ゼロから始める事業立上げ 財務モデリングを超シンプルに!|【連載】データ分析のログハウス(第5回)
~旬刊経理情報連載
「データ分析の森」ガイドマップ 番外編~
みなさん、こんにちは。
遠藤武(えんどう・たける)です(著者紹介はこちら)。
おやおや?
おたんさん、今日はパソコンに向かってExcelファイルを操作していますね。
おお! いいことです!
これまでは、財務モデリングを扱う人は「投資銀行・戦略コンサルティング・総合商社・FAS・PEファンド」の志望者ばかりでした。
しかし、最近では起業志望の方も増えており、事業計画やFP&A(管理会計)に連なる形で、財務モデリングも誰もが気楽に扱えたほうがよいと思っています。
そこで、今回は財務モデリングとはどのようなものなのか、とにかくシンプルに描いてみましょうか!
財務モデリングは、「売上-経費=利益」の見積りから始める!
本当にゼロから始めるなら、めちゃくちゃシンプルに「売上―経費=利益」の見積りから始めましょう。
『旬刊経理情報』の連載では、売上や粗利の読み取りや分析から始まり、
といった形で、分析に必要な要素を順番に紹介しながら、全体像を表したところです。
一気に構造を知るうえでは、いきなりFCFから考えてしまうという道もあります。
しかし、全く知識がないなかで「起業したい!」、「事業計画を立てたい!」と思うならば、まずは「売上-経費=利益」の構造に集中してみましょう!
モデリングもFP&Aも、実務上は営業利益が基本です。
たとえば、サンドイッチとコーヒーのセットを大学のマルシェでランチ向けに販売したとします。
おたんさん、その場合だと1日でどれくらい売れると見積れそうですか?
いい見積りですね。
では、まず次のように見積って、実際にモデルを起こしてみましょう(図表1)。
図表1 売上見積りから考えられる想定モデル
見積りを計算してみると、1日の粗利は2万円となります。
営業日数の見積り
では、次は営業日数を考えます。
大体、月に何日くらい、そして1日につき何時間くらい営業するでしょうか?
OKです!
とすると、仮に営業日ごとに50セット売れたとして、営業日数が15日だとすると、見積りから図表2のようにモデルを想定することができます。
図表2 1か月の想定モデル
月の粗利が30万円出ました。
1時間当たりの粗利は、「3時間×15日=45時間」より、「30万円÷45時間=6,666円」と計算できます。
販管費の見積り
とはいえ、これを全部自分でやるわけにはいきませんね。
とすると、販管費(販売費・一般管理費)についても見積る必要があります。
まずはコストを抑える、素晴らしい発想です!
什器(販売用のワゴン)は、貰い物を使い、販売の際のユニフォーム等へのコストは考慮しないでおくと、残りは人件費ですね。
時給1,200円と見積ると、「3時間×1,200円=3,600円」の販管費がかかり、1日ごとの営業利益は図表3のとおり、1万6,400円です。
図表3 1日当たりの見積り
これを月単位(15日営業)に置き換えると、図表4となります。
1か月の販管費は、「3,600円×15日=54,000円」です。
図表4 1か月当たりの見積り
見積りをしてみると、月の営業利益は24万6,000円となりました。
このケースだと現金商売なので、営業利益がそのままキャッシュ・フローとなります。
売掛金・買掛金がないと仮定しているため、シンプルにいうと、財務モデリングってこのような見積りの繰り返しなんですよね。
そうなんです! 思いのほかシンプルでしょう?
他にも、次のような要素が挙げられます。
この内容と単価で50人に「欲しい!」と言ってもらえる?
もっと需要が出て顧客数が増えたらどうする?
この原価で本当に仕入れられる?
もっとコストを下げられないか?
「欲しい!」を「のどから手がでるほど欲しい!」にできないか?PMF(プロダクトマーケットフィット)や、PLG(プロダクト主導成長)の発想)
もっと単価と粗利を上げながら「欲しい!」と言ってもらえる?
事業を拡大するとき、他に見積りが必要なコストはある?
「欲しい!」と言ってもらう(=顧客数を増やす)ために何をするか、そのためにどんな見積りが必要か、日々「妄想と行動」していくことが大事なんですよ。
妄想からデータを仮定して見積りに変えよう!
実のところ、妄想からデータを仮定し、見積りに変えれば、おのずと行動の分析につながります。
データ分析は、本連載の最初に述べたとおり、「妄想と行動の繰り返し」ということをあらためてお伝えできればと思います。
データ分析にまつわる素朴な疑問でもよいですし、
他の「こんなことが気になる!」でも、
ついつい湧き出る妄想でも構いません。
すべては、何かを始めるためにうってつけの理由です。
それでも「やっぱり不安だな…」と思うことがあれば、
お気軽にログハウスのドアをノックしてくださいね。
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「データ分析のログハウス」は、旬刊『経理情報』2022年7月10日号からスタートした連載「「データ分析の森」ガイドマップ」との連動記事です。
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バックナンバー
第1回 ログハウスができたよ!
第2回 「データ分析の人材市場」を分析したよ!(※属性つき)
第3回 FP&Aが「つまらない」は本当?
第4回 リスキリングの本質って何?