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データ分析キャリア論 キャリアアップの方向性を探ろう!|【連載】データ分析のログハウス(第8回)

こんにちは。中央経済社「旬刊経理情報」編集部です。
本誌では「『データ分析の森』ガイドマップ」を連載中。DXやリスキリングなどで注目される「データ分析」について、その具体的な中身や取り組み方などをやさしく丁寧に解説していただいています。
本連載では、本誌では書ききれなかった、主にデータ分析に関わるキャリアや事業について、ざっくばらんにひもといていただきます。
第8回はデータ分析スキルの分類と、各スキルに対応するキャリアについてお話しいただきました。キャリアを考えるときのヒントになれば幸いです。

中央経済社「旬刊経理情報」編集部

~旬刊経理情報連載
「データ分析の森」ガイドマップ 番外編~


みなさん、こんにちは。
遠藤武(えんどう・たける)です(私の活動や発信については、https://boxcox.net/et をご覧ください!)。

おや、前回来てくれた「データキャラのクマさん」がまだログハウスの近くにいて、森をトコトコ歩いていますね。

今回のテーマを出す前に、ログハウスの窓から、クマさんを観察しましょうか。

おたん(データ分析に興味がある悩める大学生)
クマさんを観察? データ分析とはあまり関係なさそうですが……?
確かに、ノートパソコンを持ってトコトコ歩いてますね。
あれ、進行方向に切り株がある。クマさん大丈夫かな?
あぁ、やっぱりつまずいて転んだ……。

あ、立ち上がった!
と思ったら、パソコンを開いた。

実はクマさん、けっこうタフなんですね……!
クマさんもパソコンも、大丈夫そうですね。
これが分析にどうつながるんだろう……?

「スキル」を軸に、データ分析のキャリアを見ていこう

さて、ここでおたんさんの発言を振り返ってみましょう。

「大丈夫かな?」
「あぁ、やっぱり」
「と思ったら、実はクマさんはタフ」
「クマさんもパソコンも、大丈夫そう」

おたんさん、いまちょうど「こうなるかな?」と目の前の出来事を切り分けて評価を下し、予測していたんですよ。
実はデータ分析は「予測」するためにやっていると言っても過言ではありません。

今回は、データ分析のキャリアがテーマです。

クマさんが転んで立ち上がったように、世の中でもキャリアでもいろいろなことが起こりますので、プラスに動けるように想定しておくことが大事ですね。

(予測について、『旬刊経理情報』本誌連載の「データ分析の森」第19回(2023年6月1日号(No.1678))でも取り扱っており、また第22回(2023年7月10日号(No.1682))・第23回(2023年7月20日号(No.1683))ではPL・BS・CFの予測財務諸表のモデリングを掲載しています)

予測に使う「スキル」は4つある

そもそもですが、データ分析での「予測」について、みなさんはどのようなイメージを持っていますか?

「予測スキル」でいうと、こんなところでしょうか。

  • AI・機械学習・アナリティクス
    AI・機械学習のモデルから、何万系列ものビッグデータや、ニュース記事やSNSの動向を読み込んで(特徴量を作って)、予測する

  • 統計学
    多変量解析や、時系列解析のモデルに落とし込んで、予測する

  • FP&A(財務モデリングを含む)
    対前年比やKPIベースでの売上高成長や経費といったPLの要素を仮定し、売掛金・棚卸資産・固定資産、買掛金・借入金・固定負債といったBSの動き方を見定め、キャッシュ・フローを予測する

  • 財務モデリング
    PL・BS・CFの要素を仮定し、企業価値・事業価値や資産価値を予測・推計する

おたん
なるほど! 確かに予測するうえでの「スキル」はそのように整頓できますね。
とはいえ、あくまで「スキル」の切り分けなので、
どんな部門やキャリアで役立つの?
具体的に何に使うの?
どんなキャリアゴールがあるの?
という要素へのつながりが、気になるところです!

「データ分析が大事!」と耳にすることはよくありますが、その割にキャリアゴールの話があまりされていないと思っていたんです。

では、キャリアごとに切り分けてみましょうか!

「スキル」と「キャリア」を対照しよう

(図表1) スキル・キャリアの対照表

(※)製造業で統計学を用いる品質管理部門や技術職、ないし気象予報士は含みません。

図表1をみていくと、実は「スキル」そのものと、実際にスキルを使う「キャリア」は、必ずしも一対一で対応していないことがわかります。

ここで、筆者の経験について言及すると、上記4つのスキルや知見が必要な分野は、すべて経験し、エンジニアと協業する形でチームを動かしてきました。

ここのところのデジタル化全盛の状況を鑑みれば、どんなキャリアを選ぶにしても、それがビジネスであっても研究であっても、アナリティクスと統計学を軸にしたデータ分析のスキルは、身を助けると実感しています。

成長まっさかりの分野ゆえに、知見のある人が足りていないのです。

逆にいえば、スキルさえあれば、組織に新たな知見を提供できる人材であるゆえに、さまざまなことを受け持つ「権限」が付くはずです。
(もしそうでないなら、その組織はすでに成長しきったか、あるいは成長しようとしていないため、おすすめはしません)

自分のキャリアゴールについて考えるときも、組織の成長や自分のスキルアップを意識することになるはずです。
「ずっとこのままでいいのかな……?」
「もっと面白いことがないかな……?」
誰しもそのような思いが頭をよぎった経験があると思います。

データ分析のように比較的新しい分野であれば、ずっと同じ組織にいて、そこで昇進を待つ……という想像はしづらいですね。
その場合に考えられる「キャリアゴール」について、事実を見定めましょうか。

「キャリア」から「ゴール」が定まる

(図表2) スキル・キャリア・ゴールの対照表

(※)起業・独立、研究者への転身、フリーランス、CEO就任は、根本的に競技種目が変わってしまうため、キャリアゴールには据えていませんが、ご自身の強みや素質を活かせる見込みや、カスタマーサクセスを打ち出せるなら、挑戦する価値は十分にあります!

図表2を眺めてみると、AIエンジニアはCTO/CIOからプロダクトマネージャーまで複数の選択肢があり、マーケティング・SCM・デジタル部門はCMOやコンサルティングが想定できます。一方で、専門家である調査部門はCxOの要素が薄く、FP&Aや投資銀行はCFO……というように、キャリアゴールの違いが浮き彫りになります。

これはキャリアゴールが制限される・広がりやすいという意味ではなく、スタート地点にもキャリアの過程にもいくらか違いがあるという話です。

「どんなキャリアで使う?」に記載した一部に下線を引いているのは、投資銀行、FP&A、調査部門・シンクタンク・アクチュアリーの場合、エンジニアやマーケティング等のスタッフに比べると、スタート地点からそもそも待遇がよいことが多いためです。

キャリアゴールについても、FP&Aの場合は必ずしもCFOにならずとも、GM(ゼネラルマネージャー)として組織を率いることもあります

調査部門やシンクタンクの専門家の場合、仕事相手が経営層であることも多く、もともとの権限が大きいといえます。すなわち、組織内である程度高い地位にいるということです。

逆にAIエンジニアやマーケティング領域やデジタル領域においては、権限を得てマネジメントをしたいのか、「もの作り・こと作り」に集中したいのかで、発想が変わります。

新規事業立ち上げに関わることも多々ありますし、その場合だと得意技を駆使してあっさりと権限が大きくなることもあります。
一方で、プロダクト構築に関わりたいと思うならば、単にCxOを目指せばよいということにはなりません。特にCFOの場合は、現場で作業することは、ほとんどないと思います。

自分が何を面白いと感じるか、何がしたいのかによって、組織内での動き方を逆算する必要があるともいえます。

「ゴール」の本質は、妄想と行動

本質は、CxOという立場にこだわることにはなく、
「どんな未来を自分が望むか」という1点にあるのです。

何を面白いと感じるか?
何が自分にとってハッピーか?
このような、ごく当たり前の肌感覚を意識しておくことが、キャリアを考えるうえで大事ということになりますね。

「何が起こりうる?」という過去データからの予測(フォーキャスト)と、「どうしたら世の中が面白くなるかな? そのハードルを下げるには何が必要だろう?」という未来からの逆算予測(バックキャスト)は、どちらも、データ分析をする際にも大事な視点です。

まさに「妄想と行動」であり、キャリアゴールも、より自由であっていいのです。

データ分析にまつわる素朴な疑問でもよいですし、他の「こんなことが気になる!」でも、ついつい湧き出る妄想でも構いません。すべては、何かを始めるためにうってつけの理由です。

それでも「やっぱり不安だな…」という物事があれば、
お気軽にログハウスのドアをノックしてくださいね。


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「データ分析のログハウス」は、旬刊『経理情報』2022年7月10日号からスタートした連載「「データ分析の森」ガイドマップ」との連動記事です。
本誌では、DXやリスキリングなどで注目される「データ分析」について、その具体的な中身や取組み方などをやさしく丁寧に解説していただいています。ぜひあわせてご一読ください。定期購読はこちらから

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バックナンバー

第1回 ログハウスができたよ!
第2回 「データ分析の人材市場」を分析したよ!(※属性つき)
第3回 FP&Aが「つまらない」は本当?
第4回 リスキリングの本質って何?
第5回 ゼロから始める事業立上げ 財務モデリングを超シンプルに!
第6回 「データない問題」に立ち向かう。
第7回 「データキャラ」は「データ分析キャラ」?


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