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【会計】ISSB公開草案に対するコメントの審議、開始─SSBJ設立準備委

去る4月21日、SSBJ設立準備委員会は第6回会合を、5月12日に第7回会合を開催した。第6回会合では、3月31日に公表されたISSB公開草案の概要および公開草案「IFRS S1号『サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項』」(以下、「S1基準案」という)に対するコメントについて、第7回会合では、S1基準案および公開草案「IFRS S2号『気候関連開示』」(以下、「S2基準案」という)に対するコメントについて審議された。
なお、ISSB公開草案の日本語仮訳はFASFのホームページで閲覧できる。

■ ISSB公開草案の概要

事務局による資料をもとに審議が進められた。

・ S1基準案

「サステナビリティ関連財務情報」の定義に関連して、委員の「同じ条件で同時に入手可能であれば相互参照できるとのことだが、同じ条件とはどういうものを指すのか」という質問に対し、事務局は「基本的に、利用者が利用したいときにすぐ入手できるものがここで定義される条件となるが、『同一』にこだわるかどうかが論点の1つである。明確化を求めるなど、議論したほうがよい」と回答した。また、「重要性(Materiality)」に関して、開示要求に準拠するのみでは企業価値評価に資する情報として不十分な場合は追加の開示を検討することとされている。この点、「検討は義務なのか」との委員からの質問に、事務局は「基本的に検討しなければならない」と回答した。

・ S2基準案

S1基準案との関係で、委員からは「S1基準案では、財務諸表と同じ報告期間にサステナビリティ関連情報を開示するという原則があるなかで、気候変動に関してはS2基準案が優位であるという理解でよいか」という声が聞かれた。事務局は「S1基準案における『同じ期間』という定め自体が、実務上耐えられるものなのか、検討が必要」と回答した。
また、コア・コンテンツである「戦略」と「指標及び目標」に関して、「戦略の開示目的では『重大な気候関連のリスク及び機会』、指標及び目標の開示事項では『目的適合性がある情報』とあるが、両者は違うものを指すのか」との質問に対して、事務局は「relevantという言葉が、単に『関連する』という意味だけで使われている可能性も捨てきれないと考えている。検討する」と答えた。

■ 基準案に対するコメントの検討

それぞれの基準案に対するコメント文案をもとに審議が進められた。

・ S1基準案

第6回会合では、S1基準案に対するコメント文案のうち、総論部分についての意見が交わされた。文案では、細則主義的な規定ぶりが目立つ本案について、原則主義的な基準の定め方をとることを提案している。
また、委員からは、「グローバル・ベースライン」という用語についての意見が多く聞かれた。これは、ISSBの設立当初から使われてきたものでもあるが、「多用されているが定義があいまいであるため、明確にする必要がある」といった声があった。
第7回会合では、引き続きコメント文案の総論および各論部分について審議された。
文案の「国際的なサステナビリティ開示基準とグローバル・ベースライン」によると、ISSBの基準開発の方針に関して、産業別基準には課題があることを指摘したうえで、任意とするか、課題を解決してから定めることを提案する方向。この点、委員からは「無理に『任意とする』とは記載しないほうがよいのでは」といった意見が聞かれた。事務局は「悩んだ点ではあるので、検討する」と回答した。
文案の「報告企業」の項目については、「財務諸表の連結範囲と同じとするという考え方で記載されているが、重要性の定義が財務情報における重要性と同じ観点で使用された場合、連結グループとして多くの企業を抱える報告企業の大きな負担になる」との意見や、「S1基準案の結論の根拠で、『サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報は、資産及び負債の定義並びに認識規準の制約を受けない』と、財務諸表上の重要性との違いが記載されている。報告企業の範囲についても、財務諸表の連結範囲と同じということは基本としながらも、対象とする個別具体的な企業については基準に基づいて対象としない企業があるということを認めているというように解釈してもよいのか」といった意見が聞かれた。事務局は「連結グループの範囲を変えるというのは、非常に難しいと考える」と回答した。そのほか、日本の現行開示制度との関係を踏まえたコメントのあり方に関する意見なども聞かれた。

・ S2基準案

それぞれの基準案へのコメント文案では、重複や相互参照がみられている。委員からは「統合的に使用するために、重複は残すほうがよい」との意見があった。


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