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【会計】貸付金の測定、満期保有目的の債券等に関する取扱い、検討─ASBJ、金融商品専門委

去る1月12日、企業会計基準委員会は第193回金融商品専門委員会を開催した。金融資産の減損の会計基準の開発に関して、議論された。主な審議内容は次のとおり。

■貸付金の測定

第188回金融商品専門委員会(2022年10月10日号(No.1657)情報ダイジェスト参照)において、ステップ2を採用する金融機関における貸付金の測定に関する論点が示された。そのうち、今回は次の論点の定めを取り入れるかが検討された。

① 引当における貨幣の時間価値の考慮
② 償却原価の採用
③ 利率(実効金利の算定等)
④ 条件変更および認識の中止

⑴ ①・②・③の取扱い

貸付金の測定と減損に関して、IFRS9号「金融商品」では実効金利法が採用されている。実効金利法では、利息と元本という区分はなく、予想信用損失は将来のデフォルトリスクから生じるすべてのキャッシュ・フロー不足の現在価値とされている。そのため、将来の利払いのキャッシュ・フローが不足すると予想される場合には減損の対象となり、未収利息を不計上とする会計処理は行われない。
これを踏まえると、前記①~③の定めは整合的に組み合わされており、一部の定めのみを取り入れた場合、その他の定めと不整合が生じる可能性がある。そのため、国際的な比較可能性を確保する観点からも、前記①~③の定めを原則的に取り入れることが考えられる。
一方で、「③利率」に関して、これまでの議論において金融商品に関する手数料の取扱いおよび定額法の是非については、慎重に検討すべきとの意見が挙がっている。そのため、この点は別途検討を行うこととする。
この事務局案に対して、専門委員からは、「①~③を取り入れることは理解できるが、手数料に関して元本に紐づけて実効金利を計算することなど、実務上ハードルが高い点もある。オプションの導入などは引き続き検討すべき」など、実務への負荷を懸念する意見がいくつか挙がった。事務局は「実務的な負荷の軽減については、次回以降提案していきたい」とした。

⑵ ④の取扱い

金融資産の条件変更に関する論点については、2021年9月に公表されたIFRS9号の適用後レビューの対象に含まれている。そのため、本レビューの対応状況によっては、仮にIFRS9号の定めを取り入れたとしても、再度見直す必要が生じる可能性もある。
したがって、当面の間は条件変更および、条件変更と密接に関係する論点である認識の中止に関するIFRS9号の定めは取り入れない。なお、その場合、既存の契約について条件変更が行われた際は個々の状況に応じて判断することとする。

■満期保有目的の債券等に対する予想信用損失の適用

前回の審議(2023年1月10日・20日合併号( No.1666)情報ダイジェスト参照)では、金融商品の分類に関して現行の枠組みを維持することに異論は聞かれなかった。今回は満期保有目的の債権、その他有価証券に分類される債券にIFRS9号の減損モデルを適用した場合に不整合が生じないか検討する。

⑴ 事務局提案

IFRS9号の減損モデルでは、信用リスクの著しい増大(SICR)に着目して減損処理を行う。他方、日本基準では満期保有の債権等について、時価が著しく下落した場合に減損処理を行うとし、具体的には時価の下落率が50%以上の場合に必ず減損処理し、30~50%の場合は回復可能性を考慮し、減損を行うこととしている。
この点につき、50%以下の下落の場合、日本基準でも減損の見積りにおいて信用リスクの増大に着目している。また、50%以上下落した場合は、一般的に信用リスクも増大していると考えられ、IFRS9号の減損モデルを適用することの問題は大きくないと考えられる。

⑵ 専門委員の意見

専門委員からは「昨今の金利状況では、金利の50%以上の下落等は通常に生じている。50%以上の場合に、一律に信用リスクが生じているとみなすことは不適切では」との意見があった。


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