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【金融】非財務情報開示の充実等に向けた報告書、取りまとめへ―金融審議会ディスクロージャーWG

去る5月23日、金融審議会は第9回ディスクロージャーワーキング・グループ(座長:神田秀樹・学習院大学大学院法務研究科教授)をオンラインで開催した。
今回のWGでは、これまでの議論を踏まえて取りまとめられた「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告(案)―中長期的な企業価値向上につながる資本市場の構築に向けて―」(以下、「報告書案」という)が事務局より示され、議論が行われた。
主な論点は次のとおり。

■ 非財務情報開示の充実

非財務情報開示の充実について、報告書案に盛り込まれた事項は主に次のとおり。報告書案の概要をまとめた資料では、府令改正事項とされている。

◆サステナビリティ
【全般】
有報にサステナビリティ情報の『記載欄』を新設
・「ガバナンス」と「リスク管理」は、すべての企業が開示
・「戦略」と「指標と目標」は、各企業が重要性を判断して開示
【人的資本】
「人材育成方針」、「社内環境整備方針」を記載項目に追加
【多様性】
「男女賃金格差」、「女性管理職比率」、「男性育児休業取得率」を記載項目に追加
●コーポレート・ガバナンス
【取締役会の機能発揮】
有報に「取締役会、指名委員会・報酬委員会の活動状況」の『記載欄』を追加

委員からは、全体感には賛同の意見が多く聞かれた。
各論では、「気候変動対応について『GHG排出量については、ただちに具体的な開示項目とするのではなく、各企業の業態や経営環境等を踏まえた重要性の判断を前提とした開示項目とすることが適切』とあるが、より高い目標として、開示を義務とすべき」といった意見が聞かれた。
そのほか、複数の委員から「ベストプラクティスの提示やガイダンスの作成が必要では」との意見が聞かれた。
また、サステナビリティ開示について、適用時期のめどについて質問があり、事務局から「開示府令については、パブコメを経て成案となり、企業の準備期間を考慮して時期を決める。項目ごとに時期を検討する」との回答があった。

■ 開示の効率化

開示の効率化について、報告書案に盛り込まれた事項は主に次のとおり。報告書案の概要をまとめた資料では、法改正事項とされている。

【四半期開示の見直し】
・金商法の四半期開示義務(第1・第3四半期)を廃止し、取引所規則に基づく四半期決算短信に「一本化」
・「一本化」の具体化に向けた課題(義務づけのあり方、開示内容、虚偽記載に対するエンフォースメント、監査法人によるレビュー等)は、検討を継続

委員からは、全体的に賛同する意見が聞かれた。そのほかに「海外市場から開示の後退との印象を持たれないよう、今後の検討のなかで、海外投資家にもアウトリーチをすることが必要では」との意見が聞かれた。
また、「検討課題のなかに『第1・第3四半期報告書の廃止後に上場企業が提出する『半期報告書』に対する監査法人の保証のあり方』が挙げられているが、この『半期報告書』とは、これまでの四半期報告書と理解している」との意見に対し、事務局から「報告書案には明記しておらず、今後の論点と考えている」との回答があった。

■ その他

前記の他、企業が他社と締結する重要な契約の開示要件の明確化、英文開示の促進についても取りまとめられている。

■ 今後の方向

事務局は、全体の方向性には賛意を得たとして、出された意見をもとに案を修正し、委員からの異論がなければ会議を経ずに正式に取りまとめる。
その後、内閣府令で対応できる事項については、早急に対応する方針。



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