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旬刊『経理情報』2024年3月1日号(通巻No.1703)情報ダイジェスト/会計


【会計】中間財務諸表会計基準案、最終化への検討、開始─ASBJ


去る2月5日、企業会計基準委員会は、第519 回企業会計基準委員会を開催した。主な審議内容は以下のとおり。

■中間財務諸表に関する会計基準

企業会計基準公開草案80号「中間財務諸表に関する会計基準(案)」等に寄せられたコメントへの対応について審議された。
公開草案の方向性を支持するコメントがあった一方、「中間会計基準のみを開発し、1Q・3Qに対応する会計基準が開発できていない点が問題である」として支持しないというコメントも寄せられていた。コメント対応として、「施行日までの短期的な対応として、中間会計期間(6カ月)を会計期間とした取扱いと四半期会計基準の取扱いの差異は、従前の取扱いが継続できる経過措置を設けている」旨等の説明が示された。
委員からは特段の異論は聞かれなかった。3月までの最終化を目標としている。

■継続企業および後発事象に関する実務指針等の移管に係る調査研究

日本公認会計士協会が公表した実務指針等をASBJに移管するプロジェクトにおいて、継続企業と後発事象に関する調査研究を実施することとされており、今回、調査研究報告書の文案が示され、審議された。
国際的な動向として、継続企業については、IAASBの国際監査基準570「継続企業」改訂のプロジェクトが進められており、そこでは継続企業の前提の評価期間の起点を期末日から財務諸表の承認日に変更するなどの方向性で進められている。
また、後発事象については、サステナビリティ開示基準において「サステナビリティ関連財務情報の承認日」の概念を導入する予定であり、これを契機に会計基準でも求めることを検討することが考えられる。
これらの動向を踏まえ、事務局からは、実務指針の移管に焦点を当てた最小限の対応とするのか、移管にあわせて国際的な整合性を図る等の対応を図るかとの論点が示された。
委員からは、「国際的動向を踏まえてアップデートすべき」、「後発事象の国際的な会計基準のアップデートは実務負担が大きい」等、さまざまな意見が出された。

■パーシャルスピンオフの会計処理

第112回企業結合専門委員会(2024年2月20日号(No.1702)情報ダイジェスト参照)に引き続き、パーシャルスピンオフの会計処理について審議された。
企業会計基準適用指針公開草案80号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針(案)」等についてのコメント対応において、完全子会社株式を対象とすることの明確化を求めるとして、自己株式会計適用指針10項⑵の「子会社」に同項案(2-2)の表現とそろえて「完全」を追加すべきとのコメントに対して、追加しない理由を結論の背景に記載する修正案が示された。
委員からは、「『完全』を入れるべき」、「結論の背景で説明されるならば賛成」と賛否の意見が分かれた。事務局からは「両論聞かれており、預かって整理する」との回答があった。次回以降、全体の文案が示され、審議される予定。

■金融資産の減損

第211回金融商品専門委員会(2024年2月20日号(No.1702)情報ダイジェスト参照)に引き続き、ステップ4(信用リスクに関するデータの詳細な整備がなされていない金融機関に適用される会計基準の開発)の検討の審議が行われた。
⑴ 複数シナリオの考慮を含めた結果の確率加重
実務負担に配慮して、「最も可能性が高い中心となる将来予測シナリオ(予想信用損失が発生することを前提とする)のみを考慮することを認め、予想信用損失が明らかに実態と異なると企業が判断する場合には、オーバーレイ調整が行われる可能性があることを明確にする」との事務局案が示された。
委員からは、事務局案に賛成意見が聞かれた。また、「オーバーレイ調整は実際にやると難しい。教育文書などでやり方を示しては」との意見が出された。事務局から「教育文書でどこまで示すことができるか検討する」との回答があった。
⑵ 実効金利法関連の論点
「引当における貨幣の時間価値の考慮」および「IFRS9号『金融商品』の実効金利法による償却原価の採用」について、事務局から、「約定金利を用いることができるオプションを設け、貸付金に関連する手数料については、収益認識会計基準等に準じて会計処理する」との案が示された。また、「償却原価の償却方法」について、「実務上の便宜として、定額法を適用するオプションを設ける」案が示された。委員からは方向性に賛意が聞かれた。「貸付金の手数料の処理について、計上時期にも影響がある」との意見が聞かれた。

■上場企業等が保有するベンチャーキャピタル(VC)ファンドの出資持分

第211回金融商品専門委員会(2024年2月20日号(No.1702)情報ダイジェスト参照)に引き続き、VCファンドの出資持分の会計処理について審議が行われた。
VCファンドに相当する組合等の定義について、「募集または私募が行われた」、「運営者は出資された財産の運用を業としている」、「構成資産である市場価格のない株式を定期的に時価評価」、「組合契約等の投資対象を専らスタートアップ企業とする」といった要件を満たす組合等とする事務局案が示された。
委員から、「他のファンドとの線引きが難しい」、「スタートアップに限定する必要があるのか」などの意見が聞かれた。

■リース会計基準

リース会計基準第514回親委員会(2023年12月10日号(No.1696)情報ダイジェスト参照)で審議された、貸手の基本となる会計処理(会計処理の検討)について、リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法(以下、「第2法」という)を廃止する案に対し、「収益認識会計基準で割賦基準が認められなくなったことを理由とすることは適切ではない」などの反対意見が聞かれていた。
この意見を「リースが製品または商品を販売する手法として用いられる場合」、「リースが金融取引の性格が強い場合」に分けて、収益認識会計基準等との関係について分析が行われた結果、第2法を踏襲せず公開草案を変更しない事務局提案が示された。
委員から異論は聞かれなかった。
 

【会計】GM課税の会計処理・開示における四半期財務諸表の注記等、検討─ASBJ、税効果会計専門委

去る2月7日、企業会計基準委員会は、第91回税効果会計専門委員会を開催した。
第90回専門委員会(2024年2月10日号(No.1701)情報ダイジェスト参照)に引き続き、実務対応報告公開草案67号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い(案)」等のコメント対応について審議された。
また、同5日に開催された第519回親委員会でも同テーマについて審議された。主な審議内容は以下のとおり。

■四半期財務諸表の注記

公開草案では、四半期連結財務諸表および四半期個別財務諸表(以下、「四半期財務諸表」という)においては、当面の間、当四半期連結会計期間および当四半期会計期間を含む対象会計年度に関するグローバル・ミニマム(GM)課税制度に係る法人税等を計上しないことができるとされている。
また、四半期財務諸表における注記について、次の要件をいずれも満たす場合にこの規定を適用するときは、その旨を注記するとされていた。

⑴ 前連結会計年度および前事業年度においてGM課税制度に係る法人税等
 を計上している。
⑵ 当四半期連結会計期間および当四半期会計期間において、当連結会計年
 度および当事業年度におけるGM課税制度に係る法人税等が重要であるこ
 とが合理的に見込まれる。

寄せられたコメントでは、「合理的に見込まれるかどうかの判断をすることは困難であり、⑵を削除すべき」、「注記の判断の要否に、前年度に計上しているか否かを含める必要はないので、⑴は不要」との意見が聞かれていた。
これを受けて、事務局から次の2つの対応案が示され、事務局は案1を提案した。

(案1)⑴⑵をともに削除し、当四半期連結会計期間および当四半期会計期
   間において、GM課税制度に係る法人税等を計上しないこととすると
   きは、その旨を注記する。
(案2)⑵を削除し、前連結会計年度および前事業年度においてGM課税制
   度に係る法人税等を計上しており、当四半期連結会計期間および当四
   半期会計期間にGM課税制度に係る法人税等を計上しないこととする
   ときは、その旨を注記する。

専門委員からは、事務局案に賛成の意見が多く聞かれた。「公開草案の提案も一考に値するのでは」との意見も聞かれた。
第519回親委員会でも、賛成意見が聞かれ、「明らかに重要性が低い場合は注記を省略できるようにしては」との意見が聞かれた。

■補足文書

適用初年度より後の年度の取扱いを明確にすべきであるとのコメントが寄せられており、これを受けて、次の文案の追加が示された。

(適用初年度以降の年度)
14 適用初年度の翌年度以降についても、当該制度の特徴(実務対応報告第
 X号BC2項からBC4項)を踏まえると、対象範囲の判定や個別計算所得等の
   金額等の算定にあたって必要な情報を適時かつ適切に入手することが困難
 である場合があると考えられる。この場合においても、第12項に示した例
 を参考にしつつ、適用初年度の翌年度以降に入手した第8項の情報等を加
 味した上で、見積りを行うことが考えられる。

専門委員からは、方向性に賛成の意見が聞かれた。また、「初年度に比べて2年目以降の見積りがどこまで精緻になるか疑問」との意見も聞かれた。
第519回親委員会では「『第8項の情報等』とは、第8項のどこを指しているのか読み取りにくい。もっと明確にしたほうがいいのでは」との意見が聞かれた。

【会計】SSBJ基準、プライム上場企業またはその一部へ適用の方向─SSBJ

去る2月6日、SSBJKは第30回サステナビリティ基準委員会を開催した。
第29回(2024年2月20日号(No.1702)情報ダイジェスト参照)に引き続き、IFRS S1号、S2号に相当する日本基準の開発の審議が行われた。
審議された具体的な検討事項は主に次のとおり。

■SSBJ基準の適用範囲

金融庁より、SSBJ基準の適用範囲について、「グローバル投資家との建設的な対話を中心に据えた企業、すなわちプライム上場企業またはその一部から始めるのが必要と考えており、それを前提に議論していただきたい」とのコメントがなされた。
委員からは、「プライム上場企業を最大枠として、その一部の企業について適用を求めていくのが基本的な方針か」、「スタンダードやグロースといったプライム上場企業以外にも将来的にSSBJ基準の適用が広がる可能性または他のより緩やかなサステナビリティ開示の要請を求めていくことも考え得るのか」といった質問が出された。
金融庁は「プライムを最大枠とし、そのなかの一部の企業については、どの程度の水準にするかは金融庁において議論していく。また、プライム以外のスタンダード、グロースなどの企業、最終的にはすべての有報を作っている会社が何らかの形でサステナビリティ情報を開示できるようにということで、SSBJ基準に限らず、TCFDのプリンシプルベースの基準などもあるため、そういったいろんな基準を視野に入れて今後検討していく」と回答した。
事務局は「適用範囲を全有報提出会社としてきたが、今回、その一部になるとの明確化があった。これに沿って基準開発を行っていく」とコメントした。

■「サステナビリティ開示基準の適用」の文案

前回に引き続き検討がなされ、文案の表現について議論が行われた。
委員からは、「商業上の機密情報」について、①当該情報が一般に利用可能となっていない、②当該情報を開示することにより、機会を追求することで実現できる経済的便益を著しく毀損すると合理的に見込み得る、③機会を追求することで実現できる経済的便益を著しく毀損することなく、開示に関する定めの目的を満たすことができるように当該情報を集約して開示することができないと企業が判断している、の要件を満たす等の場合に、開示をしないことができるとする文案について「『次の要件を満たす場合』という表現では、いずれかに該当すれば開示が不要になると誤解を招きかねないので、『要件をすべて満たした場合』としてはどうか」等の意見が聞かれた。
事務局は、「すべて満たさなくてはいけない条件の場合は条件ではなく、要件という言葉を使って書き分けているが、わかりにくいとの意見もそのとおりなので検討する」と回答した。

■「気候関連開示基準」の文案

IFRS S2号に相当する部分について文案検討が開始された。
前回審議にて、スコープ2温室効果ガス排出については、ロケーション基準に加え、契約証書かマーケット基準のいずれかを開示する方向となった。文案上でその開示すべき契約証書とは「スコープ2温室効果ガス排出を理解するうえで必要な契約証書等を企業が有している場合、当該契約証書等に関する情報」とされているが、委員からは「今の文言では、かなりオープンな制約のない情報のようにも読めるため、契約証書のなかの何が必要な情報なのかということがわかるように書くべき」との意見が聞かれた。
事務局は、「ISSB基準において、契約証書のどの部分をどの細かさで開示するかなど必ずしも明らかでないところが問題であって、われわれでその部分を解釈し、明確にすることで国際基準に準拠していないと言及されるリスクがある」と回答した。
委員からは、「契約情報そのものを出すことではないことは明確にしたほうがいいのでは」との意見が聞かれた。


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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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