個人情報の項目になります。

-個人情報

左上から①提出日②提出先の税務署名を記載し、申請者の欄の「住所又は居所」には、③自分の郵便番号、住所、フリガナ、電話番号を記載します。
その下の「納税地」には、原則として④「住所又は居所」と同じ内容を記載することになりますが、住所とは別の場所に事務所(オフィス)を持っていて、その事務所を納税地として税務署に届出をしている場合には、事務所の住所を「納税地」の欄に記載する必要があります。つまり、④は③の記載内容または事務所の住所を記載することになります。
「氏名又は名称」には⑤自分の氏名を記載してください。個人事業主の場合、代表者氏名と法人番号は記載不要です。 

-課税事業者か免税事業者か

中段は、登録申請書の提出時点において、課税事業者であるか免税事業者であるかにより記載する内容が異なります。課税事業者は課税事業者の枠にチェックを入れ、免税事業者は免税事業者の枠にチェックを入れます。

課税事業者はこちらにチェック
免税事業者はこちらにチェック

ステップ4 登録申請書(国内事業者用)2枚目中段の記載内容を確認する

登録申請書(国内事業者用)2枚目の記載内容は、上段と中段に記載する項目があります。上段は現時点で免税事業者である場合に記載する項目(ただし、氏名または名称の欄の記載は必要です)であり、中段はすべての人が記載する項目になります。
記載するといっても、中段は、該当する項目にチェックを入れるだけです。インボイスの登録は、登録申請書を提出すれば無条件に登録できるわけではなく、この中段のチェック項目(要件)をクリアしている必要があります。それでは中段の内容を見てみたいと思います。 

ステップ5 登録申請書(国内事業者用)2枚目上段の記載内容を確認する

登録申請書(国内事業者用)2枚目上段は、ステップ3の事業者区分の項目で免税事業者にチェックを入れた人が記載する必要がある項目です。また、記載する内容は、登録希望日などによって異なってきます。

(1)免税事業者インボイス制度開始日(令和5年10月1日)に登録を受けたい場合

まず、一番利用者が多いと思われる、登録申請書の提出時点が免税事業者で、インボイス制度開始日(令和5年10月1日)から登録を受けたい場合の記載例を紹介します。
最初に右上の①氏名を記載し、左上のチェックボックスに②チェックを入れます。
次に、その下の個人番号欄に③マイナンバーを記載し、④生年月日⑤事業内容を記載すれば完成です。なお、インボイス制度開始時点(令和5年10月1日)から登録を受けたい場合には、⑥登録希望日を記載する必要はありません。また左下のチェックボックスには、⑦チェックを入れる必要はなく、⑧課税期間の初日も記載する必要はありません。   

なお、令和5(2023)年から簡易課税制度の適用を受けたい場合には、「簡易課税制度選択届出書」をその課税期間中(令和5年12月31日まで)に提出することで適用を受けることができる特例があります。ただし、この特例を受ける場合には、届出書にチェックを入れ、令和5年分から適用する旨を記載する必要があります。

チェックを入れ、参考事項に「令和5年分から適用する」と記載する。

(2)免税事業者が令和5年10月2日から令和5年12月31日までの間に登録を受けたい場合

次に、登録申請書の提出時点が免税事業者で、インボイス制度開始日の翌日から令和5(2023)年12月31日までの間に登録を受けたい場合の記載例を紹介します。何らかの理由でインボイス制度開始日(令和5年10月1日)にはインボイスの登録を受けることを希望せずに、その翌日(10月2日)以降で令和5年12月31日までの間に登録を受けたい場合に参考としてほしい内容です。
(1)の内容に加え、⑥に登録希望日(令和5年10月2日から令和5年12月31日までの日)を追加で記載してください。 

なお、令和5年から簡易課税制度を選択したい場合には、簡易課税制度選択届出書をその課税期間中(令和5年12月31日まで)に提出してください

(3)免税事業者が令和6年1月1日から令和6年3月31日までに登録を受けたい場合

登録申請書の提出時点が免税事業者で、令和4年の消費税がかかる売上が1,000万円以下であるなどの理由で令和6(2025)年も免税事業者である予定の人が、令和6年1月1日から令和6年3月31日までに登録を受けたい場合の記載例です。インボイス制度開始日(令和5年10月1日)を含む令和5年にはインボイスの登録を望まず、翌年の令和6年からインボイス登録を望む場合に参考としてほしい内容です。
(1)の内容に加え、⑥に登録希望日(令和6年1月1日から令和6年3月31日までの日)を追加で記載してください。

なお、令和6年から簡易課税制度を選択したい場合には、簡易課税制度選択届出書をその課税期間中(令和6年12月31日まで)に提出してください。

(4)令和6年から課税事業者(強制/選択)になる人が、令和6年1月1日に登録を受けたい場合

登録申請書の提出時点は免税事業者で、次の①または②に該当する方が、令和6年1月1日に登録を受けたい場合の記載例です。
① 令和4年の消費税がかかる売上が1,000万円を超えるなどの理由で令和6年より課税事業者となる場合
② 令和4年の消費税がかかる売上が1,000万円以下であるなどの理由で令和6年も免税事業者の予定だったが自らが希望して課税事業者選択届出書を提出して課税事業者となる場合
 
今回は少し複雑ですが、(3)の場合と違い、令和6年に課税事業者となる人、またはこの登録申請書を提出してではなく、「課税事業者選択届出書」という書類を令和5年12月31日までに提出して令和6年に課税事業者となる人が、翌年の令和6年からインボイス登録を望む場合に参考としてほしい内容です。
 
このケースでは、これまでのケースと異なり、登録申請書を提出することにより課税事業者になるわけではないため、記載内容が大きく異なります。左上の②ではなく、左下の⑦にチェックを入れる必要があり、⑧には令和6年1月1日と記載します。 

なお、令和6年から簡易課税制度を選択したい場合には、原則どおり簡易課税制度選択届出書を、その課税期間の初日の前日まで(令和5年12月31日まで)に提出する必要があるため注意してください。

ステップ6 公表(変更)申出書の記載内容を確認しよう

以上が申請書の書き方となります。ステップ6では、ステップ2で入手した公表(変更)申出書の書き方を解説します。
公表(変更)申出書の記載内容は、上段と中段に記載する項目があります。

上段はすべての人が記載する必要がある個人情報の項目です。
左上から①提出日②提出先の税務署名を記載し、申請者の欄の「住所又は居所」には、③自分の郵便番号、住所、フリガナ、電話番号を記載します。その下の「氏名又は名称」には④自分の氏名を記載してください。個人事業主の場合、法人番号は記載不要です。登録番号も登録を受けていなければ記載する必要はありません。

中段は、国税庁の「インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト」に追加したい項目(⑦主たる屋号⑧主たる事務所の所在地等)と変更したい項目(住民票に併記されている⑨通称または旧姓(旧氏)氏名)です。⑩公表したい項目、変更したい項目にチェックを入れて、その内容を記載します。
公表したい項目は、自らが希望する内容がそのまま公表されることになりますが、変更したい項目については、住民票に併記されている記載内容に限られ、⑪氏名に代えて公表するのか、氏名に併記して公表するのかを選択する必要があるため希望するチェックボックスにチェックを入れてください。 

ステップ7 さあ提出しよう

登録申請書の記入が終わり、(公表事項の追加をする場合の)公表(変更)申出書の記入も終われば、いよいよ提出です。とその前に、記載した登録申請書や公表(変更)申出書をコピーしておき、自分用の控を作っておくことをおすすめします。
 
紙の書面をそのまま提出してしまうと、登録通知書が届くまで皆さんのお手元に何も書面が残らないことになります。後から提出した内容について確認のしようがありません。また、税務署に持参して提出する際、または各国税局のインボイス登録センターに郵送して提出する際に、提出する書面とあわせ、控用を同時に提出して受領印を押してもらえば、提出した証拠資料として残すこともできます。
 
なお、持参して提出する場合、控用も提出して、その場で受領印を押してもらった後、すぐに返却してもらえます。
郵送して提出する場合には、控用を同封するとともに切手を貼った返信用封筒もあわせて入れておかなければ返却してもらえないため注意してください。なお、郵送が心配な人であれば、税務署に直接持参するか、郵送する場合でも特定記録や簡易書留などの記録が残る方法を選択し、同封する封筒もレターパックなどを入れておくとよいでしょう。
 
次話はスマホで登録申請する場合の留意点をまとめます。

筆者略歴

山口 隆司(やまぐち・りゅうじ)
税理士・社会保険労務士

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