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【会計】旬刊『経理情報』2023年5月1日号(通巻No.1676)情報ダイジェスト

【会計】今後の審議の進め方、検討—ASBJ、金融商品専門委

去る4月5日、企業会計基準委員会は第198回金融商品専門委員会を開催した。
金融資産の減損に関する会計基準の開発に関する主な審議事項は次のとおり。また、本テーマについては、4月11日開催の第499回親委員会でも審議された。

■ステップ2・ステップ3の振り返り

⑴ステップ2の振り返り

第488回親委員会(2022年11月1日号(No.1659)情報ダイジェスト参照)でステップ2の総括が行われ、引き続き検討を行う論点を次のように整理し、審議が行われてきた。

①追加的な検討が必要とされた論点
(ⅰ)信用リスクを見積る期間(予想存続期間が1年未満の取扱い)
(ⅱ)マネジメント・オーバーレイ

②実効金利法による償却原価に関連する定めの取扱いと相互に関連しているため引き続き検討することとした論点
(ⅰ)貨幣の時間価値の考慮
(ⅱ)債権のリストラクチャリングに伴う条件変更の会計処理に関する検討
(ⅲ)信用リスクが増大した場合の利息収益の認識方法

③実務の適用に資する規範性のない教育文書等の内容について具体的に検討を進めるとした論点
(ⅰ)債権単位での信用リスクの著しい増大の判定
(ⅱ)将来予測情報の考慮
(ⅲ)複数シナリオの考慮を含めた結果の確率加重

⑵ステップ3の振り返り

第491回親委員会(2022年12月10日号(No.1663)情報ダイジェスト参照)でステップ3の検討をいったん始め、追加的な論点が出た場合にどのように対応するか検討しながら進めるべきという意見が聞かれた。このような意見を踏まえ、次の論点の検討を行ってきた。

①金融商品の分類および測定の開発を行うか否かにより、別途検討する論点(ⅰ)SPPI(元本および利息の支払のみ)要件を満たさない債権や流動化などの売却を目的として保有する債権の取扱い
(ⅱ)SPPI要件を満たさない債券の取扱い
(ⅲ)デリバティブが組み込まれた金融資産

②ステップ3で取り上げる個別の論点
(ⅰ)満期保有目的の債券およびその他有価証券に分類される債券の取扱い
(ⅱ)金融保証契約の取扱いⅲローン・コミットメントに対する減損に関する定めの適用

専門委員から、「ステップ2、ステップ3における議論で、事務局はどの論点に異論が聞かれていると認識しているのか」との質問に事務局からは、「ステップ2では、⑴②(ⅰ)の『引当における貨幣の時間価値の考慮および実効金利法による償却原価の採用』および⑴②(ⅲ)の『信用減損資産に係る利息収益の認識』が、ステップ3では、⑵②(ⅰ)の満期保有目的の債券およびその他有価証券に分類される債券の取扱いと、その債券の償却原価の償却方法で、異論が聞かれている」との回答がなされた。

■今後の審議の進め方

今後の審議の進め方として、ステップ2および3で異論が聞かれている論点の議論はいったんこのままとしておき、ステップ4を議論した後に再度議論するとして、次の段階として、ステップ2を適用する金融機関における開示の検討を優先して進める案が示された。
専門委員からは、賛成意見が聞かれた一方、「ステップ4の議論が遅くならないように」との意見が聞かれた。

ステップ2、ステップ3の振り返りおよび今後の審議の進め方について、第499回親委員会でも、委員から事務局案に賛成意見が多く聞かれた。また、「作成者の納得感を得るためにも、導入メリットと企業負担のコストを明確にしていく必要がある」との意見も聞かれた。

【会計】「電子決済手段」関連公開草案文案の検討、進む—ASBJ、実務対応専門委

去る4月5日、企業会計基準委員会は第157回実務対応専門委員会を開催した。また、4月11日開催の第499回親委員会でも、同じテーマで審議が行われた。
主な審議内容は次のとおり。

■電子決済手段の預託の会計上の取扱い

第151回で聞かれた「仲介者である電子決済手段等取引業者による電子決済手段の預託が想定されるならば、電子決済手段等取引業者が利用者から預かる電子決済手段に関する会計上の取扱いを定める必要があるのでは」との意見から、第153回(2023年1月10日・20日号(No.1666)情報ダイジェスト参照)と第154回(2023年2月10日号(No.1668)情報ダイジェスト参照)にて検討がなされた。これらを踏まえ、事務局は、仲介者等が利用者から預かった電子決済手段の貸借対照表への計上の要否について次の考えを示した。

法律上の権利の移転に着目すると、仲介者等は、利用者から預かった電子決済手段を自由に処分する権利を有しておらず、電子決済手段に関する利用者の権利が電子決済手段を預かる仲介者等に移転していないと考えられることから、仲介者等が利用者から預かった電子決済手段を仲介者等の貸借対照表に計上しない。
また、仲介者等において電子決算手段の預託を受けている額などの注記は求めない。

専門委員からは特段異論は聞かれなかった。
第499回親委員会でも、委員からも、「オンバランスすると、利用者が誤認するおそれがある」など、賛成意見が多く聞かれた。

■実務対応報告公開草案の文案

これまでの審議内容を踏まえ、前回審議された本文に引き続き、結論の背景の文案が提示された。
専門委員からは、文言の記載方法等について意見が聞かれた。

■「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」関連

事務局より、資金の範囲に関する事項を改めるため、企業会計審議会公表の「『連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準』の一部改正(案)」の文案、日本公認会計士協会会計制度委員会報告8号「連結キャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」の改正案が示された。

【会計】サステナビリティ関連財務開示の公表承認日等、審議—SSBJ

去る4月7日、SSBJは第11回サステナビリティ基準委員会を開催した。
第10回(2023年4月10号(No.1674)情報ダイジェスト参照)に引き続き、日本版S1基準の開発に関する論点が審議された。

■用語の定義

事務局は次の提案を示した。

⑴ISSBのS1基準における「ビジネスモデル」、「バリュー・チェーン」および「開示トピック」について、S1基準案の定義を日本版S1基準に受け入れる。
⑵「IFRSサステナビリティ開示基準」に相当する、SSBJが公表するサステナビリティ開示基準を指す用語を定義するかどうかについて、改正が予定されている適正手続規則の改正後に検討する。

委員から特段異論はなかった。

■集約および分解

事務局は次の提案を示した。

⑴S1基準案の集約および分解に関する規定(48項、49項)と整合的な定めを日本版S1基準に受け入れる。
⑵S1基準案の集約および分解に関する事例(49項、BC59項)は、SSBJから公表する日本版S1基準の参考文書(規範性のないガイダンス)に含める。

委員からは「規範性のないガイダンスを作る場合、規範性のある部分との関係性を明らかにすべき」との意見が聞かれ、事務局は「検討する」と回答した。

■報告企業

事務局提案は次のとおり。

⑴ISSBのS1基準における「報告企業」に対応する用語として、日本版S1基準では「連結財務諸表を作成している場合は連結財務諸表に含まれる企業集団、連結財務諸表を作成していない場合は個別財務諸表を作成する企業」を用いる。また、日本版S1基準の結論の背景で、わが国の市場関係者にとって理解しやすい表現となることを目的としているに過ぎず、IFRSサステナビリティ開示基準と差異を設けることを意図していない旨を明確にする。

⑵S1基準案における報告企業に関する規定(37項)(企業のサステナビリティ関連財務開示は、関連する一般目的財務諸表と同じ報告企業に関するものでなければならない等)と整合的に、この定めを日本版S1基準に受け入れる。

委員から特段異論はなかった。

■サステナビリティ関連財務開示の公表承認日

事務局は次の案を示した。

⑴報告の頻度に関するS1基準案の規定(71項)と整合的な定めを日本版S1基準に受け入れ、報告期間の末日後、サステナビリティ関連財務開示の公表承認日までに発生する取引その他の事象および状況に関する情報が主要な利用者の意思決定に影響を与えることが合理的に予想される場合には、その内容を開示することを要求する。

⑵日本版S1基準では、サステナビリティ関連財務開示の公表承認日および承認した社内の機関または個人の名称について開示することを求める。この際、「サステナビリティ関連財務開示の公表承認日」を定義し、各企業において、サステナビリティ関連財務開示を公表することを承認する権限を有する機関または個人が公表を承認するプロセスを社内に構築することが必要な旨を結論の背景に記載する。

委員からは「サステナビリティ基準のほうで公表承認日を規定すること、また、承認主体の開示まで求めるのは賛成」、「財務諸表とサステナビリティ情報の後発事象の期間が異なることでコネクティビティの観点から問題が生じるのでは」等の意見が聞かれた。


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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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