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旬刊『経理情報』2024年4月20日号(通巻No.1708)情報ダイジェスト/会計・金融


【会計】貸手のオペレーティング・リースに関する代替的な取扱い、米国基準を採用へ─ASBJ、リース会計専門委

去る3月27日、企業会計基準委員会は第146回リース会計専門委員会を開催した。
前回(2024年4月10日号(No.1707)情報ダイジェスト参照)に引き続き、企業会計基準公開草案73号「リースに関する会計基準(案)」等に寄せられたコメントへの対応の方向性と個別事項について、審議が行われた。
なお、4月2日開催の第523回親委員会でも同テーマについて審議された。

■「合理的に確実」の閾値に関する検討

公開草案に対して、「延長オプションまたは解約オプションの行使可能性に関する『合理的に確実』の閾値に関して、蓋然性の程度が高い閾値であることを明確化すべきである」とのコメントが寄せられており、第134回専門委員会では、結論の背景に、米国会計基準トピック842「リース」の閾値の考え方に基づき、蓋然性を判断する旨を示していた。
この対応について、「『合理的に確実』は蓋然性が高いことは記載されたものの、参考として記載されているトピック842の記載『発生する可能性のほうが発生しない可能性より高いこと(more likely than not) よりは高いが、ほぼ確実(virtuallycertain)よりは低い』では具体的な説明としては足りていない。理解を促進するためにも、経済的インセンティブの変化により『合理的に確実』とされる期間を説明するような設例の追加を」といった意見が聞かれていた。
事務局は、本適用指針案の設例8を見直すことを検討する余地があるとし、次の案を提示した。

関連する本適用指針案の設例8について、借手のリース期間の決定に関して、経済的インセンティブを生じさせる要因とその他の要因とを区別して、考慮する経済的インセンティブを生じさせる要因および判断の思考プロセスの理解に資する説明を追加するとともに、可能な範囲で結論を明示するように見直しを行う。

専門委員からは賛意が聞かれたが、「表現についてはまだ明確化の余地がある」との意見も聞かれた。
第523回親委員会では、「経済的インセンティブに注目することで理解しやすくなった」など、案に賛成する意見が多く聞かれた。

■貸手のオペレーティング・リースに関する代替的な取扱い

公開草案に寄せられたコメントにおいて、リースを構成する部分とリースを構成しない部分の区分に関して、次の意見が聞かれていた。

⑴ 貸手についても借手同様に(リースとサービスの)一体処理の選択をできるようにすべきである
⑵ オペレーティング・リースにおけるリース構成区分の成果は、収益関係の表示・開示区分が変わるだけに終わることが大半であると想定され、純利益等に有意味な影響を与えるケースは非常に少ないと考えられる

第509回親委員会では、「関連するリースを構成しない部分としてのサービスと、リースを構成する部分の収益認識パターンが同一である場合に、サービスとリースを一体として取り扱う余地があるか否かは過去の審議であまり検討してこなかったため、検討してはどうか」という意見が聞かれていた。
事務局は、「リースを構成する部分とリースを構成しない部分の移転の時期およびパターンが同一である場合には、リースに係る収益の認識の時期とサービスに係る収益の認識の時期が同一となる。米国会計基準トピック842では、リースを構成する部分とリースを構成しない部分の移転の時期およびパターンが同一である場合には、リースを構成する部分とリースを構成しない部分を単一の構成要素として会計処理を認めていることから、米国会計基準と同様の代替的な取扱いを認める」案を示した。
専門委員からは、方向性について異論は聞かれなかった。
第523回親委員会でも、「負担軽減に資する」と、賛成する意見が聞かれた。

【会計】ユーロ円TIBOR公表停止への対応の可否、検討─ASBJ、金融商品専門委

去る3月28日、企業会計基準委員会は、第215回金融商品専門委員会を開催した。
主な審議事項は次のとおり。なお、4月2日開催の第523回親委員会でも同テーマについて審議された。

■金融資産の減損

ステップ4(信用リスクに関するデータの詳細な整備がなされていない金融機関に適用され会計基準の開発)を採用する金融機関における債権単位での信用リスクの著しい増大(SICR)の判定における「正常先のうち低い内部信用格付区分」の取扱いについて審議が行われた。
第518回親委員会(2024年2月10日号(No.1701)情報ダイジェスト参照)では、SICRの判定について、「正常先に対する債権等は原則としてSICRが生じていないとみなすが、『正常先のうち低い内部信用格付区分』に含まれる債権等については、SICRが生じているとみなしつつ、債権または債権グループごとに反証可能とする」などの事務局提案が示されていた。
この案に対して聞かれた意見をもとに、正常先に区分される債務者に対する債権等の取扱いについて、次の3つのアプローチが示された。

① 「正常先のうち低い内部信用格付区分」に含まれる債権等についてSICRが生じているという反証可能な推定規定を設ける
② 正常先に区分される債務者に対する債権等について、一律にSICRが生じていないとみなす
③ 正常先に区分される債務者に対する債権について、常に全期間の予想信用損失に等しい額で測定する

専門委員から、「②は国際比較の趣旨にそぐわない。③があり得る」、「実務上の観点から②がやむを得ない」、「③の全期間引当は違和感。①をどこまで実務にアジャストできるか」など、さまざまな意見が聞かれた。
第523回親委員会でも、「①を原則とし、③を許容するのが望ましい」、「実務負担を考えると消去法で②」など、さまざまな意見が聞かれた。

■ベンチャーキャピタル(VC)ファンドの出資持分

第521回親委員会(2024年4月1日号(No.1706)情報ダイジェスト参照)に引き続き、組合等の会計処理について審議された。
「組合等の構成資産である市場価格のない株式を時価評価(評価差額は純損益(PL))することとし、時価評価の対象とする組合等をオプションとして選択すること」が提案されていたが、聞かれた意見を踏まえ、次の再提案が示された。

組合等の構成資産である市場価格のない株式について、会計方針の選択として、時価評価(評価差額はOCI)するオプションを設ける

専門委員から、賛成意見が多く聞かれた。
第523回親委員会でも、賛意が多く聞かれ、「減損や開示についても検討を」との意見が聞かれた。

■ユーロ円TIBORの恒久的な公表停止に関する対応

LIBORの廃止に伴い、実務対応報告40号「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い」が公表されており、金利指標置換後の取扱いについて、必要な場合にはあらためて確認することとされている。
2024年3月にTIBOR運営機関より2024年末にユーロ円TIBORの恒久的な公表停止を行うことが公表されたことを踏まえて、審議が行われた。
事務局から、ユーロ円TIBORを参照する金融商品について実務対応報告40号を参考にした場合、繰延ヘッジ、包括ヘッジおよび金利スワップの特例処理等の金利指標置換後の会計処理・注記事項に影響が生じる可能性があるものの、その対応が必要かどうかについて、意見が求められた。
専門委員ならびに第523回親委員会委員からは、対応は不要との意見が大勢を占めた。

【金融】サステナビリティ情報の開示と保証のあり方、検討開始─金融審議会サステナ情報開示・保証WG

去る3月26日、金融審議会は第1回サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ(座長:神作裕之・学習院大学大学院法務研究科教授)(以下、「WG」という)を開催した。

■WG設置の背景

2023年3月期から有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示が開始され、日本における具体的なサステナビリティ開示基準(SSBJ基準)の公開草案が公表されるなど、企業においても基準の適用に向けた準備が進むと考えられる。
また、投資家からもサステナビリティ情報の信頼性の確保を望む声があり、国際的にも、当該情報に対する保証のあり方について議論が進んでいる。
わが国において、サステナビリティ開示基準や保証制度を導入するには、法改正を視野に入れた検討が必要であり、議論を進めていくことが重要とし、金融担当大臣の諮問を受け、金融審議会においてWGが新規に設置された。

■SSBJ基準の具体的な適用対象や適用時期

事務局は、具体的な適用対象や適用時期について、次の2案を示した。

【案1】
・2027年3月期から時価総額3兆円以上の企業を対象にSSBJ基準の義務化
・2028年3月期から時価総額1兆円以上の企業を対象に、SSBJ基準の義務化(保証を含む)
・203X年からプライム上場企業を対象にSSBJ基準の義務化(保証を含む)
【案2】
・2028年3月期から時価総額3兆円以上の企業を対象に、SSBJ基準の義務化(保証を含む)
・2029年3月期から時価総額1兆円以上の企業を対象に、SSBJ基準の義務化(保証を含む)
・203X年からプライム上場企業を対象にSSBJ基準の義務化(保証を含む)

委員からは、EUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)が2028会計年度よりEU域外に適用されることや、利用者からの適用時期の早期化を求める意見などを理由に案1への賛同が多く聞かれた。その一方で、「実務の負担に鑑みて、義務化するのは2028年でもいいのでは」と案2を支持する意見も聞かれた。

■開示基準の義務化に伴う先行適用

事務局から、前記案1・案2のように時価総額の大きい企業から先行して適用を始め、その後、203X年3月期を目処に全プライム上場企業へ適用を拡大することの是非について意見が求められた。
委員からは「203X年と曖昧にするのではなく、具体的に何年と決めるほうが企業にとっても準備期間の逆算ができていいのでは」という意見や、「今の段階で全プライム上場企業へのSSBJ基準の適用を表明するのは時期尚早である」などの意見が聞かれた。



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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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