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リスキリングの本質って何?|【連載】データ分析のログハウス(第4回)

~旬刊経理情報連載
「データ分析の森」ガイドマップ 番外編~

こんにちは。中央経済社「旬刊経理情報」編集部です。
本誌では『「データ分析の森」ガイドマップ』を連載中。DXやリスキリングなどで注目される「データ分析」について、その具体的な中身や取り組み方などをやさしく丁寧に解説していただいています。
このnote連載では、本誌連載では書ききれなかった、主にデータ分析に関わるキャリアや事業について、ざっくばらんに紐といていただきます。
第4回はいま話題の「リスキリング」について、データ分析と紐づけてお話していただきました。


みなさん、こんにちは。
遠藤武(えんどう・たける)です(著者紹介はこちら)。

えっ? 誰もいない部屋で、本の山が動いた……?

と思ったら、おたんさんが埋もれていますね。
デスクには本が100冊くらい、紙の資料も1,000枚くらいが散らばっているようです。
おたんさん、大丈夫ですか?

おたん(データ分析に興味がある悩める大学生):
うへぇ〜……、す、すいません……。
さいきん「リスキリング」という言葉を知って、ちょっと焦ってしまって……。
 
多くの企業が「AI・統計スキル習得」、「DX研修」をやり始めていて、
それなのに「リスキリング格差」という言葉もあって、
手当たり次第資料を読んでいたら、何が何だかわからなくなってしまい……。

なるほど、まずはその心がけで十分です!
色々なことを学ぶことができる大学生という身分を、心ゆくまで徹底活用してください。

そのうえで、問題!

リスキリングとは、たゆまぬ〇〇〇〇〇〇のこと。

【問】上記の〇〇〇〇〇〇には何が入るでしょう?

まず、リスキリングとは、本質的には研究開発がもとにある発想と捉えればよいのです。

こちらの新聞記事を読んでみましょう(「「リスキリング格差」に懸念 企業も個人も出遅れ鮮明」日本経済新聞、2021年12月9日)。

新聞記事で表面だけをみると、現状の働き手について「特にデジタル周りのスキルが足りないから、急いで対応してね」ということがリスキリングと捉えられがちですが、これはあくまで「最低要件を満たすこと」です。

また、リスキリングの取組みについて次のようなことが紹介されています。

「定義や自社の活用事例を知る入門編、機械学習などデータの分析手法を理解し、技術職以外がAI関連の企画を推進する手順も学べる基礎編で構成」

ソフトバンク、全社員1.8万人にAI・統計スキル習得求める」日本経済新聞、2021年3月27日。
太字は著者による。

「DX人材を内製化し、デジタル事業の提案力を底上げ」、「データ構造を分析するデータデザインや、デジタル事業の工程や進捗を把握するプロジェクト管理などを学んでもらう。サイバーセキュリティーや、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」といったDXに欠かせない知識も教える」

三菱商事、全社員5600人にDX研修 人材内製化へ」日本経済新聞、2021年7月28日。
太字は著者による。

さらに、このなかからキーワードを抜き出すと、データの分析手法・デジタル事業の提案・データ構造・プロジェクト管理・セキュリティ・IoT……といったものが挙げられます。
ただ、これらって実は、コンサルティング会社IT企業がすでに手をつけている事柄でもあるんですね。

おたん
なるほど!
そういえば、コンサルティング会社やITベンチャーの新卒向けウェブサイトで、「データに関わる分野は、エンジニアでない人にも大事」というメッセージを見かけたことがあります。

そのとおりなんですよ。

要するに、リスキリングとは「いろいろな物事が一気にデータ化・デジタル化されるから、それに伴って必要となる知識を、アップデートしてね」という意味なんです。

ここで、データやデジタル化に関するキーワードを整頓して、データ分析との関連性を考えてみましょう。

〈アナリスト・データサイエンティスト領域(データの分析手法)〉
・FP&A、マーケティング、サプライチェーンマネジメント(SCM)
・数理統計学、AI、機械学習、多変量解析、時系列解析など
 
〈コンサルタント領域(デジタル事業の提案)〉
・経営計画立案、財務モデリング、新規事業立上げ、プロジェクト管理など
 
〈エンジニア領域(計算機科学やテクノロジー分野)〉
・プログラミング、アルゴリズム、データ構造、データベース、セキュリティ、IoTなど

※データ分析による予測がカギとなる分野であるため、便宜上、FP&A・マーケティング・SCMを「データの分析手法」に位置づけています。

これらは少し前まで、どれか1つを身につけて掘り下げるだけでよかったのですが、今は少しずつ様子が変わってきています。

「エンジニアがFP&AやマーケティングやSCMといったビジネス周りの知見を身につける」とか、「コンサルタントがAI・機械学習の知見を身につける」といったように、異なる領域の知見が新しく必要になるということがあるのです。

たとえば、「お金の動きやモノの動きについて、新規事業を立ち上げたいIT企業」がいたとします。
その場合、「エンジニア領域に強い。統計学などデータサイエンティスト領域もわかる。ただしファイナンスやSCMは知見がなく、新規事業立上げは厳しい」という問題が生じます。
このようなケースでは、次のように知識をアップデートしていくことが考えられます。

(1) 社内の人材を強化する(リスキリングと人材採用)
(2) 外部パートナーと動く(組織まるごとリスキリングする)

リスキリングと聞いて真っ先に思い浮かぶのは(1)かと思いますが、最近は(2)の動き方もかなり目立ってきています(出資しあってジョイントベンチャーにしてしまうこともありますね。それも組織のアップデート策の1つです)。

これは企業の規模の大小、経営者も社員も問わず、またコンサルティング会社から士業の先生までも、みんな共通しています。

少々きつい言い方をすると、アップデートしていない企業に見切りをつけ、アップデートしている企業に移籍する……なんて、あちこちで起こることなんですよ(あるいはチャンスをみつけて独立する……ということもあるでしょう)。

【問の答え】

リスキリングとは、たゆまぬアップデートのこと。

自身の興味関心はもちろん、これからの仕事を進化させていくうえでも、ぜひ自分にあったリスキリングの形を模索してみてください。

データ分析にまつわる素朴な疑問でもよいですし、他の「こんなことが気になる!」でも、ついつい湧き出る妄想でも構いません。
すべては、何かを始めるためにうってつけの理由です。

それでも「やっぱり不安だな……」という物事があれば、お気軽にログハウスのドアをノックしてくださいね。



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「データ分析のログハウス」は、旬刊『経理情報』2022年7月10日号からスタートした連載「「データ分析の森」ガイドマップ」との連動記事です。
本誌では、DXやリスキリングなどで注目される「データ分析」について、その具体的な中身や取組み方などをやさしく丁寧に解説していただいています。ぜひあわせてご一読ください。定期購読はこちらから

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バックナンバー
第1回 ログハウスができたよ!
第2回 「データ分析の人材市場」を分析したよ!(※属性つき)
第3回 FP&Aが「つまらない」は本当?


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