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【監査】内部統制報告制度の見直しに着手へ─企業会計審議会総会・会計部会

去る9月29日、金融庁は、企業会計審議会総会・第9回会計部会(会長・部会長ともに徳賀芳弘・京都大学名誉教授)を開催した。主な審議事項は次のとおり。

■内部統制をめぐる動向

⑴ 内部統制報告制度の見直しに向けた提案

内部統制報告制度は、金融商品取引法の改正により2008年に導入された。企業の経営管理・ガバナンスの向上に一定の効果はあったものの、導入から十数年が経過し、近年実効性に懸念があると指摘されている。また、国際的な内部統制・リスクマネジメントの議論も進展しており、有識者等からも内部統制報告制度に関するさまざまな提言がなされている。
このような現状を踏まえ、事務局は、内部統制の実効性の向上に向けて、基準・実施基準等の改正を含め、企業会計審議会内部統制部会で審議を行うことを提案した。

⑵ 内部統制報告制度の現状

欧米を含む諸外国における内部統制・リスクマネジメントに関する議論を紹介したうえ、日本における内部統制報告書の提出状況の推移について示された。内部統制報告制度が導入された2008年以降も内部統制に「開示すべき重要な不備」が存在すると開示したケースは一定数みられると説明された。

⑶ 委員の見解

委員からは内部報告制度の見直しを行うことにおおむね賛意が示された。そのうえで、「近時はM&Aにより海外子会社を持つ企業も増えてきており、そのような実情を踏まえた制度設計を検討すべき」、「企業においては、対応人材のリソース不足も顕著であるため、制度の効率性、有効性に焦点を当てることが重要」との意見が聞かれた。
また、事務局が提案した「実効性の向上」について、「現状、内部統制報告が形骸化・定型化してしまっている部分がある。そのようななかで『実効性』とは、具体的に何を問題としているのか」との質問があった。事務局は「内部統制はリスクベースをもとに行われるべきであり、今後の議論ではその基本をどのように後押しできるかを考えていきたい」と回答した。
具体的な検討の進め方については「最近はKAM導入など会計監査に係る大きな制度改正が続いている。制度の見直しは行うべきだが、その他の優先課題やリソースの制約を踏まえつつ、拙速な改正とならないよう、見直しに係る時間軸も考慮すべき」との指摘もあった。

議論を踏まえ、特段の異論が聞かれなかったため、今後内部統制部会にて具体的な審議を行うことが承認された。

■最近の会計監査等をめぐる動向

この他に、事務局や委員から、本年6月に公表された金融審議会ディスクロージャーWG報告の概要、会計基準をめぐる変遷と最近の状況等についての説明が行われた。
委員からはディスクロージャーWG報告について「サステナビリティ開示に関して、今後は人権に係る開示も含めて検討すべき」といった意見が聞かれた。


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