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【会計】パーシャルスピンオフの会計処理、引き続き検討進む─ASBJ、企業結合専門委

去る6月5日、企業会計基準委員会は第104回企業結合専門委員会を開催した。
第103回(2023年6月1日号(No.1678)情報ダイジェスト参照)に引き続き、「パーシャルスピンオフの会計処理」について審議された。

■例外的な取扱いの範囲

⑴連結財務諸表上の処理

事務局は、前回審議された案2(子会社株式に該当しなくなる一部留保の株式分配(按分型)についての例外的な取扱い)における連結財務諸表上の具体的な会計処理について、次の事務局案を示した。


①支配を喪失しない場合
●個別財務諸表で計上した損益を連結財務諸表においても帳簿価額の差額について加減したうえで、資本剰余金として処理する。
②支配を喪失して関連会社になった場合
●親会社の個別貸借対照表に計上している当該関連会社株式の帳簿価額は、投資の修正額のうち配当後持分額を加減し、持分法による投資評価額に修正する。
●持分法による投資評価額には支配喪失以前に費用処理した支配獲得時の取得関連費用を含めない。
③支配を喪失して関連会社にも該当しなくなった場合
●連結貸借対照表上、残存する当該被投資会社に対する投資は、個別貸借対照表上の帳簿価額をもって評価する。

なお、②、③に関して、配当前の投資の修正額とこのうち配当後の株式に対応する部分との差額(②の場合はその他の包括利益累計額を除く)および個別財務諸表上の取得価額に含まれている付随費用のうち配当した部分に対応する額については、原則的な取扱いと例外的な取扱いを設ける。


専門委員からは、引き続き案2で進めていくことに異論は聞かれなかったものの、「個別上の時価で洗い替えた損益を連結でも活かすべきかどうかは検討の余地がある」などさまざまな意見が聞かれた。

⑵完全子会社のみを対象とすべきか否か

前回の会議で対象を「完全子会社に限定すべきなのか」との意見が挙がったことを受け、事務局から、「今回は例外的な取扱いを定めるものであるため、完全子会社に限定すべき」との考えを示した。
専門委員からは、「税制改正に伴う緊急的な側面があるため、完全子会社に限定するのもやむを得ない」との声が聞かれた。

■基準開発の範囲

5月16日開催の第501回親委員会(2023年6月10日号(No.1679)情報ダイジェスト参照)にて、「会計基準の改正範囲の観点から、今回のパーシャルスピンオフの会計処理の検討では、支配を喪失しない場合が対象となることは想定されないため、詳細な検討を行う必要はないのではないか」との意見が聞かれた。事務局は、この意見への対応として次の2案を提案した。

案A 現実に発生する可能性が高いと考えられるパーシャルスピンオフに絞って、支配を喪失して関連会社にも該当しなくなった場合に限定して定めを設ける。
案B パーシャルスピンオフに限定せず、連結財務諸表における子会社株式を配当したケースを網羅的に示すことを目的として、事務局が提案している前記「例外的な取扱いの範囲」⑴の①から③(原則および例外も含む)の会計処理すべてに定めを設ける。

事務局は、「すべてのパターンにおける会計処理が明示されていることで、実施した場合における会計処理の予見可能性が高まる」とし、案Bで進めていく考えを示した。
専門委員からは、「税制にとらわれず、妥当な会計基準を作成していくべき」との賛同の声が聞かれた。


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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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