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【会計】使用権資産の形で保有する賃貸等不動産の時価開示は有用か─ASBJ

去る11月21日、企業会計基準委員会は第491回企業会計基準委員会を開催した。
主な審議事項は次のとおり。

■リース会計基準の改正

第123回リース会計専門委員会(2022年12月1日号(No.1662)情報ダイジェスト参照)で審議された論点について、審議が行われた。

⑴ 表示・注記(貸手の注記事項の構成)

リース債権・リース投資資産の構成要素の注記について、リース債権の期末残高の重要性が低い場合は、リース債権とリース投資資産の合算での注記を容認する等の再提案が示され、委員からはおおむね賛成意見が聞かれた。
また、注記事項の構成について、財務諸表利用者の利便性を考慮し、それぞれ性質の類似する項目ごとに次の3つに分類する案が示された。

  1. 区分表示の定めに対する補足情報

  2. リース特有の取引に関する情報(変動リース料等)

  3. 当期および翌期以降のリースの金額を理解するための情報

委員からは、特段の異論は聞かれなかった。

⑵ リース基準改正に伴う他の基準の改正

専門委員会と同様、企業会計基準20号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」等の改正について、主に次の案が示された。

ⅰ 賃貸収益またはキャピタル・ゲインの獲得を目的として借手が使用権資産の形で保有する不動産を賃貸等不動産の定義に含め、その定義を満たす使用権資産の時価の注記を求める。
ⅱ 賃貸等不動産のBS計上額および期中における主な変動について、所有資産と使用権資産を区分して注記する。

委員からは「使用権資産は換金性がなく、時価開示する有用性があるか疑問」など反対意見が多く聞かれた。

■金融資産の減損

第190回金融商品専門委員会(2022年12月1日号(No.1662)情報ダイジェスト参照)に引き続き、専門委員会と同様に、ステップ3以降で検討する論点につき議論された。

⑴ ステップ3以降の検討

IFRS9号「金融商品」で減損の一般的なアプローチが適用され、日本基準では次の取扱いとされる金融商品を、ステップ3において検討する案が示された。

  1. 著しい時価の下落が生じた場合に減損処理を行う金融資産(満期保有目的の債券、その他有価証券に分類される債券等)

  2. 債務保証引当金を計上する金融商品(金融保証契約等)

  3. 明示的な定めがない金融商品(取消不能のクレジットカード、ローンコミットメント契約等)

委員からは、「債券については、市場への影響が大きいので慎重に検討を」との意見が聞かれた。

⑵ 金融商品契約の発行者側の取扱い

金融保証契約では、予想信用損失を見積る等、IFRS9号を取り入れる案が示された。
委員からは「予想信用損失モデルの適用には賛成だが、会計処理については、システム変更などの実務負担が大きく、慎重に議論すべき」といった意見が聞かれた。

■資金決済法上の「電子決済手段」

第151回実務対応専門委員会(2022年12月1日号(No.1662)情報ダイジェスト参照)に引き続き、第3号電子決済手段(特定信託受益権)の会計上の取扱いについて審議が行われた。
専門委員会と同様、事務局は、第3号電子決済手段は第1号電子決済手段と同様の性質を持つとして、保有者の認識および認識の中止の時点は受渡日とするなどの案を示した。
委員からは「実務では受益証券発行信託を使っているケースもあり、その検討もすべき」との意見が聞かれた。


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