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法人税申告あるいは法人税申告書について解説している書籍の紹介をしようと思います。それぞれの本に特徴がありますので、その特徴にマッチした読み方をしたいものです。当社の定番商品3点を比較しながら紹介しましょう。


昨年入社の新人編集者:夏目くん(仮名)に入社15年目の中堅編集者:春山編集次長(仮名)が4点の書籍について丁寧に解説しています。ちょっと覗いてみましょう。

夏目くん:弊社には数点の法人税申告書の解説書がありますが、同じテーマの本が何点も必要なんですか。

春山編集次長:法人税申告書に限らず、同じテーマの書籍は数点あるのが当たり前だよ。

夏目くん:なぜですか。

春山編集次長:同じテーマでも、読者のレベルに応じて書籍は提供されるでしょ。例えば、偉人の伝記小説でも、子供用もあれば、NHKの大河ドラマの脚本レベル程に詳しいものなど、かなりの種類の書籍があるでしょ。

夏目くん:確かにそうですが、その場合は、別の出版社が出しているのであって、同じ出版社から何点も出さないのではないですか。

春山編集次長:そんなことはないでしょ。別の読者層が想定できれば、同じテーマでも数点の書籍を出版できるでしょ。

夏目くん:なるほど、じゃうちの法人税申告書の解説本はそれぞれどういった読者の方々を想定されているのか、教えていただけますか。

春山編集次長:承知。私の知る限りの範囲でよければ教えるよ。とりあえず、簡単にそれぞれの書籍を紹介しようか。
まずは、高下淳子先生の『やさしい法人税申告入門』だね。

やさしい法人税申告入門 令和6年申告用



春山編集次長:この書籍は今年からリニューアルをして、図表や別表の文字を大きくしたり、レイアウトを工夫して見やすくしています。

本文に掲載されている別表は今までよりもかなり見やすくなっています。

夏目くん:毎年出している年度版は頻繁にリニューアルをするのですか。

春山編集次長:必ず行うということではないけど、読者からの要望であればできる限りお応えするようにするし、著者の先生からの提案でリニューアルすることもありますね。常に、著者も編集者も、読者目線で改善していきたいと思っていますよ。

夏目くん:この本は入門書ですね。

春山編集次長:そうですね。法人税申告書の書き方をマスターしてもらうための入門書です。会社の経理部で税務担当となった方が、まず手に取っていただきたい書籍ですね。
著者の高下先生は、

「「難しいな」というイメージが「なるほど、わかる!」に変わることを確認しながら、ぜひ最後まで読み進めてください。法人税のしくみと決算整理事項の内容を最短距離でつかみ、法人税申告書作成までの基礎知識を身に付けてください。それぞれの税務調整ごとに理解度チェックのための「確認テスト」を用意していますので、「Practice makes perfect!~習うより慣れよ~」の精神でチャレンジしてください。」

とおっしゃっています。

夏目くん:法人税申告書の分野は、企業の税務畑でやっていこうと思えば、必ず通らなければならない壁ですよね。

春山編集次長:そうですね。決算書を作り上げた後に、そのデータを基礎にして法人税を算出するわけですから、会計を理解した先と言っても過言ではないので、壁という表現が正しいかどうかは別にして、企業における部署としては、かなりの専門知識が要求されるということでしょうね。それをマスターするために最初に読む本ということですね。
次は、税理士法人右山事務所の『法人税申告書の書き方と留意点(令和6年申告用)』基本別表編、特殊別表編の2冊について説明しましょう。

法人税申告書の書き方と留意点 令和6年申告用


 

夏目くん:こちらはなぜ2分冊なんですか。

春山編集次長:2冊の合計が700ページを超えるかなりのボリュームになります。その全ページに目を通すにはそれなりの時間を費やすことになります。
また、かなり高額なものとなります。そこで、執筆をされている先生方と当時の編集者とがより良い形を模索した結果、現在の2分冊になったとのことです。

基本別表編には、別表四・五(一)、租税公課、寄附金、交際費、減価償却など、どの会社にも必須となる基本的な申告書を網羅しています。精選された具体事例を用い、税額計算のプロセスと作成の要点がわかるように解説しています。
特殊別表編では特別控除、特別償却、圧縮記帳など、適用されると税額への影響が大きな項目が収録されています。研究開発税制、中小企業投資促進税制、中小企業経営強化税制など、近年の改正でたびたび改正されている面倒な項目を丁寧に解説しています。
経理部には両方揃えておいてもらいたい書籍ですが、個人では、とりあえず必要に迫られた方から手を付ければいいかなという感じですね。

先程の高下先生の『やさしい法人税申告入門』が新人の経理パーソンとか、税理士事務所員を読者対象としている初級レベルとすれば、こちらは、バリバリ申告書を記入していく経理パーソンやサクサクとチェックしていく税理士事務所員を対象とした中級レベルといったところかな。
申告時には、脇において、いつでも見られるようにしておけば、担当者は落ち着いて業務をこなせるでしょ。

夏目くん:最後は、齊藤一昭先生の『法人税申告書の最終チェック(令和6年5月申告以降対応版)』についてですね。

法人税申告書の最終チェック 令和6年5月申告以降対応版

春山編集次長:トリを飾るのは最終チェックですね。タイトルのとおり、最終でチェックするための書籍なんですよ。
初級、中級ときて、最後に上級者向けとなるのかな。
まさに、キャッチコピーのとおり、「申告書を書くためではなくチェックするための本」なんですよね。

当時の編集者に聴くと、

当時は他の出版社からも多くの法人税申告本が出ていて、その多くが申告書の書き方を解説したものでした。その書き方を、これから勉強していく新人用に書くのか、実際に別表作成している中堅どころの経理パーソン向けに書くのか、いずれかを選択していました。別の言い方をすれば、法人税申告を基本的に解説することに重きを置くのか、あるいは、まさに別表記入そのものに重きを置くのかで、それぞれの特徴を出して執筆されていた。
そうしたなかで、書き方ではなく、例えば経理部長が最後にチェックするための本は必要ないのかな? あるいは、すべて所員に任せている税理士事務所の所長が最後の最後に、こっそりチェックするための本の需要ってありそうだけどなぁ。との思い付きで生まれた本なんだよ。

と本書の誕生のイキサツを教えてくれました。

さて、どれを選びますか

夏目くん:私が経理パーソンなら、高下先生の本を読んで勉強すればいいってことですね。春山編集次長は齊藤先生の最終チェックですか。

春山編集次長:何言ってんだよ。そんな身分じゃないでしょ。右山事務所の2分冊をしっかり読んでまだまだ勉強させていただいていますよ。

夏目くん:春山編集次長は、もう勉強なんて卒業でしょ。人のやった仕事をパパッとチェックすればいいんだから。

春山編集次長:どこ見て言ってんだ。そんなに甘くないぞ。ファイナルチェックは冬木編集長の役目だよ。冬木編集長に聴いてみな。

夏目くん:冬木編集長は、さきほど、法人税申告書本の話が始まった途端に、「私は、初級者だから、高下先生の本で基礎からしっかり勉強しようかな」っておっしゃりながら、『やさしい』方ではなく、『「別表四と五」完全攻略本』を片手に帰られましたよ。

春山編集次長:???

夏目くん:ありがとうございました。また、教えてくださいね。